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「我は魔女なり」 〜引きこもるためのスキル【マイルーム】をもらったがあまりに世界が酷いので暗躍することにした〜  作者: いかや☆きいろ
 老いたワルテルの悩み

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領主の仕事

 なんかルイジくんが哀れだが執務室へ移動した。いろいろ問題になってることは多いので本当にいろいろ仕事が回ってないようだ。連続失踪事件は青の魔女水野ことフローラが捜査に乗り出した。暇らしい。そっちはそれでいいか。


 領政についてはいろいろ隠し事もあるはずだがとにかく兄貴のマウロが怠け者で書類をそのへんに出してるので手当たりしだいひっつかんで調べていく。やろうと思えば部屋だけトレーニングルームにコピーして内容を調べられるからな。全部調べた。なに、一晩もあれは余裕だ。八時間でも三百日以上使えるからな。


「この税金一本化とか馬鹿な政策なんで推してるんだ?」


「ほえ? なんで知ってるの? まだ公表してもないどころか計画中なのに。その書類隠してたのになぁ」


「一本化……いや兄上、なんで国税をこっちで決めようとしてるんです」


「中央集権化も進んでるこの国でありえねー。昔の自治権があった地方豪族じゃねーぞ」


「ええ、でもうちの収益なんだし申告はこっちで数字に合わせて書いたらいいよね」


「所得に関しては国に収める分は定率で決まってるじゃねーか。なるほど税を横領着服しまくって国に翻意を示してから独立してやろうってんだな。内乱かー頑張れよ」


「内乱?! そんなことするつもりないよ?!」


「……なあ、コイツ本当に領主でいいの?」


「不安になってきました」


「国の調査入ってんだから商店の収益の報告は各商会が商業組合(ギルド)通じてやってるしそこにごまかしなんて利くはずもないだろ。全員に横領おすすめすんの? なに考えてんだこいつ」


「家庭教師に受けたテスト、兄の成績は平均してだいたい三十点くらいでした」


「今すぐ領主辞めろお!?」


「えへへ、辞めていい?」


「このクソ兄貴、責任だけ押しつけて領主の権益だけすすって許されるわけないだろ!」


「誰に? べつに許されなくても領主だし裁判権私にあるし無罪でいいよね」


「大丈夫かコイツ?」


「大丈夫じゃないですね」


「そこまで行く前に国の査察が入るけどそれで罷免の上極刑だろうけどそれらがなかったとして内乱が起こったらどうすんだ」


「うちも辺境が近いから領兵は精強だし騎士も五十人もいるよ!」


「なあ、騎士が内乱に加担しないってなんで思ったの?」


「ここまでヒドイとは……もっと法規に目を向けるべきだった」


「普段なにやってんだよ。寝てたのかよ」


「地方の農村部の開拓の指示や領民から不平を聞いて改善したりそのための自分の権限でできる範囲で臨時法を決めたり、一番は流通改善のために道路整備や各領地の通行量調査、それにからんでモンスター討伐指揮に工事の指示と人足の手配などなど流通関連が多いですね」


「クソ兄貴、お前が悪い」


「なんでえ?!」


「なんでもクソもあるかこのバカ!!」


 弟くん仕事しすぎまである。モンスターが普通に地面を耕しまくるこの世界だと道路整備なんかは終わりない。元の世界だって道路はあちこちボコボコになったらすぐに直してたしそれが滞ったらコンビニもスーパーも使えんしまず車移動できなくなる。そのために税金かかってるのに払わなくていいとかアホなヤツ増えるし。根本的に自分にも義務があるのがわかってないよな。まあそこはいいや、コイツみたいなバカにバカって言ってバカが治った試しがない。勉強は一生しないとわからないことだらけだ。


 ソリド島はリニアで島全体を移動できるように数百年かけて改造するつもりで区画を作っていかないとな。いきなりやってしまわないのはある程度は現地人の自主性に任せるためだ。いきなり飢えない社会を実現できたとしてそれをやってやる義理がまったくない。人類存続のためーとか苦しんでる人がーとか、魚の捕り方は教えてやるしそれを学ぶまでの飯は食わせてやるとしても、発展と安定なんて個人のやることじゃねえだろ。私が好きに法律決めるのが危険なのは誰にだってわかるだろう。世界中の法律を勉強した人がいたとしてその人が法律をすべて決めようとしたところで曖昧な法律ができあがるだけだ。なぜなら現状というものは把握しきれず予測しきれない上に常に変化してるからだな。法律は常に包括的だし社会に合わせて進歩する必要がある。個人では社会の諸問題をすべて常に把握するなんてできるはずもない。道理として政治システムができてる。政治システムが自由に書き換えられたら混乱するから進歩が遅くなる。そもそも書き換えなきゃ進まないけど自由にできたらある日あった法律が消えたりまた出たりする。個人が把握できないでは法と言い切れない。だから情報が広がらないこの世界では悪即斬な法律ができる。問答無用というやつだ。未成熟な世界では民主主義は鈍足になりすぎる。政治システムに完全に完成されたものがあるならすでにどっかの国で採用されて世界がそれに倣ってるだろうに。そうなってないのが答えだろ。完全な法などない。


 しかしこの領主どうするかな。政治の仕組みを一から教えるなんてやだぞ。私の仕事じゃない。もう外から改革するならブロッサム計画を使えばいいようにはしてある。こうなることを見越していたわけじゃないが政治に介入して戦争を抑えるには権力はいる。それを支えるのは金だ。あとそれで信用を支えた人のネットワーク。心なんて形の無いものは裏切り放題だけど金は裏切ったら裏切った方も損する。


 軸にあるのは信用だな。信用という言葉が信用ならないとか言ってはいけない。信用しないなら金とか価値がなくなるからな。信用という本来形がないものがあるから社会が安定して人も豊かになってるんだから金はいらないわけじゃない。ただ金がすべてなんじゃなくてそれを支えてる信用がすべてなんだと気づけ。信用ならないヤツには金は集まってこない。人間的にクズでも有益なら金は集まる。まあ無益なのに金を集めるのが詐欺だ。そこは難しいんだよ。誰にとってなににとって有益か、それを明確にするのが金ってことだな。給料をもらってるから有能なわけじゃない。仕事してないのに金をもらったら詐欺師としては有能かもな。


 こういうのは学校が教えるべきとか言うヤツいるけど学校が教えたら百点満点まで理解できるのか? 真面目に勉強し続けないとたとえば「あなたの成果は百点満点だと申告がありましたが私の知能では八十点分しか正解を確認できなかったので八十点分しか給料を払いません」とか言われたら納得するのか? 逆もまた然り。誰かの百点が他の人にとって百点なんてことはありえない。


 だから生涯勉強なんだよ。自分の利益を正しく確保するためにな。


 そんなことを領主マウロに説明した。うん、私がやってる時点でアウト。


「というか役人はいないのか? 内政に絡む」


「いや、もちろん各地に町長はいるしそれに指示を送る人間もいるが」


「そっちじゃなくて内務官僚? 内政を補佐してる役人」


「一応従士や執事はいる」


「コイツ一人で領地回るわけないもんな。法規については人を雇ったほうがいいだろ」


「法規には神殿も絡むし、役人も出来がいいとは言い難くてね」


「領主がこれなんだものそりゃそうだ。識字率五割の社会を甘く見てた」


 マウロは話についてこれないのでルイジくんとばかり話してるし。このマウロ、もともと現代の学校で一番馬鹿な層が普通に行政をしてると思ってみてくれ。アホだろ? 現実にそうなんだよ。だから喧嘩の延長で戦争や紛争、小競り合いが起こる。昔の戦争だって一人の子供が敵国人に殴られたから開戦とか普通にあったからな。理由がほしいだけってヤツだ。それで人の命を無駄にする。なんなら戦争大好きとか言っちゃう。だがここは現代みたいに銃器を使って徹底殲滅みたいな戦争はしないんだよな。三割も倒したらやり過ぎくらいだろう。戦争がぬるいというか人的資源が大事なのはわかってるしこの社会だと人的資源の価値が高い。やれることが少ないのに人の価値は高いって面白い構造してるよな。たとえばスーパー会社員が一人で仕事をこなしたら他の社員を雇う必要がなくなり新人に価値はなくなるわけだ。現代ならAIの登場で人的資源の価値は上がっていくけど逆にできる仕事ができないとまったく取ってもらえなくなる。資格とかが必ず必要とかになるだろう。人的資源の価値が上がってもそれは内容を伴う前提だ。クズに仕事を回す社会なんて無いからな。社会的に価値が上がるぶんの価値はやっぱり自分で得ないとだめなんだ。まあ未来はわからんか。AIがなんでもやるから見てるだけとかになる。そうなったら給料もほぼなくなるだろうけど。人が余るからな。


「この横領チンパンジーが辞めるのは確定として」


「「確定? てかチンパンジーのほうが賢いから!!」」


「兄弟で認めるなチンパンジーに負けるな。今のままだと連座で首はねられるぞ。なので能力不足で兄を更迭したって国には伝えておけ」


「でも権力がないとローザが」


「だから誰だよローザ」


「兄がほれ込んでる酒場の娘ですね」


「領主やめたほうが身分が近くなって結婚できるじゃねーか」


「ホントだ?!」


「大丈夫かコイツ」


「大丈夫だった試しがないんです」


「こんな領主がいる世界なんて嫌だぞ。まあ権力だけ振るう義務感のない人間なんていつの時代もごまんとあふれてるわけだが。私もないしな!」


「実質すごい働いてそうですけど」


「スラムの改革とかソリド島の改造とかスライム牧場の経営とかあとはモンスター倒して売りさばいたりとかくらい。トレーニングはしてるけどあれはほとんど遊びだからなあ」


「いや、鍛錬を遊びと言い切るのはどうかと。というか何人ぶん仕事してるんですか」


「あれえ?!」


 私はニートじゃなかったらしい。なんでだ。


「性格的に動いてないと落ち着かない人なのでは」


「たしかに!」


 やべー私ブラック労働セルフでやってたらしい。セルフバーニングだった。意味違うけど。まあ楽しいからいいんだけど。


「領主変えるとしてもそうすぐにはいかんだろ。弟さん、ルイジくんもしばらく執務室こもれ。外回りは手足がやるもんだ。脳味噌を外回りさせるバカはいないだろ」


「指示したことがそのまま伝わらんのです……ルイジくんもう泣きそう」


「末端までバカ五十%かー」


 そりゃ泣くわ。人材不足ってレベルじゃねー。実は日本の高校生ができることはこんな時代だと上位数%ですらできないことがあったりするし。人材のレベルが日本と違いすぎるんだ。社会システムとして金持ちは金を使えば使うほどいいのに金待ちが金を使いづらい風潮なのはアホかと思うけどな。質素倹約なんて経済には最悪だわ。貧乏人のなにも買わない不安だけの貯金とか害悪でしかないからな。まあ銀行がある程度は回すけど。将来的にベーシックインカムが広がる予定なのにはした金貯金してなんに使うんだよ。経済回せ。一人が使わなかったら百人でも使わないんだよ。一人から改善しなきゃ結局他人が悪いしか言えなくなるんだろうに。自分が主人公なら自分以外のすべての人にとって自分は脇役だろうが。そんな世界腐ってるわ。主人公だから活躍するならいいけどいるだけで個性とかいうアホな思想はやめろ。尖ってない石なんか踏みつけられる砂利と変わらん。実質役に立たなければ価値もない。価値がなければ利益も得られない。なんでそんな当たり前のこと言わんとわからんのだ。そんな感じのことをこの世界に当てはめてこのバカ兄貴に説明してみたがあーうー唸るだけだった。ダメだこりゃ。次行ってみよう。弟くんのほうは上手くやるだろう。やるかな? 不安になってきたな。


「ちなみにこの仕事の報酬でワルテルもらっていくからな」


「「詰んだ!」」


 詰まないように今のうちに人を拾ってこい。できるヤツ五人くらい従士にしてこい。書類とかは私とワルテルでもさばけるからな。


「ワルテルはそれでいいの?」


「ものすごく楽しそうなので絶対についていきます」


「終わってた。ボクもそっち行きたい」


「引退したら誘いにきてやるよ」


「よし、兄と二人で引退します」


「兄貴も来るの?」


「兄は置いていきます」


「そんなにすぐは引退できませんけどね。それこそマウロ様の尻ぬぐいを済ませるだけでも十年はかかるかと」


「なんで放置しちゃったの?!」


 まあ領主を首にする権限なんて家族の他は王様くらいしかないからな。地方の財政まで王様が一人で関与とかありえねーし。財務官僚も貴族のボンボンレベルなわけで。いや、異世界恐ろしすぎない?! この時代の貴族や官僚に比べたら今の日本なんて安い汚職でも死ぬほど叩かれるし神々の国だわ。文句しか言わないヤツは本当に害悪だわ。だって文句ならそこらへんのオヤジでも言えるもん、今の時代。教育ってなんのためにあるんだろうな。中身を育てないなら教育じゃないけどそこは親が個別に見ないと先生一人では絶対に見れないからな。AI教育進みそう。


 まあそんなわけで現代社会だと不満を言うヤツが不満になるわけだよ。なにも変えれないくせに声だけデカい。そりゃ邪魔くさいわ。自分も結局グチグチ言ってるんだけどな。ストレスを生むのは問題を解決できないからなんだけど。


 もう全部AIに任せて人類終了でいいな! そんな味気のない世界絶対に星のんは嫌いだろうけどな!


「とにかく領主の首は変えるの決定で地盤固め頑張れルイジくん」


「とりあえず人を探してきます……」





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