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「我は魔女なり」 〜引きこもるためのスキル【マイルーム】をもらったがあまりに世界が酷いので暗躍することにした〜  作者: いかや☆きいろ
 老いたワルテルの悩み

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赤の魔女 2

 このお話はいろいろ愚痴っぽいので、そういう作りにしてはいるんですけど愚痴っぽいので他のお話はまた違うものになる予定です。



 あれからしばらくボクはモンスター退治につきあったり魔法をたくさん試していた。一息に放てるのは十発くらいだね。意識しないとダメだからとっさに放てるのはそれくらい。待機させられるのはいくらでもできそうだけど五百発待機させたらお兄ちゃんが慌てて止めてきた。え、地形が変わる? たしかに。待機させた魔法は消すこともできるみたいだよ。


 しばらくしてボクはもっと領地のことを勉強しないとと思うことがあった。あれから前に襲われてた叔父さん、テレポーターのマルコ叔父さんにいろいろ連れて行ってもらうことができるようになった。叔父さんは立場的にはお父さんの臣下なのでボクのために働くのは問題ないと言ってくれる。それで、モッセレン辺境伯領の端っこの村を見に行くことにしたんだ。


 広大なモッセレン辺境伯領。何人もの貴族が分散統治してるとは言っても隅々まで手が行き渡ってるわけじゃない。この隅っこの開拓村はモンスターの出てくる最前線。お母さんたちはあまり行ってほしくないみたいだったけどボクは無敵だからね。お父さんの報告の結果なぜかボクは第三王子のアルス様の婚約者に選ばれて対抗勢力から赤の魔女と呼ばれるようになったんだって。うん、どうでもいいね!


 ボクが辺境伯領の端っこの村に来た理由、それは……大きいモンスターがたくさんいるからだ。


 お肉が美味しいらしい。


 大切なことなのでもう一回言おう。お肉が美味しいらしい。お肉。お肉は空腹を解決する!


 一頭で数トンのお肉が取れる! 飢えが解決しちゃうね!


 え、ボクが食べたいからだけど? うんうん、貴族だから建前が大事なんだってお父さんが言ってたよ!


 端っこの村に来てみるとそこはすごく荒れ果てていた。モンスターに荒らされてるのもあるけどすごく貧しそう。家とかは建てかけのものもあるけどほとんどがボロボロだ。火事で焼け落ちたらしい家もあった。言葉はわかるけど少しなまってるね。


「ここは拠点の村ですので比較的大きく、柵などもしっかりしているのですがそれでもモンスターの襲撃を防ぎ切ることはできません。村人の大多数が天職を授かっておらず冒険者たちの善意で辛うじて保持されているのが現状です」


「うわあ、大変だねえ……」


 うん、先生の考えがわかった。ボクはこの世界の日常を豊かにしないと駄目なんだ。みんなが楽しめる程度には。


 なにもかもをいっぺんに変えるのは賢い人にしかできないから、ボクはこの村からコツコツ助けていくことにした。


 まずは……お肉! 近くに住んでる恐竜みたいに大きな牛のモンスターがいるらしいのでそれを倒しにいくよ。モンスターがちらちら出てくるけどファイアショットで倒していく。倒した端からお父さんにもらった素材ストレージのスキルでしまっていく。スキルはダンジョンで取れるスフィアっていう光るボールみたいなので獲得できるんだよ。お父さんが集めてくれたのでボクにも使えるスフィアをいくつも使ってみたけど魔法スフィアやオーラスフィア以外はなんでも使えるみたいだったよ。オーラっていうのは体にまとうエネルギーで戦うスキルなんだって。面白そうだけど使えないんだ〜。まあいいや。


 うしろから着いてくるエンマたちは散歩してるみたいな感じでおしゃべりしたりしているよ。緊張感ないね!


 とりあえず洞窟についた。この洞窟は岩塩が採掘できる洞窟なんだけど草食系モンスターが多いから掘れないんだって。ついでにモンスター減らしたら塩が取れてみんな豊かになるかもね!


 なのでファイアショット連打。牛とか鹿とかうさぎとかのモンスターをなぎ払っていく。象みたいなモンスターもいたよ。お肉にしようと思ったけどファイアショットを二十発くらい浮かせたらものすごい勢いで逃げていった。もう帰って来ないといいけど。


 目的の牛のモンスター逃げないといいなあ。洞窟の奥は広い空間になってた。壁に白い岩塩が見えるからここで岩塩を動物たちが食べてるんだろうね。そこにいた大きな牛。ファイアショット。パカン、と頭が弾けたよ。


 ずずうん、と倒れる牛。一発だった……。ええ……。なんかさみしいな〜。もっとこう、激しいバトルとかマシンガンラッシュとかやってみたかったのにー!


「さすがはお嬢様ですわ」


「さすがはお嬢様です」


 エンマもマルコさんもお茶でも飲みそうな雰囲気で言わないで……。当然過ぎてなにいってんの、みたいな顔しないで。


 牛は五メートルくらいのすっごい大きさだったけど頭が弾けたらダメだったらしい。当たり前? ほとんど綺麗なままの胴体を素材ストレージに収納……入り切らなかったので解体して三人で分けて持って帰ることにした。解体スキルは便利だね!


 たくさんお肉を持って村に帰ったら村人たちが忘れ物ですか、って聞いてきた。一時間経ってないんだね。速すぎた。まあ牛はやっつけたので、あとゾウがいたので気をつけて、と言ってまあ信じてもらえないと思ったのでシートを出してお肉を積み上げたよ。このシートはダンジョン産でビニールシートみたいな水やホコリを通さないすぐれものだよ。この世界ってダンジョン産のアイテムは先進的なのに他はなんかボロっちい。ちなみにこういうダンジョン産アイテムもたくさんお父さんにもらったよ。娘に甘すぎ。まあボクならいろいろ世の中の役に立てるだろうって。ボク別にいい子じゃないけどね。モンスター倒しても楽しいとしか思わないし。まあ人間を倒したいとかは思わないけど……戦いなら楽しそうとか思っちゃうな。


 取り出したお肉の山に村人たちは歓声を上げた。楽しそうでなによりだよ。あげるって言ってないけどね! あげるけど。こんなに食べられない。だって二十トン超えてるんだもの。怪獣だね!


 村人たちのためにたくさんあるバーベキューコンロと炭を出していく。こんなこともあろうかとバーベキューの準備だけはしてるんだ。お野菜もたくさんだよ。


 この規模の村だけだけど助けていかないとね。騎士さんとか派遣したほうがいいのかな? 村のリーダーは騎士さんがやってるんだね。この村のリーダーは若い騎士さんだったよ。村長とは別にいるみたい。騎士様は交代制で村の人が虐げられたりしたら当然一族の首が飛びます、とかエンマ大王が怖いこと言ってたよ。エンマは真面目なんだけどこの国の法律が怖いんだよね〜。


 お肉。お肉。スキルで解体したお肉は血抜きも適切で旨味まで無くなるほど血抜きはされていない。血液って旨味成分でスーパーとかの灰色になってるお肉は血が抜けきってるだけで傷んでるわけじゃないけど美味しさも抜けてるんだって。ボクはお肉については詳しいんだ!


 さっそく焼けたお肉をいただくよ。もぐもぐ。うーん、おいしー! 野生のお肉は硬いって言うけど全然硬くないよ。むしろお肉食べてるって感じがする! うちのシェフ特性の焼肉ソースも美味しい! 少しピリ辛にしてもらったら焼肉のタレと変わらないよ! 手作りだから市販の焼肉のタレより美味しい気がする。まあ市販のタレこの世界にあるかわかんないけど。ダンジョンで取れる? なんでも取れるダンジョンがあると科学は進まなそうだよね。力がある人がいれば村を豊かにできるのに。騎士さんではあのモンスター牛は倒せなかったみたいだし。


 ボクが食べたのを見てから村人たちも食べ始めた。お酒とか自前で持ち出して歓声をあげている。みんなやせっぽちだからいきなりたくさん食べたら消化不良になるよ! お肉の前に野菜も食べようね!


 村人たちは少食なのでお肉はさばききれなかったけど騎士さんがストレージ持ちなので持てるだけ持ってもらって少しずつ配ってもらうことにした。皮とかはボクらが町で売ってお金をこの村に使う予定。騎士さんは恐縮してたけどボクたちの領民はボクたちが養わないとね! 物流とかはすぐに良くなるのは無理だけどどんどん変えていかないとね。道路とか作るのにもお金はたくさんかかるしこの世界だとメンテナンスが大変。日本の道路もあんなにたくさんあったら直しきれなそう。


 それから一週間くらいした頃、この村はスタンピードにあったんだって。モンスターが集団で襲ってくることをスタンピードって呼ぶんだって。村はお父さんの配下の人たちによって作られた魔法で作った壁でなんとか持ちこたえているらしい。通信の魔導具は各騎士さんが持たされているんだって。高価なので辺境だけだけど、必要だよね。ボクはマルコ叔父さんに頼んで村へ飛んだ。お父さんたちは心配してたけどすぐにマルコ叔父さんが連れて帰ると断言したから行かせてもらえたよ。ボクまだ五歳だから心配なのは仕方ないよね! 身長だけは十歳くらいに見えるけど! ボクも小さいほうが可愛いのかなあ? まあそれはいっか。


 村に飛ぶと村人たちはクワとかフォークみたいな草とかまとめる道具とか持って集まっていた。うーん、すごい元気だね! 村のために頑張るって言えばいいのにお嬢様のために頑張る、って。じゃあボクもみんなのために頑張るよ!


「うわあ、ものすごい数ですね、お嬢様」


「五百匹? もっと?」


「二千ほどがゾウのモンスターに率いられてこの村に攻めてきたようであります!」


 騎士さんの報告によるとこの前見かけたゾウさんがモンスターを率いて起こるタイプのスタンピードで攻めてきたらしい。スタンピードには偶発型、使役形、軍団型、逃走型、ダンジョン型といろいろなパターンがあるんだって。今回はリーダーが生まれて攻めてくる軍団型と言うことらしい。まあ関係ないけどね、ぜんぶやっつけるから。


 この前の牛のお金で派遣された魔法使いさんが作った壁で村はしっかりと守られていた。魔法の仕事ってすごく早いんだね。まあお金もかなりかかるけど。無償でやれ、なんて言ったら戦争になっちゃうよ。魔法使いさんを奴隷にしていいわけ無いよね。そして忙しいからこそお金もたくさん取られる。どうしても優先順位をつけないと回れないしそうなるとお金が一番わかりやすいんだよね。社会って難しい。


 もちろんうちが雇ってる人は好きには動かせるんだけどそうそう予定を曲げたりはできないよね。工事をほっといて他の村に来てくれとか言えないもん。その連れてくる前の村の人がかわいそう。そして壁を作れるような魔法使いさんも無数にいるわけじゃないんだよね。安いお金で雇うわけにもいかないし。社会って難しい。それで魔法使いさんが回ってきてないとこはずっと要請を出してくるしそれでうっかり出てこないなら一揆するとか言っちゃったら軍隊を派遣されることになる。本末転倒だよね。


 前世ではこんなこと考えなかったな〜。社会の仕組みも教えてもらえてたんだろうけどボクが授業聞いてなかったもんな〜。偉い人は何もしてくれないと思ってたけどじゃあひとりひとりに何かしたほうがいいかって言ったら無理だもんね。法律だって変えたら歪みが出るしそうすると批判されるし。大変だね。一部の人にだけ税金を払わせるとかしたら暴動起こるよね。難しいけど辺境伯の貴族だからボクも勉強しないとね。ボクだって勉強が大事なのはわかってるんだよ! できないだけ!


 壁の上に階段を登るともうすでにうじゃうじゃモンスターが集まっていた。二千って言ってたけどたぶんそんなにかからないかな。五十発くらいまとめて撃ったら周囲のモンスターぜんぶ吹き飛ぶからね。やってみよ。


「ファイア……ファイアファイア……うーーー、ファイアショットぉ!」


 二百発くらいの塊になったファイアショットをモンスターの真ん中あたりに向けて放つ。ずごごごごお、と大きな音を立てて粉塵を巻き上げて百メートルくらい道ができた。途中にいたモンスターは消えちゃったよ。


 あ、半分くらいモンスターたちが逃げ出した。まあ無理やり連れてこられたら逃げるよね。この前見た大きなゾウのモンスターが焦ったように逃げるモンスターたちをキョロキョロ見てる。うーん、縦に二十発ファイアショットを並べてゾウを狙い打つ。名付けてキャノンショット!


「いっけー!」


「パオーーーーん?!」


 気のせいかゾウさん泣いてたよ。まあ頭が無くなっちゃったけど。牙とかもったいなかったかも?


 どずうん、とゾウさんが倒れるとスルトも追い打ちをかけて焼け野原を作る。残ったモンスターたちも蜘蛛の子を散らすように逃げていった。ボク知ってる、こういうのをうごーのしゅーって言うんだよ!


 残ったモンスターも地道に狙い撃ちして倒していった。たくさんの素材が集まったけどとてもストレージに入れきれないので家から辺境伯領専用の大型ストレージを持ってきて回収したよ。売上は地方開発に使うんだって。総額が一億グリンくらいになったのですごい話題になったらしい。反対派貴族が名付けた赤の魔女という名前が逆にボクを称える名前になったってお父さんが誇らしげに言ってた。ボクはお肉食べれたらいーや。



(マルコ視点)



 私はモッセレン辺境伯家に仕えるハート子爵家当主、マルコ。私の姉が娘を産んだのは今から五年ほど前だった。辺境伯家に我が家の血を息子の他にもう一人残せたことで引退した父母も大いに喜んでいた。私もテレポーターの天職を持てたので我が子爵家はそのうちモッセレン辺境伯家が持つ伯爵の称号を授かれるかも知れないと言われている。私はその称号に見合うように粉骨砕身働くことを誓った。しかしテレポーターと言えどもすぐになんでも運べるというものでもなかった。レベルを上げなければ数人を運ぶのでやっと。重要拠点にポインタを置いてその間をテレポートするだけなので自力での移動も必要。それだけでも時間がかかった。


 王都や辺境伯様の拠点となるいくつかの町、果ては最前線の開拓村まで登録するのに十年はかかったか。そしてやっとお家のために役に立てるとなったところだった。その娘が神からギフトを授かった。


 私はその報告のために王都へ辺境伯を送り届けねばならない。妻とまだ手のかかる子どもたちとともに馬車で辺境伯の屋敷へ移動していたところ、運悪くグレーコボルトの群れに襲われた。私一人ならマナを使い切れば対処できたかもしれないが家族がいる、しかも今マナを使えないからこそ馬車移動していたのだ。迂闊にマナを使えない、ギリギリの判断を迫られた。そこに可愛らしい少女のかけ声が聞こえてきた。


「ファイアショット!」


「えっ?!」


 炎の初級魔法、ファイアショットが……え、なにあの光の槍。凄まじい勢いでいくつも飛んでくる光の槍はそれが当たったコボルトの胴体に大穴を開けていった。いや、胴体ちぎれ飛んでる。こわい。


 それが私とお嬢様の出会いだった。


 そのあと、子どもたちを守って怪我をしたお嬢様。結果としては傷一つつかなかったが痛みを受けたのは間違いない。子どもたちを守ってくれた上に仕えるべきお嬢様に怪我を負わせてしまった。私は猛省したがお嬢様はケロッとされていた。辺境伯様に伝えたがなぜか難しい顔をされた後、ま、いいんじゃない?と軽くおっしゃられた。……いや、娘が怪我を……え、腕が飛んでも生えてくる? なにそれこわい。お嬢様のその様子から敵対する貴族たちが恐れをなして赤の魔女と名づけたらしい。スタンピードを抑えてからはその名は名声に変わった。


 私はお嬢様に家族を守ってもらった義理もありお嬢様につきっきりでテレポートするようになった。家のため、辺境伯のためではなくお嬢様のために。それがなにより誇らしく感じた。


 お嬢様はそれからも十年近くあちこちの村や町のモンスター災害を解決に導いた。冒険者たちが大量に集まるモッセレンでそれでも片付かない大型モンスターやエルダーリッチなどという厄介なモンスターまでも倒された。


 一撃で終わるのつまんない、といつも言ってるお嬢様だがその時は楽しそうだったなあ。


「我は不死者の王、エルダーリッチなり。これよりこの地を冥府へと導く者なり。小娘が、何用か!」


「君がエルダーリッチ? ファイアショット!」


「ぬわわっ、ちょ、おま、それファイアショット違う!」


 高貴で荘厳なイメージで登場したエルダーリッチは数発のファイアショットをなんとかバリアで反らすもののそれからは泣きながら逃げ惑った。半端に不死性なんかあるもんだから……かわいそう。撃たれては回復し撃たれてはバリアを張り、打ち破られては転げ周り。


「もうゆるじでえ゛え゛え゛え゛え゛ぇ゛!!」


「えー、どうする?」


「モンスターなので反省されても……また暴れますし、消滅させてくださいませ」


「うちのエンマ様厳しいよぉ!」


「ぴい、ぴい!」


「え、スルトが焼くの?」


「ごめ゛ん゛な゛ざい゛い゛い゛いぃ゛!」


 そして、哀れな不死者の王はこんがり炎の精霊竜に焼かれて消滅した。


 こんな感じでお嬢様は名声を高めて行かれた。うん、なに言ってるのかわからないと思う。私も毎日夢を見ているようだったよ。






星とかブクマとかは普通に嬉しいので気に入ったらよろしくお願いします!



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