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「我は魔女なり」 〜引きこもるためのスキル【マイルーム】をもらったがあまりに世界が酷いので暗躍することにした〜  作者: いかや☆きいろ
無人島拝金生活

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ダンジョンの奥へ

 ダンジョンで遊ぶのは冒険の基本ですね!



 さて、作業を繰り返しながら奥へと向かう。マイルームで休みつつあっという間に五十階に到達した。襲い来る敵は片手剣とキャンディで薙ぎ払っていくだけだ。手加減しなくてもドロップアイテムは減らないので外の狩りより楽かもしれない。罠は風で感知できてしまう。壁の中に空間があれば現代機械でもないので風を通さない精密構造なんてものではないから容易に発見できるからだ。落とし穴の罠とかも複数回使用する目的でできているので隙間がわすかにある。目では見えないが感知には引っかかった。迷路についても目的地まで空間が空いているのでドアとかもあるがすきま風でルート検索できたりする。


『そんなに簡単に?』


「うーん、私が思っているより私は強いらしい」


 風使い無敵すぎるよな。少年漫画とかだとしょっぱい能力で最強とか普通にあるけど応用したら無敵な能力っていくらでもありそう。自分が死ぬか相手が死ぬかならいいけど百組戦闘が起こって全部相打ちとかだとつまらなそうだな。現実には殺し合いなんだけど結局力の差みたいな。発想力の勝負は楽しいんだけど主人公が運がいいだけだったりするよな。私も星のんに出会えてよかったな。


 どんなに鍛えても人は簡単に死ぬ。この世界も不死とか状態異常無効なんてスキルはあるけどマナが尽きたら死ぬし毒を浴びたら毒無効でも体が溶けたり窒息したりする。酸とか酵素が働かないと人間は生きていけないしな。毒って人間の目で見た定義でしかないから水でも飲み過ぎたら死ぬし、どこで毒と判断するかって難しいんだよな。アルコールも毒だし。この世界では生命の精霊が致命かどうかで判定するけど弱い精霊だとごまかされたり突破される。そもそもスキルがないと反応しなかったりもする。ダメじゃん。


 不老不死もマナが尽きたら死ぬ。スキルはあくまでマナと精霊で補うだけのものだ。物理現象を覆したり概念をコントロールしているように見える(・・・)だけ。


 外の精霊竜、不滅でもマナが尽きたら死ぬか? どれだけつついたらアイツがマナ切れになるんだ? 私だってマナ十倍とかマナストレージとか半端じゃないくらい積んでるからほとんど死なないけどドラゴンだってあっさり窒息するんだからな。そういえばゲームでもドラゴンが即死の魔法で死んだりするけどしょせんは生物って表現なんだろうか。私みたいに不老不死スキルを持つドラゴンもいるけど物理的に殺す手段がいくらでもあるんだよな。不滅でも殺せるか。鉄の箱に詰めたり。宇宙に放逐したんじゃ帰ってきそうなんだよな。


 ……量子みたいに箱に閉じ込めたら外にいるほうが実体だったとかあるのかな。中にいるのも外にいるのも実体で観測したら確定するとか意味がわからないよな。シュレディンガーの猫は死んだ時には人間が観測しなくても死んでる。観測するのは人間じゃなくて量子だしね。観測者効果って観測することの効果じゃなくて観測した物が働きかけた影響のことなんだよな。要するに観測したら観測した物理的ななにかが観測結果に影響を与えていると言うことだな。観測したらその瞬間は捕まえられる。ヤツの意識がどこにあるかってことだ。意識を閉じ込めて物理的に固体や液体で飽和させたら風としては死ぬんじゃないか? 別の精霊になるだけだがその時意識がバラバラになるはずだ。それは仮死にも近い。


 精霊とはなにか。ここで明らかにしておこう。ようするに流動するエネルギーの状態を維持しようとするマナのエネルギーが意思を持って振る舞うのが精霊だ。思考はどこで生まれるのかといえばマナに意思を加える、それが他のマナの意思と絡む、それが集合体になって複雑な意思の集合を作り思考が新たに生まれてその思考がマナを集め操作してそれで存在を維持できるようになったら生命として存在できるようになる。生物は生命から意思が生まれたけど精霊は意思から生命が生まれたわけだ。だからこそ自然は自然のままに運行していられるわけだが。マナがシンプルに意味がわからんけど情報を書き換えるエネルギーであることはわかっている。この場合の情報っていうのは記憶とかではなくて量子の位置情報のようなもので向きを変える程度の効果がある。右から左に運動してるものを左から右に運動させる。そんなことができるのがマナだ。基本はそれしかできない。それが熱エネルギーだったり運動エネルギーだったりする。マナは情報でしかないのでエネルギーの加算はできないが集束はできる。よって一気圧のエネルギーを集めて十気圧にする、というようなことが可能になる。


 人間の思考もこのエネルギーでできているのかも知れないな。記憶は物質の配置だとしても意思は違うのかも知れない。私はこういうのを考え出すとどこまでも考えてしまうんだよね。


 考えながらどんどんとダンジョンの奥へ向かう。敵はカニとか出てくる。深海生物みたいな異形の魚やイカなんかも出てくる。自然環境自体は地球とそう変わるものではない。クジラが魚に似たように収斂進化した結果か、神が持ち込んだか。後者もあるがほとんど放置されてるはず。神の理念から言えば自然に任せるのが本当だろう。なのでこの世界の中での独自の進化もしているはずだ。


 鉄の甲羅を持つカニ。まあ表面に鉄が集まっているだけなんだけど地球にもいた鉄の殻を持つ貝とか、生物はわりと想像もつかない進化を遂げるから別の惑星なら普通にいるかも知れないよな。ただデカい。五メートルくらいある。デカいと構造的にはもろくなるんだけどな。重さは強度を上回るから大きくなればなるほど自重を支えきれなくなり折れやすくなってしまう。強度は面によるし重さは体積によるからだな。筋力も同じく断面により強さが変わる。


 七十五階に到達。マイルームの外と通信できる白いベルを置いてマイルームに入る。この白いベルは二十万グリンもするけどこれを持っていれば私がいなくてもゲストルームに避難したりもできる。私以外がマイルームとやり取りするためのアイテムだ。使い方はステータス画面に出てくるようになるらしい。私が持ってるだけならあんまり意味はないがもし私を頼る誰かがいるなら持たせておくといいだろう。作るにはマナがいるがスキルとしてはマイルームの付属スキルの一つだ。そのうちクロノやウルドに持たせて外出させてみよう。今回はダンジョンマスターとの通信のためだ。ダンジョンの階層がもう少しで終わるとか罠はあるけど風の精霊対策してなかったとか話した。マイルームの時間の速度であるクロックは白いベルとやり取りしている間は1になる。気をつけないとな。そうじゃなきゃ会話できないけど。


 それ以降罠も増えたしミミックも出たし十メートル超える敵とかともやり合ったが生物なのでなんということもなく、最終階層にまで来てしまった。ラスボスは全長二十メートルを超す巨大な水竜だったけど残念なことに呼吸をする生物だった。瞬殺。うん、ためにはなったけど。ガチで殴り合ったとこでねえ。武士道とか騎士道とか興味ないし。バトルは熱いほうが楽しいけどさ。


 普通にやり合ってみるかと一旦ボス部屋を出てリスポーンを待ってまた入る。リスポーンまで一時間もかかるのは普通らしい。わかっていたことだがおそとで鍛えるのはかなり時間がかかるな。ガチのボス戦、キャンティボムと水の弾丸で殴り合いになるけど五千気圧で吹き飛んだ。アイテムドロップスタイルだから素材を傷つけないように倒す、みたいな縛りプレイもなしだから余裕だった。ううううん、これ私強くなりすぎかもわからんね。


 うーん、まあ色々面白かったけどね。宝箱やドロップアイテムは素材中心でアイテムもポーションやら魔導具やらスキルスフィアもいくつも出てきたから美味しかったんだけど、なんか彩りが足りない気がした。配色もそうだけとそうじゃなくイベントがあるとかワクワク感が欲しかった。贅沢か?


「ダンジョン自分で作る予定だしなあ。どう作ろうかなぁ」


「いらっしゃい」


「ダンジョンマスター?」


 最終階層は豪華絢爛な王様の間のような場所だった。赤い絨毯に金や銀、虹色や青の石が装飾に飾られている。石畳とかすげえ寒そう。王様の職業病が痔だったって嘘かホントかわからん話があったな。石畳とか絶対冷えるもんな。


 その奥にいたダンジョンマスターは布切れを貼り合わせたミノムシのような姿。そういえばミノムシの糸は蜘蛛より強いらしいね。布のミノムシに黒い隙間が開いていて二つの金の瞳が見え、骨の腕二本が左右から突き出している。なんか昭和アニメでよくみるデザインだな。これがダンジョンマスターらしい。


「ども、邪神でーす」


「おやこれはどうもご丁寧に死ね!」


「あぶない!」


 特に意味はないが斬りかかってみたけど躱された。ちなみにダンジョンの中ではマスターは不死身だ。マナもダンジョンのマナで体を守っているのでほぼ無敵。まあ倒せる設定のこともあるらしい。ダンジョンマスターも自殺したいことはあるんだろうか。


「けっこう楽しいから死にたくなったことはないかな〜」


「邪神とか言いつつすごいフレンドリーだな。攻撃したんだから気にしないのか?」


「だっていつでも邪ってなんかしんどくない?」


「わかるけどそこは邪神しろよ」


「嫌だし」


 嫌らしい。まあ意志のある存在がいつまでも一つのことに囚われてたら病気になるよね。健康的な邪神。なんて幸せな世界。


「邪神の創造主星のんだろ」


「創造主っていうか雇われ? まあダンジョンマスターは魂の時にやりたいか聞かれる。ここを選んだのも自分だったり。なので文句も言えない」


「文句を言えないってのはある意味幸せなのかもな」


 できなければする必要もないもんな。社会に文句ばっかり言って生きてても不幸になるばっかりだし恩恵を得てるんだから黙っといたほうがお得だよな。日本で買えるものって日本の社会がないと買えないし社会がないと金なんて紙屑だからな。社会がいらないなら社会がない生活を想像してみるといい。社会があるから私も幸せだ。感謝するのも自分のためになるんだよな。恨み続けるのはしんどいけど感謝してたら文句もない。でもそんな社会に感謝できず協力できない人間が社会にはあふれてるから社会は嫌いだ。心は考え方一つだな。


 いつもの横道は置いといて。


「この外に町を作ってダンジョンに挑んで生活できるようにしたいんだけど物資を供給するダンジョンにできる?」


「できなくはないけどここらはマナが濃い空間になるからモンスターも強いのが湧きまくるよ?」


「それもよし。じゃあ協力しよう」


「ほんと? 助かるわ〜」


 気が抜けるなこの邪神。見た目ポンコツミノムシだけど。ふわふわ浮いてるのは魔法なのかな? スキルで周辺魔力を浮力に変えるとかあるのかも知れない。魔術でやれるよう工夫してみよう。ラスボスは浮いてないとな! なんだその偏見。背景と同化したボスもいるけどなんか自由度低そうだよな。世界を支配しても滅ぼしてもなんも楽しくないし仕方ない。ほんと恨みつらみみたいなものも人間の原動力としては弱いよな。慈しみ思いやるのは別にそれが正しいからじゃなくそうしないと生きていけないからだ。孤独に耐えるのはそんなに難しくないがそれで社会が持つかと言えばそんなことはありえない。人がいなければ社会もなく返ってくるものもない。ひょっとしたら痛みや苦しみのない世界ってたちまち行き詰まるんじゃないだろうか。人を急かすものはなんであれ嫌なものではあるが人は動かねば死んでしまう。


 けっきょく、欲深いことこそが社会を動かしていくんだろうな。当たり前だけど動く人がいなくなったらそこは死人の町だ。誰もそんなとこ住みたくないだろう。


 うーん、ここでできることはもう無いのかな。ダンジョン作りを始めるために色々聞いておこうか。


「そういえばなんか欲しいものある?」


「協業してくれるんだからそれでいいけど?」


「欲が無い邪神ってなんだよ」


「神様だって一個神の感情とかあるんだけど?」


「あるの? 邪魔じゃね?」


「感情なかったら色々破綻すると思うんだけど?」


「星のんとか感情的だもんな〜」


「まああそこまで極端な神だと暴れても誰も彼も痛みもなく消失するからな。全部リセットするとか。暴れる意味ないし、感情も萎えるのはしかたなくないか?」


「神には神の事情があるんだよな〜」


 奇跡は起こらないんじゃなくて起こす意味がないんだよな。この世界が魂のために誂えられたものなら奇跡は逆に起こっちゃ駄目なんじゃなかろうか。まあ偶然を奇跡と呼びたければ呼ぶといい。


「じゃあダンジョンの作り方でコツとかあったら教えてほしいかな」


「そもそもダンジョンコアあるの?」


「代替スキルはある」


「仕組みが違いそうなんだけどまあ基本はマナによる構成と情報による構成を学ぶとこからかな。あ、このダンジョン飾り映えしてないんだよね? 改造案を代わりにおくれよ」


「いいけどさぁ。なんでフレンドリー」


「だって寂しいもんよダンジョンマスター。客も天使とかしか来ねえ。精霊はなんか攻略とかどうでも良さそうだから入れないし」


「ボッチだと人混みとかたまに入りたくなるよな。なんか人間の群れを感じるというか社会って生き物なんだなって思える」


「いいな〜、都会とか行きたい」


「ダンジョン出られないの?」


「分体を出したりダンジョンをフィールドに侵食させたら生物としての能力が足りなければ設置できないとかの設置限界とか条件は厳しくなるけどそのフィールドダンジョン内は自由になるよ」


 存外しっかりしたシステムが作られているようである。あくまで基本的な物理を壊すことがないようだ。ルールっていうのは安定のためにある、それは世界も社会も同じことだな。それをぶっ壊すだけじゃ得られるものは減ってしまう。破壊衝動ってものもあるからゲームも大事だよな!


「ダンジョンを作る際に注意点とかある?」


「人がいるところに作る」


「切実か! まあそれは置いといて」


「モンスター強くし過ぎたらダンジョンがレベルアップするたぴに雑魚も強くなっちゃうから気をつけて」


「入り口にドラゴンとか配置したらダメってことだな」


「浅い階層を新たに作ってもいいけど階層を作るコストはすごく高いからね」


 階層を作るコストが高いから作るときは深い階層のほうがいいんだな。モンスターとかのデザインする楽しみがあるってことかな。


「一からモンスターの設定作るの難しくね?」


「この世界にいるモンスターをベースにして書き足すと楽だよ」


 一からオリジナルを作らなくてもいい仕組みらしい。マイルームの方の機能がどうなってるか調べておこう。


「やっぱり実践だな。じゃあまたな!」


「帰るの?! 早くない?!」


 早くない。また来るし。ダンジョン作りを早く始めたいからな! ワクワクしてきた!







☆きいろメモ☆

 ダンジョンマスター物には神が用意したり古代文明の遺産だったりと設定のしようがありますがこのお話ではシンプルにイルマタルによる過剰介入です。なので場合によってはダンジョンが天使に潰されます。



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