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「我は魔女なり」 〜引きこもるためのスキル【マイルーム】をもらったがあまりに世界が酷いので暗躍することにした〜  作者: いかや☆きいろ
 老いたワルテルの悩み

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ヒマジン連合

 この大陸には六つの国がある。大国が四つと偽神たちが実験的に民主主義を導入した国がひとつ、イルマタルを崇める聖教国がひとつだ。大国四つにはそれぞれ神として崇められる四人の偽神がいる。それぞれのスキルから、愛の女神、勇気の神、正義の女神、商売の神となっている。ちなみに商売だけ俗な感じだが法の神は立石がいるし情熱の神を名乗るほど情熱的でもないらしい。まあ正体を知ったらなるほどとは思った。それはあとにしよう。


 それぞれが支配する国は愛の女神がここ、アナナス王国であり、今は女神はお隠れになっていると国からはお達しが出ているらしい。死んだとは言わんわな。平民どころか貴族でも知らないようでうかつに私からバラす、しゃべるところだった。まあそのあたりのことは立石法子こと教会の魔女サンドラが教えてくれたが。長いので立石。立石はイルマタル聖教国の重鎮ではあるんだが千年かけて不祥事しまくって左遷されたらしい。まあ自分で仕向けたんだろうけどな、コイツは私に会いに来るためにそこまでしたわけだ。私と一緒にいても黙ってゲームするだけなんだが、まあミネルバを利用しにきたのかも知れん。それはいいか。


 他の国、シトロン共和国は小さな国だが四人の神が作った唯一の国だ。永世中立を掲げていて軍事力は高いが自分から攻めていったりはしない。地理的に陸の孤島みたいなところでほとんどが山岳地帯。逆に工業や商売をするしかない国だ。この国には議会があって国民から選ばれた議員が政治を行っているが原始民主主義というか、強権を持って支配しているので好ましくない議員というのも当然いる。ただ汚職とかには厳しい国だな。そういうところは日本的なのかもしれない。まあ日本の議員には一切強権なんてないわけだ。忖度すら叩かれるからな。馬鹿げてるわ。国を良くする人たちにメリットがないとか意味がわからない。結局は政権叩きしたいだけの日本人かわからない人たちに乗せられてるんだろうけど。それはいいや。


 この国だけじゃないがアナナスの学園に留学生が派遣されている。もともと愛の女神はこの国にも崇拝されているらしい。ただの人間が神としてふるまってるというのはイルマタルも似たようなものだ。星のんみたいに人間はどうでもいいけど人間としても遊んでる神様もいればまったく人間なんてどうでもいい神様もいる。イルマタルは人間に肩入れし過ぎなんだよな。それが成りたての神様だと感じさせる。人に楽をさせる意味はない。堕落するだけだ。怠惰ってのは重い罪だよな。私だけど。


 正義の女神の国は憤怒の罪、アールバイエン帝国だがここは女神は国政にほとんど関わっていない。帝国の名前が示すように拡張主義で他国に戦争をしかける。正義の名を騙ってはいるがかなり乱暴な国だ。正義の神が子供の容姿をしているのも理由かもしれないが、幼稚で残酷な正義を掲げているわけだな。あまり刺激したくもないがいずれ訪れることになるだろう。めんどくせ。


 もうひとつ、ピーア神皇国は冒険者ギルドのこの大陸の中心、ギルド本部のある国だ。支配する神は勇気の神、傲慢の罪だな。神々にも名前はあるんだが普通に名前で呼ばれることはないな。神として崇められてはいるが主神はイルマタルとしているので他の神は名乗らないことにしているらしい。星のんはアストレアと呼ばれてるけど立場的にはニュクスだな。この星で呼ばれてるだけだし名前に意味はない。そもそも高次元の存在なので本来は人知の及ぶ姿はしていないしな。アイツはほっといたらいいや。私らにはいろいろしてくれるが人類なんてどうでもいい派の神様だ。真理に近い存在なら当然そうなる。人は人の身でしかないのでその境地に立つ意味はないけど。


 ピーア神皇国も行っとかないとダメだろうが神が冒険してるので普通に会うのは難しいかもしれないな。


 最後にドラウブン神国。うーん、あんまり行きたくない国だ。なにが嫌というわけではないんだが実はこの神は私の知り合いらしい。……ストーカーである。ぜったいバレたらダメなヤツう!


 商売の神と名乗ってるが強欲の罪。うーん、私は神を退場させるつもりなんだよなあ。なのでいずれ会わなくては……嫌だなぁ。なんで正体を知ったかというと商売の神の知り合いが接触してきたのと立石の証言があったからだ。


 なんでも商売の神は大陸中から資産を集めてスキルスフィアなんかも山と抱えていてそれを自分の退屈を紛らわせることができるとみなしたヤツに対価なく渡しているらしい。そのため多くの信仰を集めている。この国は政治としてはドラウブン十二神将が実質治めている。商売の神はお飾りだな。中身は大人だもんな。私に近い感覚なんだろう。そういう意味では協力を仰ぐのがいいんだろうが……ストーカーなんである。元は立石の追っかけみたいな小さいチームのリーダーだったんだが私とあってからストーカー紛いのつきまといをするようになった。そんなヤツなんだがある日仕事のタクシーで対面から来た車にぶち当たられてお亡くなりになった。まあここで生き返ったわけだが。これは推測だがその時の客が他の三人の神なんじゃないかと思っている。まあまだ確証はないが本人に聞いたらわかるだろう。会いたくはないんである。


 この国の十二神将は自由に各国を回っているらしい。例えばグイードは十二神将の(さる)という、指導者の一人なんだとか。先日私のことを神に報告したらすげー食いついて来たので会ってほしいと頼まれて、まあその時にこの十二神将と商売の神にスキルを受け取ったヒマジン連合というチームについても教わった。強欲の名前が示すようにスフィアやアイテムを集めまくってそれで人々を誘惑して有能な人を使っているらしい。その使われているのがヒマジン連合だ。やることは神の暇つぶし。それであちこちで騒動を起こしている。ヤバいヤツらじゃん。


 どうも今回の切り裂き魔による連続殺人事件はヒマジン連合の一人が最初に始めた(・・・・・・)ことらしい。らしい……。ヒマジン連合としては犯人がわかったところで手出しはしない。暇が潰れると判断したら犯罪でも問題はない。なので私は自由に捜査したりしてもいいが犯人はヒマジン連合で引き取りたいという。それが一番平和的な解決方法に思えるな。


 だが断る。


 逆に言えば犯人わかってて放置してるのは暇つぶしのためだろう。それは許せん。そして犯人も私の目的からいって弟子にする。コマとして使わせてもらおう。まあ日本人なら殺人者は死刑死刑死刑、と言われるだろうが私としては貴重な道具だ。それを捨てるなんてもったいない。ちなみに私は今んとこ死刑賛成派だけどな。飯食わすのに税金かかるから。


 まあ今死刑反対が言えるのは完全に人間を支配できるスキルがあるからだが。マイルームは最高だぜ。マイルームの権能じゃないけどね、間接的に便利に人に作用する法術や呪術の術式を自由に作れるんだよな。つまんないからやらないが記憶の書き換えとかもできる。ぶっちゃけて言えば私がやろうと思えばギフト持ち以外を自分の支配下に置くのは容易だったりする。そんなつまらんことしたら星のんに怒られるわ。自由こそ神の与えたすべてだ。滅びるのすら自由だぞ。神の立ち位置はそれでいいと思うんだよな。願いを叶えたりそんなつまらんことは神はしない。生まれ持った才能が平等でないのもハンデというわけではないらしい。あんまり言いたくはないが私は生まれる前の記憶がほんのりあって不遇な人生なのはその時にわかっていたんだよな。でもがんばる、と生まれてきたわけだ。まあがんばらなかったわけだけども。なので怠惰の罪なんだろうな。まったく私のことをよくわかってる。神なんだから当たり前か。


「それでまあヒマジン連合に入らない?」


「イヤだね! アイツのとこだけはぜったいイヤだ! そのうち必要になったら一回だけ行くからそれだけだね! 特にミネルバのスキル知られたらぜったいからまれるし! イ・ヤ・だ!」


 ぜったいイヤなんである。ちなみにすこぶるどうでもいいがやつの本名は佐藤三郎という。モブっぽすぎたから覚えた。まあヒマジン連合自体は面白そうなんでからませてもらうが。この大陸から戦争を奪うのもヒマジン連合ならできるかも。期待はしていない。戦争を楽しいと思うヤツはいる。現代日本人的には許容し難いが戦争物の物語なんて絶える未来が想像できない。人は悲劇を忘れるから悲劇を起こす、なので否定もできない。日本で想像や思想の自由が守られているのも争いの悲惨さを知るためだろうしな。なので非自由こそ敵だ。それは私にしてもそうだ。自由こそすべて。人の自由を犯すことこそが悪。


「そんでヒマジン連合にスフィアを譲ること自体はできるんだよ」


「それはすごい助かるがなぜ個人的には無理なのにうちのグループなら大丈夫なんだ?」


「このスキルは実はギフト持ちなら全員使っていいんだよな。それについてはヤツに教えるな。商売の神は私の敵だと思え」


「白の魔女に敵認定されるとか、親方様はなにをやらかしたんだ……」


「会うたびに合法ロリキャラペロペロとか叫ばれたらそうなるだろう」


「一瞬で納得したオレもぜったいアイツをアンタに近寄らせないヒマジン連合全員そうする間違いない」


「ヤツの人望なさすぎて笑える」


 まあちゃらんぽらんを人にしたようなヤツだからな。もともと弱小チームのリーダーだし。本当の趣味はオタクグッズ収集だったがこの世界でも変わらんらしい。等身大フィギュアとかも集めてて他の神々からもそこは嫌われているらしい。ある意味一番不自由なヤツだな。自由すぎるがゆえに。


そんなヒマジン連合なんでいろいろ使えそうだなあと今はグリードと仲良くしている。まあ私とグリードがいたら冒険者は絡んでこないけどな。そう思ったら誰かきた。


「あの、白の魔女様、オレらに稽古つけてくれませんか?」


「私の時間を払うのに対価はあるんだろうね? 金ならいらないよ、誰でも用意できるからね」


 金で動くのは金がないうちだけだろ、普通に金があるのに小銭で動くヤツはそれが金を保つ秘訣だと信じてたりするもんな。そんなわけないんだが。仕事があることのほうが大事だろ。ただし儲かる仕事に限る。私は儲けたらゲームしたいんだよぉ!


「じゃあこの町の事件は解決できるのにしてないのか」


「いろいろ理由はあるけどね、今ここの領主と仕事したりしてるし、その領主降ろしたほうがよさそうなんでその方向で動いてる」


「事件を解決できない領主となれば傷はつくな」


「まあ中央集権化が進んでいるとは言っても簡単にはやめさせられないだろ。理由付けの意味はある」


「……全部アンタの手のひらの上じゃねーか!」


「そうだよ」


 星のんがマイルームくれたのってぜったいこのためだと思う。ひとつの国くらい手玉に取れるだろうと。まあできなくはないね、力があればできるんだよ。人を集めるには宗教があればいいし金があればそのための人員を集められる。百億もあれば人の支配はかなりの範囲に及ぼせるだろう。簡単だ。不幸なヤツを救ってやるだけで有望な人材は集まる。人は教育を施してやればいい。なので稽古をつけるの自体は構わないんだけどじゃあその辺の少年がプロスポーツ選手に稽古をつけてもらいに行くか、という話だよな。将棋だって師匠をつけるのに実力は必要だろう。それで私が教えるだけ実力があるかというと難しいよな。


 まあ今は暇なので少しやってみることにした。私自身こういうことはしてこなかったので自分の鍛錬のためと思えばいいだろう。


 そもそも人に物を教えるのは鍛錬なのかもしれん。そう考えたほうが楽しいしな。


「暇だし見てやるよ。指導できるかは知らん」


「有り難うございます!」


 そもそもこの世界で魔女狩りとかはまだやられてない。そもそも神が魔女を排斥しろとか言ってない。ガチ宗教と違って神がいるので政治家の思惑で教義を捻じ曲げて信徒を奴隷化したりしていないからな。自分の未来を信じて夢を追うならいいけど神様を信じてなにもしないで祈ってるだけのヤツは流石に見捨てられるだろう。信じて努力する者は成功しても失敗しても救われるかもしれん。毎日が満たされるならそれでいいよな。


「なんか私も暇人だな」


「うちの連合白の魔女傘下にしたら面白いかも」


「あとでその話ししてみるか」


「真面目な(いぬ)(うま)辺りは嫌がるかも」


「いいんだよ、忠誠を誓わせるなんてガラじゃねえ」


 好きにするのがすべて。差別しようが虐待しようがそいつらを悪党と言って殴ろうが自由だぜ。しょせん寛容を求めるのは不寛容だ。自分を律することはできるけど他人に作用することなんてまずできないからな。よほど尊敬されてるとかならわかるけどないもの、そんなこと。盲信なんてクソだ。蹴られたら復讐心に変わるし。






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