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「我は魔女なり」 〜引きこもるためのスキル【マイルーム】をもらったがあまりに世界が酷いので暗躍することにした〜  作者: いかや☆きいろ
無人島拝金生活

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死に慣れるのはどうよ

 レベル上げ!



 数十から百を超える敵を魔術と片手剣と体術を組み合わせてとにかく薙ぎ払っていく。ゴチャゴチャといろいろな人間大のモンスターが押し寄せてくるな。


 敵が団子になってきたので壁を歩いて登る。マナにより体の落下するエネルギーの向きを壁に向けて壁に落ちるようにして走る。すごい不思議な感覚だしマナをかなり食うが緊急回避には十分だな。楽しい。忍者だな。ニンニン。ムササビの術はできません。というか必要ないけど。空を飛べるしな!


 空を飛ぶとエネルギーを落下するのと上昇するので釣り合わせないとダメだからなかなかコントロールが難しいから壁歩きはまだ楽なほうだな。低速なら風の摩擦とかも考えなくていいし。地に足がついてるっていいことだな! 私は全然ついてない?ほっとけ。


 細かい雑魚を蹴散らして行くとボス格らしい五メートルくらいあるジャイアントが現れた。周りの雑魚を蹴散らしつつジャイアントを攻撃するけどどうも傷を負わせてもすぐに癒えてしまう。生命の精霊がライフポイントを使って傷をふさぐスキルを持っているらしい。治癒力強化だな。ライフポイント自体は減っていくがそのライフポイントが半端じゃなく高いわけだ。さらに自動回復も持っているか。こういう生物もいるのか。物理に従う世界なので傷口に鉄板とか貼り付けたらその上から肉がおおって取り込んでしまう。小石くらいなら浄化されたり押し出されたりするみたいだな。浄化は分子分解して精霊が排出するのでわずかに時間がかかる。大きなものはそれだけ分解する時間が必要になるな。


 私も不老不死だが槍とかで刺されっぱなしになったらそのまま死んでしまう。まあマイルームに逃げ放題なので意味はないが。不老不死や不死身の敵の倒し方なんて中二病患者なら五十通りは考えてるよな。エターナルくすぐり倒すとか。うへえ、やられたくねえ。私くすぐられるの昔から弱いんだよね。相手が構えるだけで笑っちゃうの。ガチで蹴るからくすぐらないほうがいいぞ。


 さて、雑魚を始末していた先に現れたのはいつかやり合ったと言うか一撃でやられたキサラギ流師範だ。レベルは私の倍に設定してある。私が百二十くらいになってるので二百四十を超えてくる。偽神たちはレベル四百から八百あるからまだまだだが本気でやればレベル差倍くらいは余裕で埋められる気がする。まずは死の風ナイトロジェンストリームで一帯を覆う。この敵が不老不死ならマナポイントが継続して減り続けることになるがどのタイミングで気付くかな。結論から言えば出現した時点で気づかれていたっぽい。


 風の魔法が使えなければこの時点でレベルがいくらあろうが詰みだ。呼吸を止めてもすでに無酸素空気を吸っていれば意味を成さない。焦って斬りかかって来ないあたり気づいてないか……気づいていたらさすが達人と言うことだ。こちらを仕留めて領域から逃げ出すのが正解だからな。この段階で状態異常無効を持っていなければ即座に麻痺して動けなくなる。つまり状態異常対策はできている。ただ、継続的にマナは失われる。マナが三割を切ったら不死も働かなくなる。これって自殺するためのシステムみたいなんだよな。条件で死ねないのはキツすぎるからな。


 師範が取っている構えは、キサラギ流片手剣術奥義、不動。柳生新陰流だったかに無形の位というのがあるが奇しくもあれと同じ右手に剣を持ちだらりと両腕を下げて真っ直ぐにこちらを見据えている。キサラギ流開祖はフェイントを突き詰めた結果この形を最終形に選んだ。脱力と起こりを見せない攻守一体の構えだが素人が見ると何もしていないだけに見える。事実極められた技の蓄積があって初めて使える技だ。うかつに踏み込めば次の瞬間、死ぬ。私は青眼の構えで睨み合う。相手の左目に剣を向ける構えだ。これは攻撃の起こりや距離感を誤認させる効果を持つ。左に向けるのはこちらの利き腕側であること、心臓に近いほうなどいろいろ理由がある。瞬間的に相手を斬るので対カウンター技と言える。不動は完全カウンター技なのでこちらからは他の手が取れない。キャンディをノーモーションで放ち油断を誘うがするりとした歩法で簡単に躱す。見えないキャンディなのに!


 おかしいな、相手はタイムリミットがあるのにまったく動じない。不老不死は一回発動すると五秒はライフにもマナにもダメージを受けない。減り方は状態異常や怪我のレベルによるので即死魔術を食らい続けて平気なはずはない。呼吸にマナを使ってる感じもしない。つまり急速にマナが削れている。待っていれば勝ちなんだが気持ちがいてくる。汗が出ない体なんだがなぜかたらりと頬を汗が伝う。緊張感に体が反応しているんだな。こういう無意識に起こるマナ異常というのがあるようだ。予測できないが注意はしておこう。


 その汗の仕組みに気を取られたほんの一瞬、私の頭は宙を舞っていた。


 世界がグルグル回るわ〜。自分の体が見えるし。どこで踏み込んできたんだよ。さっぱり起こりが見えなかったぞ! ちなみに首だけでも酸欠にならなければ脳は停止しないので貧血になるまでは大丈夫だ。頸動脈は太いので一瞬で血抜き完了だが。意識を失う前に頭は体に戻っている。そもそもそういう仕組みになっている。情報としてある程度定常とすべき状態に固定されているのでそこにマナで肉体を構成している物質を再集結させる。原理と言えばその程度のことなんだが実際に自分の身に起こると気持ち悪い。


 死んだ。うん、間違いなく死んだな。達人の形をした敵はそのまま崩れ落ちた。さすがに即死魔法を武道系職業のマナで耐え続けるのは無理があったようだ。うーん、痛みも感じないしバーチャルなのはわかってるんだけど死というものに慣れてきてる気がする。自分が死んでも他人が死んでもおんなじって環境だと死に意味を感じづらくなるかも?


 死に慣れるのはどうよ。違くね? たしかにバーチャルだから自分は痛まないし相手も深い人生があるわけじゃないけど、それはここだけの話だよね。いずれなにも感じなくなるとしたら怖くないかな? それこそ人生とゲームを混同するような話だけどそんな馬鹿なことはないって昔は否定してたんだよね。ゲームと現実は違うって。それは当たり前だけど、でも感情や感覚には明確な線引きなんてないからわかっている部分とわかっていない部分があるのは間違いない。自分の考えって一旦否定してみないと駄目だわ。若いときにやりがちなミス。自分でも反論できる説を出しちゃうんだよね。練れてないんだ。私も何度も自問自答してよじれそうになることがあるけど答えを出さないと落ち着かないんだよね。友達と話すときはだらんとしてあんまり考えないけど。


 さて、勝利するだけならば問題ないが、これは技を鍛えるのを目的にしたい。技で勝つ。トレーニングなんだしな。威力でゴリ押しは魔法に任せていたらいい。剣の極みを目指すぜ!


 まあ最終的にはマナと物理量でやるつもりだけどね。最強兵器も決めてある! それはゆっくり作る。改良も必要だしな。


 スライムたちの世話も継続中だけど今は修行するか。マナ操作とか基本の部分やり直しておこう。もう少しいろいろマナの使いみちはあると思うし魔女が剣主体だと変だしな。まあ逆に新しいけど。マナの使い方の基礎をしっかり勉強しなおそう。


 まずはマナを使う感覚だがこれはよくあるように頭から手を伸ばす感じだ。基本はこれで物を浮かしたりする。マナの原理としては情報ベクトル操作なんだけど物理学的にはこんな現象は起こらない。この世界が元の世界と違うのは実はたったこれだけだ。これによって物質依存の知識チートと魔法の両立を可能にしている。それが逆にうさぎをペンに変えるようなメルヘンな魔法を難しく無意味なものにしている。例えばこのメルヘンな魔法が可能な世界の最大の問題点は何かと言えばエネルギーが保存されず個性や多様性が損失することだ。一人でなんでもできるしそもそも他者と交流する意味もない。そんなことができればすでに神だからだ。そこを神の寵愛次第で、なんてことをすると神が身分差を決めてしまう不公平な世界になる。うーん、私は星のんじゃないからわからないけどそんなつまらんことを一個一個関わって決めるようなことは神はやらないと思うぞ。なぜなら寵愛を乗せまくったヤツが無能に逆転負けする展開をあっさり作れてしまうからだ。そこに努力もあらゆる理屈も必要ない。面白いかそれ。神のペットじゃん。しかもかなり悪辣な。


 個性は人間の心が、とか言っちゃうヤツはそもそも心の作りを理解してない。心もまた無から生えてきたりはしないんだ。環境から決まる。例えば死んだものを制約なく願えば生き返らせられる世界では命の価値は無くなっていく。私達は存在そのものに意味はないので価値をお互いの中で見出していかなければいけない。それが思いひとつでどうとでもなる世界ではひとり遊びしかできなくなっていく。その中で個性を生み出していくには自然環境のような差異がもたらされなければならないがそれは人間には不便なのだ。なので無くなっていく。思いひとつでどうとでもなるのだから。そうすれば環境は均質で個性が存在できない。もっと言えば思いひとつでどうとでもなるのに言うことを聞かない他人などいらないのだ。すべて思い通りになる自分だけの世界を作ればいい。そうならないためにどうするか、そんなもん個人の考えることではないな。歴史的に研鑽しなくてはならない。そして物理世界でそれをする意味はない。なぜか。世界のルールは宇宙が生まれた時点でできているからだ。科学を追求して歴史を積み上げればいい。


 星のんレベルの神になると高度な自制心やルール作り、そこでなにが起こっても無視できるような心とその世界に対する慈しみという矛盾した感情が必要になる。そこにあるのは複雑な理論で私には未だに理解できない。世界は作ったが人は作っていないのだけはわかる。神は理不尽ではない。しかし偶然の可能性など宇宙を何万回、この場合八百万的な意味で何万回でもやり直せる神ならいとも容易くやってのけるだろう。つまりそこに意図は無く必然で命は生まれ、そしてそれゆえに価値はない。だから相互認識で価値を作る。そこに生まれるのは原子や分子のような相互作用で個を維持する世界。量子の世界になる。人間の世界の行き着くところは量子論に至るんだな。これが宗教で時に物理学的なことを予言したような情報が生まれる理由だろう。だとしたら面白いことに存在には個だけではそれを証明できないと言う現実があると言うことだ。だから私達は必然自分に価値を求めるとき他人にすがることになる。時には他者を支配したいと願うわけだ。


 つまり人間はもちろんすべてのものは価値がないと存在できないわけだな。物質的な肉体だけではダメだと。心の仕組みが量子に影響を受けていると言うことなのか。不思議だな。ただ存在することを求めた究極がそこにあるわけだ。


 私達は価値を求めるから平等に価値があるのだ。価値を捨てるということはいらなくなるということ。誰かが「いらなくなるなら必要ないんだろ」と言っていたが、それは違うんだ。必要とするから価値が生まれる。逆なんだよな。


 私には人間が必要だ。あなたはどうだろう。星のんはどうだ? まあ聞くまでもないか。


 生きるってことは自分の価値を作っていくこと。誰かに価値を与え、必要とする、されることだ。それが存在証明。


 つまりそこには人間の作るちっぽけな善悪も、愛も、そもそも言葉で紡ぐ理屈は必要ないのかもしれないな。


「神ってやっぱりすげえな」


「まあ必然こそが神のルールだからね」


「量子的な振る舞いも含め全ては必然か。なるほどな」


「……さて、神のステージをひとつ登った気分はどうかな?」


「ミネルバってなんでテミス像の格好してるの?」


「テミスってなんで目隠ししてるんだと思う?」


「たしか悪いことに目をつむってもらうヤツらを皮肉って女神に目隠しつけたヤツがいてそれが意味が変わって目隠ししてても公平って変わって主流になったんだっけ? また別の意味で記述より弁論を優先する意味があると言うヤツがいてそんなわけあるかいって目隠ししてないテミス像が流行ったんで本来はテミスは目隠ししていないし目隠しごときで法の真理は歪まないと言うことなんだよな」


「変なこと知ってんな」


「魔女裁判とかおかしいだろ。昔の法律調べたら意外と細かいのよ。いろいろ地方ごとに違ったりして間違ったこだわりとかあるけど、つまり歪めるヤツがいてそれを正すために法を足してそこにまた隙間ができての繰り返しが現代」


「法に正義なんてないんだよねえ」


「かと言ってなければ収集はつかない」


「なので法にはあえて隙間ができるように作らなければ悪用されてしまうんだよね。冤罪がわかりやすい」


「思ったんだが神に法の正誤なんて関係なくないか?」


「ないね。でも人の身にはあるけどな」


「そりゃそうだ」


 私は人間だものな。人間の法に従い法にない秩序は道徳で賄うべきなんだ。完全な法なんて窮屈極まりないぞ。それこそ独裁が受け入れられない理由だろう。人が自由であるために必要なモラル、それこそが真の正義だ。


 存在を保つために相互理解していくことだ。つまり一方的な判断に正解はない。愛や恋のなにが悪いって他者を必要としないことだろう。たとえ二人でも社会に必要なければ放逐される。当たり前だな。愛は正義に程遠い。強いて言えば万人に向けられる慈愛にこそ正義がある。閉じこもって他者を拒絶するのはけっこうだが残念ながらそいつはいらないヤツに自分でなっていく。


 ……マナの真髄もここにあるんだな。この世界が成立するためにマナは自動的には動かない。世界がいかに複雑でも意思を作り出せなければマナは動かせない。意思こそがマナの起動スイッチだ。だから意思を向けることで物を動かせる。自分の意志はこうですよ、こうしなさい、と命令するわけだ。精霊は意思を持つから命令に反発するが人間が金で動くように精霊もマナで動く。効率化は正義。精霊に望んでやってもらったほうが効率が高いので命令ではなく希望を出す。こうなったらいいな、で動かす。マナをそこに用意する。精霊がしかたないなと動き出す。根源的な考えに至ったからか仕組みがよくわかる。一見前世にあった漫画や小説の設定なんて意味がなさそうだったが流行ってる理屈には根源に通じる考えがあるものだ。それがないとなんでも有りになるからな。


 マナで石を浮かせ、浮かせ続けてみる。マナで加速すると当然空気抵抗や慣性、重力の作用があり、それを厳密にコントロールするには人間の知覚では難しいのでマナを上向きに送るだけになる。そして力が釣り合うように徐々にマナの出力を落としていく。


 このまま空中に固定する向きに、内向きにマナを固める。どんどんマナを密集させていく。これで多少触っても落ちない石ができあがる。


 これが、魔術である。


「それでなんで目隠ししてるの?」


「中二病だからさ!」


「なっとく!」





☆きいろメモ☆

 この世界では脳死状態から五十日で復活不可能となります。それまでは蘇生魔法が使えますが使い手が少ない上に老衰の場合いたずらに苦しめることになります。相当に深い恨みを持っていても蘇生魔法をそんなことには使わないでしょうが。カーラもマイルームの機能で同じ条件で蘇生ができます。ちなみにその人物が特定できない場合は無理です。ミンチから蘇生とか。ミンチの元がわかっていてたしかに死んでいれば蘇生できます。その際元の死体の存在を利用しますので元の場所からは死体は無くなります。




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