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第五話 陰謀とさらなる異形

16:39


(( そんな・・・ ))


 風間たちが連れてこられたのが霊安室だったことと、成田の顔にかけられた

白い布が、彼の状況を物語っている。


「 残念ですが、運ばれてきたときにはもう・・・ 」


 医院長は伏目がちにそう答えた。そして、徐に風間に近づくと小声で耳打

ちをしてきた。


「 内密にお話が・・・ 」


 風間はコクリと頷くと、連れてきていた部下に指示を出す。部下が部屋を

出るのと同時に、医院長の方に振り返る。


「 で?話とは? 」


「 はい、先ほど警察から連絡がありまして、事故の際の車のブレーキ痕がな

 かったと・・・ 」


 驚きを隠せない風間は医院長に食い気味に迫る。


「 ブレーキ痕がない?つまりそれは、故意の可能性があると? 」


「 わ・わたしに聞かれても・・・話しが聞きたいから連絡が欲しいと 」


(( 故意?狙われた?隠蔽?つまり情報が表に出ては困る人間・・・ ))


 風間は後のことを部下に任せると病院を後にする。表に出るとすぐさま携

帯を取り出し連絡し始めた。先ほど連絡した【 黄 】という人物だ。


 「 風間です。たびたび申し訳ありません・・・ 」


 話し出した風間の声が遠のき、視界が暗くなる。


(( まったく、いつも中途半端で、なんなんだよいったい ))



16:11

牡丹身体医学研究所


「 例の情報はしっかり新聞社の人間に流したんだろうな 」


 メガネの端をクイッとあげながら【 智光ちこう 秀明ひであき 】所長が

問う。


「 はい、まさか彼も自分がこの件に巻き込まれるとは思ってもいないでしょう。

 新聞社のやつらも大臣の件がTVにしか情報がいってないもんだから、いい

 感じに食いついてきましたよ。後始末も手配しておきました 」


 副所長の【 上吉野かみよしの 良介りょうすけ 】が、口元をニヤリとさ

せながら答えた。


「 吉豊大臣には悪いと思ったんだがな。まぁ、彼も霞が関では目上のたんこ

 ぶだという話だしね。そしてこれで青木ヶ原くんも・・・ 人望もあって有能だ

 っただけに残念だよ。FUJI製薬の社長も自分の座を奪われかねないと危

 機感を感じるくらいにね。そうなる前に手を打っておきたいというわけだ。

 そうして、これで私も晴れてFUJI製薬の副社長だ 」


 所長はそう言って、大声で笑った。


「 しかし、所長、あのサンプルをどこで手に入れられたんすか?見せられた時

 は、まさかこの世に存在すると思ってもみなかったんで、驚きましたよ! 」


「 君もこの地位までくればいずれわかるよ。それより、新たに別の・・・ 」


 そういいかけると、所長室の電話が鳴った。


「 わたしだ、おおそうか!間違いなく生きたまま捕獲してくれよ。大事なサン

 プルだ。頼んだぞ 」


「 どういうことですか? 」


「 楽しみにしてくれ、前回より驚く君の顔が見ものだよ 」


 そう言って笑った智光の顔はなんとも不気味だった。



 18:45


 再びこの暗い空間に戻った俺は、頭がパンク状態だった。


(( 情報が断片的すぎて整理がつかねぇ。ただ、すべてが繋がっているのは

  間違いないんだが・・・ ))


   【 誰を選択しますか? 】


          【 桐蔵 斉隠 】


          【 半部 覆蔵 】


          【 風間 幸士郎 】


          【 佐川 鈴女 】


(( 選択肢に鈴女の名前が増えている。ん?そうか時間!この空間にも時

  間が表示されている。18:45たしか、斉がバンから飛び降りたのがそのく

  らいだったはず。鈴女を選択すればそこに飛べるのか?いや、考えていて

  もしょうがない! ))


 鈴女を選択すると、再び光に包み込まれた。



 18:45


 身を隠そうと公園に入った三人。その姿で予想が的中したことがわかる。


(( よし!思った通りだ! )) 


 抱きかかえている鈴女が頭を押さえているのに気づく斉。


「 怪我したのか? 」


「 大丈夫よ 」


 三人が噴水のある中央広場にたどり着く。気がつけば銃弾は公園に入っ

たあたりから止んでいた。

 

(( 静か過ぎる・・・雨や時間的なことを考えればそうかもしれないが、周りか

  らは車の走る音さえも聞こえない。ましてや、あんな銃撃の後だぞ?騒ぎ

  や警察沙汰もんだろ ))


 そう思いながら見わたす俺の目に不気味な光が目に入った。それは、赤い

二つの眼?それが、斉たちを包囲するように囲んでいた。


(( まさか、ここまで待ち伏せされていた!? ))


 それが、街灯の光の元に現れた時、獣のような鳴き声が響く。


     ”  グ オ ォ ォ ォ  ”


 あらわになった姿は、プロレスラーをもひとひねりしそうなほどの体躯とかすか

に見えた頭の上の突起物だった。


(( 鬼!? ))


 周りを囲んでいた10体はいるであろう鬼が、一斉に斉たちに向かってくる。


「 さすがにこの数を相手にするのは・・・一点突破か! 」


 斉は俺と鈴女を庇いながらも、一体の鬼に向かって体当りをした。しかし、

銃弾をはじき返すほどの強靭なはずの竜人化した斉の体当たりを、たった

一体の鬼は受け止めてしまう。


「 クソッ 」


 思った以上の力。二人を抱えているために力を出し切れなかった様子の

斉。そして気づけは、別の鬼がすぐ後ろに近づいてきて、強烈な一発を後頭

部に浴びせた。


「 グッ 」


 その衝撃に力を失った斉は、俺と鈴女を手放してしまう。それぞれは、別の

鬼に抱えられ、斉は3体の鬼に押さえつけられている。


 そして俺の視界が暗くなっていった。


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