適性検査始まる
「おっはよー! 写狩」
「おはよ真帆呂」
元気よく挨拶をしてくる真帆呂。
「昨日はよく眠れた?」
「あぁ。 よく寝れたよ」
「私はなかなか寝付けなかった……」
「そうは見えないけどな」
「ほら見てっ! 目の下にくまができてる!」
よく見ても見えない……だが、見えないと言ってしまえばうるさくなる。
「ほんとだ」
「でっしょー! もぅ昨日から緊張しちゃってさぁ~……もし、適性検査でランクがFだったらって、ずっと考えちゃうんだ~」
「真帆呂なら大丈夫だろ? 魔力操作だって、クラスじゃトップなんだからさ」
「そうかな? そうかなそうかな??」
「あぁ。 真帆呂なら大丈夫さ」
「えへへ……写狩に言われたら大丈夫な気がしてきた!」
「その意気だ」
「よっしゃっ! やってやるてばよーっ!!」
気合が入った真帆呂を見て、俺も気を引き締める。
真帆呂は恐らくBクラス以上だと俺は予想していた。
それだけの力を持ち合わせているのは、昔から真帆呂を見ているからでもある。
真帆呂はどうやらハンターになりたいみたいだ。
それは憧れから来るものらしく、現にSランクハンターとして活躍している断 一花を目標としているのを俺は知っている。
断 一花が運営しているギルドに入り、いっしょに戦いたいとも言っていた。
目標がある事で、それが己を動かす原動力になる。
それは俺も同じである。
「あぁ……もう学校に着いちゃったぁぁぁ」
「ここまできたらやり切るしかないさ」
「そうなんだけどさぁぁぁ」
「おはよー真帆呂ちゃん」
「あ、おはよみっちゃん! 昨日は眠れた?」
「あたしはぐっすり眠れたよ」
「うそっ⁈ 私はなかなか寝付けなかったー」
「あはは。 そうなんだ。 真帆呂ちゃんにしては珍しいね」
先程まで不安そうな顔をしていたのに、女友達が話しかけてきたと思ったら、俺を置いてどんどん先へ歩いて行く真帆呂……
「ま、それはそれで真帆呂らしいか」
俺は真帆呂達が和気藹藹とした姿を見て、ホッとする。
どうやら俺も分からない所で緊張していたみたいだ。
「さて、挑むとしますかね」
気合と言う言葉は好きではないが、若干、それに似た思いを胸に、校内へと歩を進める。
♦♦♦
「え~、それでは、今から適正検査を開始する。 順番に名前を呼ぶから、呼ばれたら移動するように。 それでは島内 勝也」
「はい」
名前を呼ばれた生徒は室内へと入っていく。
横を見ると、同じように先生に名前を呼ばれ、生徒は室内に入っていく。
数分すると、室内が光だす。
「よっしゃー! 俺はBクラスの参支氣だ!!」
「はぁぁぁ……Eクラスだった……」
「やったあああ!! これでハンターとしてやってけるぅぅぅ!!」
検査が始まり、各部屋から、様々な声が聞こえてくる。
「はぅぅぅ……どうしよう……手が冷たくなってきた上に、痺れてきたよ~」
次が真帆呂の番である。
俺の横には緊張を隠せない真帆呂がいた。
各部屋から喜びの声に、落胆する声が交差するこの状況で緊張をしない方がおかしい。
ましてや、ハンターとして認められるのはDクラス最低ライン。
真帆呂はそれ以上を目指さなければいけないのだ。
俺が今さらあーだこーだ言ったところで、変わりはしないだろう。
だが、幼馴染として、少しは力になってあげたい。
俺はそこで、『展開していく世界』の1つ、『優位な先行動話視』 を使う事にした。
この力は他者との会話や、相手がどの様に動き、どういった会話をし、この後何が起きるのかを見せてくれる。
ただし、対人の場合は見えるビジョンは現状2分が限界である。
それを超えると激しい頭痛が走り、行動不能となる。
『優位な先行動話視』を使い、検査を受けている真帆呂を見ているが、不安そうな今とは違い、自信満々な顔をしていた。
そして、眩い光が現れ――
「はは……真帆呂はすごいな」
「え、何か言った?」
俺の呟いた声が聞こえたらしく、俺の方を向く真帆呂。
「あぁ、いや、何でもない」
「あ、そう? うぅぅぅぅ……緊張するよぉぉぉ」
「真帆呂、心配するな。 真帆呂ならきっといい結果が待っているさ」
「なんでそう言い切れるんだよぉ?」
「俺が真帆呂に対して、嘘をついた事はないだろ」
「……うん、そうだね」
「なら、俺の今言った言葉を信じて、自信をもって検査に挑むんだ」
俺の言葉を聞き、若干呆けている真帆呂。
だが開いた口をムッと噤み、コクリと頷く。
「うん。 なんかよく分んないけど、写狩の根拠のない言葉に自然と緊張が無くなった」
「おいっ! そこはもっと違う言い方があるだろが!」
「くぅぅぅ……Dかぁ……しかも壱支氣……」
「はい、次は……銀時 真帆呂。 早く入りなさい」
「あ、はいっ!」
名前を呼ばれ、立ち上がる真帆呂。
「行ってきます!」
「おう。 行ってこい」
真帆路の顔から緊張の影は見当たらない。
俺が見たビジョンと同じ顔をしていた。
俺は目を閉じる。
だが閉じた瞬間、目を閉じていても分かる程の眩い光が溢れ出す。
「こ、これはっ⁈」
「な、何という事だっ⁈」
「え、え、えっ⁈ な、何⁈」
部屋の中から驚きの声に対し、何が起こっているのかわかっていない真帆呂の声が部屋の外にまで聞こえてくる。
「ぎ、銀時 真帆呂の検査結果……Sランク!!」
「へ……ぃやったああああああああああああああ!!」
真帆呂の喜びの声が響き渡る。
おめでとう真帆呂……だが、俺はこの先毎日顔を合わせていた真帆呂とは会えなくなるだろう事を思うと、嬉しさよりも、会えなくなる悲しみの方が勝っていた。
勢いよく扉が開く。
「写狩っ!! 聞いて、私Sランクだって!! しかも肆支氣!!
「あぁ、扉越しからでも聞こえていたよ。 おめでとう真帆呂」
「えへへ……ありがとう写狩」
「銀時さん」
「はい?」
何の音もなく真帆呂の横には、黒いスーツを着た1人の女性と2人の男性ががいた。
「私達は日本ハンター協会の者です」
「へ、え、ハンター協会⁈」
「申し訳ございませんが、お話がございますので、私達に付いて来てもらえますか?」
「へ、え、え⁈」
突然ハンター協会の者が現れ、話がしたいと言われれば困惑はするだろう。
俺は真帆呂の手を取る。
「真帆呂大丈夫だ。 これは真帆呂がSランクと判定された事で、ハンター協会が真帆呂と今後の事について話をしたいってことだ」
「え、あ、そういう事か!」
「っで、いいですよね?」
俺がそう言うと、ハンター協会の者は俺を見る。
サングラス越しからでも分かる。
3人の中で、この女性が一番強い。
恐らくA級クラス……であろう。
「申し訳ございません。 最初に説明をすればよかったですね。 そちらにいる彼の言う通り、今後の事についてお話があり、真帆呂さんには付いて来てほしいのです」
「あ、そういう事であれば、はい! 付いて行きます!」
「それではこちらへ。 車を用意しております」
「あ、はい」
真帆呂はハンター協会の者達二人の後ろを付いて行く。
俺はその後姿を見つめる。
すると突然真帆呂がこちらへ振り向く。
「写狩またね!」
満面の笑みを俺に見せ、真帆呂は消えていく。
「写狩……さんと言うんですね」
あれ?
この人まだいたのかよ。
先程の女性職員がまだいた。
俺が驚いていると俺をジッと見つめる。
あぁ……俺の返事を待っているのか。
「あ、はい……万矢 写狩といいます」
俺がそう言うと、笑顔を見せる。
先程までの威圧感のある態度はどこかへ消えていた。
「やっぱり」
「えっ?」
「いえ、良いお名前ですね」
「え、あ、ありがとうございます」
「私は九条 折架といいます。 もし何かありましたらこちらまでご連絡をください」
そう言うと、九条さんと名乗る人は、名刺を俺に渡してきた。
「え、何で俺に?」
「う~ん……強いて言えば、あなたは私の事を知らないかもしれませんが、私はあなたの事を知っているからです」
「えっ⁈」
俺が驚くと悪戯っぽく笑みを浮かべ、消えていく九条さん。
「俺の事を知っている……」
その言葉が俺の頭から離れずにいた。
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