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友人にスキルを強請る魔女

 主人公はダラダラいろんなこと考えてますが世界自体はシンプルなものです。科学の通用する魔法とレベルのある世界。



 その日はアルコール依存症の治療のために精神科の病院に向かっていた。治療と言っても自助グループの皆で集まって話すだけだが。四十二歳無職のオバサンの平凡な日常が始まる。誰が期待するんだろうな。本人が期待していない。外はよく晴れているので気分はいい。家の真ん前が堤、海岸になっていて海の水は透き通っている。潮は満潮が近いらしく高め、空は曇りだが風は穏やかで波は低い。釣りに行きたいな。……今日も海は綺麗だ。


 先日のこと、酒に酔って自転車で盛大に自損事故をした結果、整形外科に入院。複数箇所の骨折の手術は一日置きで三日かけて終わりリハビリに三ヶ月、その後退院して、また酒を飲んでアルコール性肝炎で入院した内科病院で次は精神科の受診を勧められ、そこでアルコール依存症と診断された。


 アル中である。


 その後更に精神科に三ヶ月入院して、治療のために断酒を続けることになった。ひとくち飲めば元通り。次は血を吐くかもしれない。入院患者に血を吐いた経験がある人が数人いた。糖尿病を併発して足を切断した話なんかも聞く。人工透析の話もある。アルコールは神経毒である。生命に関わる毒物なのだ。


 アルコール依存症患者は肝硬変や糖尿病、ガンに突然死、自殺も含めて平均寿命が五十二、三歳とされている。それなのにやめられない。れっきとした病気である。


 その日も病院に行くために出かけるところだった。ポストを覗くとひと月ぶりの友達、山野アイからの手紙が届いていた。四十過ぎなのに結婚すると決めたらしい。私はメールで良かったな、と返す。『相変わらず恋愛には興味ないのね』と返信。メールがあるのにずっと手紙のやり取りしてるんだよなあ。帰ったら手紙書こう。手書きってのがまた楽しいんだよな。……入院中はメールで済ませてたけど。それは仕方ないか。


 ちなみに半年以上も休んだのでラーメン屋のバイトは首である。引き止められたけどさすがに自分から辞めた。みんなには首と言っている。半年休んだのに辞めさせないのではさすがに店も示しがつかないと思う。同じ状態で他人が辞めると言ったなら庇ったかもしれないが、酒乱でゴミクズの自分が片付いただけだ。なにも問題ない。自分への悪口はどんなに大声で叫んでも自分だから許される。ちょっと気持ちが救われてしまうんだよね。クズが、死んじまえ、とか他人に言うと大問題だけど自分には言いたい放題だ。スカッとする。阿呆は死ねばいい、とか言っちゃう。SNSで言うと垢バン食らうから気をつけろ。死にたかったけど痛いの嫌なんだよなあ。他人が骨折した話とか聞くと全身の神経が痛む。共感疲労って言って五人に一人くらいあるらしい。自分の骨折は鎮痛剤が効いてたからなんともなかったが。


 そんな私の名前は槇中心という。まきなか・こころ。まきちゅうしん、とか子供の頃はよくワルガキに揶揄からかわれていた昔から大嫌いな名前である。私はいつも隅っこでヘラヘラしてるのだが。それに心って名前が悪い。私に心なんてあるものか。まあ自己中なのは認めるが。他人がどうでもいいとかじゃなくて基本的に関わりたくないんだよね。寂しさとかは、これが、まったく感じないんだよな。不思議だ。むしろ人といると感じる。無視されてんなーとか。まあ構ってもらいたいわけでもない。


「う〜、あたまいたい」


 朝から偏頭痛のせいか足元がふらつく。酒に溺れた理由の一つがこの執拗しつこい偏頭痛だった。飲んでる間は偏頭痛にならなかったから。


 ふと、


 階段を踏んだはずの足が宙を踏みぬいたのに気づいた、が、遅かった。


 あ、やべえ、と思った瞬間には、……なにか薄いピンク色の空間に浮かんでいた。あ、死んだな。なんかすべてがわかる、不思議な空間にいる。前世に絡んだ他人の記憶とかまでわかる。死後の世界だな。


「なんだここ。やっぱり酒で前頭葉が萎縮してるから幻覚を見始めたのかな?」


 これじゃまるでネット小説でよく読む異世界転生ではないか。嫌だぞこの年で赤ちゃんプレイとか冒険とか。クズ人間は異世界に行ってもクズだぞ。


 私は今年で四十二歳だし、さすがに異世界で冒険だ、わーい、とはならない。中二病が癒えてないのは認めるが。魔女とか憧れる。ひーっひっひ、とか笑うのは憧れない。あれだ、美魔女とか?


 私には美がないので魔女だ。ふはは。この笑い方ならちょっと魔女っぽいかも?


「マキのん」


「あん? 誰だ懐かしい呼び方しやがって……って星のんか」


 四十過ぎて愛称呼びはなかなかダイレクトに羞恥心に突き刺さるものだな。認めたくないものだな、自分自身の若さゆえの……、いや、これはやめとこう。古いネタ過ぎて若い子には通じなそうだ。誰に聞かせるんだよ。


 振り返ると中学の時に付き合ってた星野玲亜(レア)がいた。女同士だが。まあ友達として、ね。一方的にマスコット扱いされたわけではないし嫌な関係じゃなかったのは初めてかもしれない。チビで陰湿な私と比べて成績も常にトップで脚も長くて超美少女、孤高の存在。ある意味ボッチなので変な話だが、私と馬が合った。実はすごいオタクだし。安心もあって思わずため息をついて、呟く。


「ちょっと前なら酒に溺れてるだけで早く死にたいと思ってたけど、今は死にたくなかったなあ」


「そう。まああのまま死ぬところだから意識だけ先にこっちに引っ張ったんだけどね。自分の死体見る?」


「……やめとくわ。あれ? 星のんも死んでる?」


「私は生きてるけどね、ほら、私ってどこにでもいるじゃん?」


「たしかになー。しかし四十過ぎてるのに十代に見えるとかどうなってんだ?」


「魂ってそういうもんだよ。前世も来世もなく自分の魂が一番安定して反映される姿になる。下手したら虫や魚だけど」


「虫や魚とか辛そうだけど星のんの中学当時の姿に黒い眼帯に黒いゴスロリってどうなんよ。その太ももに差してる銃って実銃なの? 確かに星のんの魂を反映してるけど」


「まあ……これぞ我が魂が求めている姿よ!」


「四十過ぎてるのに順調に進行してるな中二病。もはや不治の病。……私も若返っていたりするのか……。なんかやだなあ……」


 小娘の頃の自分に戻りたくないというのもあるが、成長した部分もあるのだ。それを失いたくない。まあ見た目が変わるだけなら。シワとか無いし肌のハリは良いし化粧もいらないしな。


「それで、星のんはなに? 異世界の案内人とか女神とか? うわあ、そのまま見た目でもまったく女神で嫌味だわあ……」


「外見中二で中身ドス黒いけどね」


「それは知ってる」


 星野は成績優秀で生徒会長までやるくらいバリバリの行動派で、でもオタクで腹は真っ黒で自分のこと神とか言うけど私とよく話が合う。いつも話すのは今週一番死んだ方がいい人ランキング三位についてだ。一位と二位は私と星のんで埋まってるからな。自分を真っ先に殺しといたら他の人を殺さずにすむよねー、とか話し合ってたくらいお互いにイカれてる。私は成績は中くらい。理系はほぼ満点で文系は死滅。文系は犠牲になったのだ。いいんだ、自分にとっては自然が一番大事だったから。犬猫もハムスターもイタチも魚も草木や花も好きだしね。虫も平気。フナムシに噛まれたのは嫌だが。海も山も好き。狩りとかしたい。釣りも好き。自然は最高だ。科学がわからないのはまずは科学が自然を見極めるものなのを理解してないんだよな。ただの記憶ものだと思ってる。そりゃ意味不明な単語の群れを聞いただけじゃわからんわ。赤って言葉にしただけじゃ自分が思った赤色は伝わらん。リンゴか血か夕焼けか花の色か、言葉を尽くせば伝わる可能性があるがそもそも元を知らなきゃ伝わらない。言葉はそれくらいのものだ。知るって本来は体験するとかそういうことのはずなんだ。


「日本でもう一回とはならんの?」


「少子化の上に競争率すごく高いからまたろくな人生にならないかもよ」


「それは嫌だ」


「まあろくな人生なんて自分で見つけるしかないわけだけど。夢や希望は君の胸に」


「唐突なポエムはやめい」


 まあ間違っちゃない。ドブみたいな人生でも自分がクソでクズでも、弱さを理解して納得して改めていくのは気持ちがいいもんだ。空っぽだからこそ足していく快感がある。それに気づくのが遅かったな。まあ自分の弱さや現実を見つめるのは怖いもんだから。でもそれが実は自分の力になると知ればいいんだよな。


 どう生きても納得しなければどこかイライラしたまま生きていくんだ。いいんだ、自分でも他人でもだが、どうせ人は未熟でバカでクズでも、付き合っていくしかないなら、仕方ない。耐える必要はない。しっかりと悪いと罵ってやればいい。それでどうなろうが知らんが、スッキリはする。それができないなら終わったことにする。我慢にしてはいけない。破裂するからな。解決しないことにイライラしても無駄だしイライラすると疲れるんだ。しない方がいい。抗えないならスルーしたり逃げたりしたらいいんだ。世界のために一人が犠牲にならないとダメだとして、そんな世界なら終わって結構だ。自分がそれに当たったら喜んで死ぬんだけどな。つまんねーもん人生。


 私もたいがい人の気持ちを考えすぎて捻れてしまう人間だが、ダメならすっぱり他人を切る。自分が痛い思いをして耐え続ける理由なんてない。他人と深く関わらなくても生きていくだけならできるはずだ。自分自身とは縁を切れないから成長するしかないが。


「それで、異世界かー。正直引きこもりたかったんだよなあ」


「おや、なんで?」


「本当の自分を見つめ直したいから?」


「唐突なポエム返し?」


「そんなにポエミィ?」


「ポエミィ」


「ポエミィな世界は嫌だぞ」


「まあ基本科学的知識が通って知識チートも魔術も錬金術もありで原始的なとこと先進的なとこが混ざってていつの時代かどこの国かわからない感じの世界」


「……思ったんだが異世界って普通そういうもんじゃね? 中世ヨーロッパ風とか言いながら清潔だったり和風だったりカトラリー使ってたりお茶会してたり水洗トイレだったり下手したら電化製品より便利な魔道具があったり」


「近現代なんだよなあ。たまにスマホとかあったりするしテレポートは欠かせないし下手したら未来的」


「物理学無視って無理あるよねえ」


「物理学ってか科学って自然とか人間とかの見えてる情報を逆算で細かく見ているだけだから物理学と現実が乖離したらそれはもう新しい物理学を立てるかやっぱりただの物理世界にするかもしくは細かい物理現象まで常に介入しなきゃ世界が同じようには運行しないんだよねえ。めんどいから絶対やらないし。知性体の出現くらいは宇宙の広さと確率でなんとかなるとしても地球人みたいな人間はなかなか出てこない。地球人て無駄が多いからね」


「そりゃそうだ」


 石は、風は、水は、火は、植物は、動物は、人間は、病は、自然はなにでできてるんだろう、そんな疑問から生まれてきたのが科学なんだから人間がいるのに科学が成立しないならそれは人間に似せて作ったなにかだし人間主体の世界だし、それなら逆にそんな細かく似せる意味がわからん。人間って排泄とか性交渉とか睡眠とか食事とかなにかと不便だろ。人間がいるのに魔法が科学をガン無視できるならそれは夢の世界だろう。夢やゲームの世界なら神は人間でしかないし最初から全てはご都合主義にするかその魔法の世界の科学をゼロから人間やエルフが生まれるように構築して放置すればいいと思う。できるかは置いといて。これから転生する世界の神はどうやらこの娘だからまた違うけど。基本の科学に味付けして魔法も科学も成立させているようだ。ご都合主義でも神が自分で作ったルールを壊さなかったらそれでいいんじゃん。考えてルールを出し抜いて面白ければそれでいいし。子供の頃の追いかけっこで突然バリアルール作るみたいな後出しじゃなくてルールを理解できるかは別として明確にしろってことだよな。そこは安心している。まあ難しい話は置いといて、引きこもりしたーい。


「いいよ、チートをあげよう。そのかわり天職はニートね」


「おうよ。逆にニートがいいまである」


 天職ってなんだろな。ニートで引きこもりなら異世界でも変わらんよねー。そのほうが私はいい。気楽。あ、そうだ。天職って最初からジョブが決まってるんだろうな。転職システムあるのかな? そうだ、異世界と言えば!


「ついでに通販スキルとかもらえませんかねえ。ゲヘヘ」


「この状況に一瞬で馴染んで要求までカマシてくるあたりマキのんだわー」


「私は私さ、変わらない」


「いいセリフっぽく言ってるけどだいぶ厚かましいからな? 許すけど」


「許された」


 神様にチートを要求とか私は何様だよって思うよな。って星のんは神様じゃないのかな。


「神様っちゃ神様なんだけど最近神様って言われるの嫌になってきたので流転する魂の一つと名乗ってる」


「神様って最近は便利なお願い叶えマシーンみたいな扱いだもんねえ。金も信仰も払ってないのにお客様扱いされたがるの、あれ精神の病気かもね」


「まあ今も目の前にいるけどさあ……。友達だからいいけどな」


 ほんと、私は何様だよってなるよな。お医者様にこっちは客だろって言っちゃうバカみたいな奴いるよなー。金払ってんだからなに言ってもいいって婆さんリアルにいたわ。金払ってんのお前さんだけじゃないし命に値段つけられないんじゃなかったっけ? いいから帰れって言われたらどうするんだろう。自分が死ぬほど辛い病気でも診療拒否ってできるんだぞ。実際に入院してたら他の患者さんが強制退院させられた、とかかなりあったし。医師は自分と患者の間に必要な信頼関係がないと確信が持てる場合は救急じゃない限りは診療拒否が認められる、だったか。暴れたりするヤツや行き過ぎたクレーマーは診療しなくていいということだ。当たり前だけど医者にも患者を選ぶ権利はある。それと事実であっても相手の不利になることを多くに吹聴したら名誉毀損だ。気をつけろよー。気をつける前にやるなって話だが。本当の事を言っただけ、は通用しないんだよな。話がそれた。


「まあマイルームってスキルつけとくね。いつでも逃げ込める部屋。商談室とかトレーニングルームとかは最初から付けておこう。オマケで現地語を脳にインストールして鑑定能力も簡単なの付けとこう。辞書並みに情報が出ても困るよね? 収納スキル、この世界だと倉庫(ストレージ)はいろいろあるんだけどアイテムストレージと素材ストレージ入れとこう。マナストレージはつけとくけど説明は現地でしてもらって。他に必要なものやスキルやアビリティは買えるようにするから買ってね」


「それなー、異世界転生特典三大スキル。翻訳とかじゃなくてよかったわ。超恣意的な翻訳がされるのどんなシステムだ、とか鑑定ってどこからかどこまでって誰が決めるんだよ、とかいつも突っ込んじゃうんだよな」


「まあそのあたりは人間の脳に収まる範囲で快適な程度を現地人の知識に基づいてスキルを操作させてる天使の意向と感覚で」


「最後は感覚になるのかー」


 まあ日本語に翻訳できない言葉だってもちろんあるんだから翻訳機能なんて作れるはずがないんだよなー。文字数が合わないし口の動きも合わないし。たまに見る映画の、俳優の口の動きと字幕と声優の喋りが全部が全然違うのは逆に面白いんだけど。こっちの意思や理解を完全に反映する日本語に聞こえる同時通訳の翻訳って無理だわな。でもインストールもインストールで問題ありそうだな。脳内ゴチャゴチャするし日本語にだって知らない言葉はあるしなあ。方言になるとさっぱりわからんよ。そういう部分は赤ちゃん転生に分があるけど実際に赤ちゃんの脳に成人の知識が入れられるかはわかんないよね。確か無理なはずだ。最初は細胞一個だしな。


「まあ日常会話に支障がない範囲で。そもそも異国語って翻訳するより現地語で覚えた方が早いってのもあるよね」


「だよなあ。私はひとつも喋れんけど」


「マキのんだしねえ」


「勉強嫌いで自主勉強一切したことないからな!」


「褒められたことじゃないねえ。勉強嫌いは一種の病気なんだけど。治療方あるし。脳の報酬系を自分でコントロールするだけだけど」


「前世で知りたかった。勉強しないでできるのがすごい、って子供がよくやる勘違いだよな。実は勉強に取り組めるほうが偉いのにな。やらなくてできるったって知る機会があったからできるんだから勉強はやっぱり必要なんだよなあ」


「まあ頭の良し悪し、想像力の有無や記憶力、計算能力ってのはあるけど。ところでいつ転移するのマキのん」


「転移なの? 転生じゃなく?」


「赤ちゃんプレイはイヤかなって」


「それな」


 いやー、気の合う友達と会うと無駄話が増えていかんね。年をとって話が長くなったのもあるな。まだ若いですとは自分のことだから言い難いなあ。他人が同い年ならまだ若いよ頑張ろうって言うんだけど。実際自分が、難しいしんどい仕事を押しつけられたらまだ若いから平気だよ、って言うんだけどな。思っていないくせに、お若いですね、って言ってくるヤツは心臓に悪い。お元気ですか、でいい気がする。年の話をしなきゃいいんだ。ふう。ちなみに四十過ぎてるからって唐突にお婆さん言葉になったりはしない。実は一般的な漫画とかのお婆さん言葉って方言がベースらしいぞ。全国ドラマの影響だってさ。なので私は喋りは若いのだ。ふはは。喋りだけちゃうわ。


「転移で肉体は十代、髪は銀髪で瞳は透けるようなエメラルド色にしとくね」


「おい」


「異世界なんだから美形化も大事なチートでしょうが!」


「それな、いやそれなじゃないが?」


 悪くないがカラーだけ変えるってどんな罰ゲームだ。チビだけど顔は及第点だよなあとか毎朝鏡見ながら思ってたりせんわ。しないよ?


「まあロリコンが寄ってくるって嘆いてたもんねえ」


「勇気をだして話しかけました、ってロリコンさんは勇気を出す場所を間違えないでください断ったら三次元はこれだからとか開き直らないであと面前で合法ロリいうな」


「深刻な被害者だねえ」


 いや、実質被害ないけどさ、勇気を出すにしてもまず友達を作って活動範囲広げないとさあ……。まあ上から目線だから言わないが。もうすでにババアだし。いや、今でも子供と間違われることがあるが。しばらく顔を見てからスミマセンは傷つくからやめて。小ジワか? 小ジワなのか?


「小ジワひとつないからむしろムカつくんだけど?」


「星のんにムカつかれました勝ちましたー」


「ムカつくわー」


 ああ、友達っていいもんだったな。思い出したわ。その友達にチートを強請るババア。しってるか、強請るってねだるって読むんだぜ。知ってるか。


「星のんはリンゴしか食べない?」


「唐突にどうした食べるわなんとなくあのネタか死神じゃないぞやったことあるけど死神」


「息継ぎしろややってんじゃねえよいろいろやってんなさすが星のん。って私の死因はまさか」


「そこまで暇じゃないけど?」


「だよね」


「神様が失敗して死んだ、とか無いから。文句あるなら存在を無かったことにするから安心しろ。とりあえずのいろいろはメニュー画面に説明書と、オマケのナビ役に妖精でもつけとくわ。電子の妖精」


「そこはかとなく怪しい発言をチョコチョコ挟むのやめろ」


「でも私がマキのんの背後霊になると時間とか止めちゃうしさあ」


「そこはかとなく怪しい発言をチョコチョコ挟むのやめろ」


「そのネタはもう死んでる」


「そこはかとなく怪しい発言をチョコチョコ挟むのやめろ」


「私は異世界の神になる」


「もう神だろやめろ」


 はあー、楽しくて時間が過ぎるのを忘れてたわ。そろそろ逝かなきゃなあ……。


「次の人生は仙人にしといたから。不老不死だから目指せ、魔女生活!」


「はっ? って、とわっ?! 体が透けて落ちて…………ってええええええっ!?」


 最後に大きいネタをぶち込んできやがった。仙人ってなんだよ。あれか、カスミ食うの? 仙薬とか配るの? 魔女もそんな感じっちゃそうだけど。せめて鍋をかき混ぜてヒーッヒッヒッて笑うイメージトレーニングさせてくれー!


 あ、別にそれはいらないや。やったことあったわ。


 来世は魔女っ子目指すかー。……四十過ぎには辛いな。やっぱ引きこもろう。


「あと無人島おくっとくからー!」


「もういっこぶち込んできた?!」


 そのまま私の意識は闇に消えてった。がくっ。






☆きいろメモ☆

 天職、ギフト、スキル、など色々ある世界ですがそれをくれたのが誰なのかは人とモノによります。神はこの世界には三種類いて、星のんは宇宙のルールそのものです。



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[良い点] テンポのいい掛け合いが読んでいて楽しいです! 『マイルーム』かあ、いいなあ。楽しそうです。 >「いいよ、チートをあげよう。そのかわり天職はニートね」 なお、このセリフが最高に刺さりました!…
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