第一話 タイムリープは突然に
18:05
意識が戻るとそこは真っ暗だった。
(( これが“ 死 “なのか? ))
にしては恐怖感は感じられない。体がないのか、なにか、ふわふわしたそんな
感覚。そして真っ暗で何も見えない。
(( いや、遠くに小さな光? ))
するとその光は、徐々にはっきりと見えてくる。
しばらくその光を見つめていると、今度は、左上に何かが点滅し始める。
(( PCのカーソル? ))
数回点滅すると文字が書かれ始める。
【 誰を選択しますか? 】
そう表示されるとカーソルは改行され、再び文字を書き始める
【 桐蔵 斉隠 】
斉隠?桐蔵 斉なら知ってる。俺の学校の数少ない友人だ。
(( 斉隠って誰だ? 斉の親族か? ))
しかし、選択肢はほかに出ないようだ。
(( 誰を?って聞きながら選択肢はないんかい! ))
おもわず、つっこんでしまう。
(( さて、選択するにしてもどうすればいいのか? 何か他には? ))
と視線を動かすと、桐蔵の名前がかすかに明るくなった。
(( 見続ければいいのか? ))
すると名前が大きく点滅しはじめ、光の方へ吸い込まれる感覚。
(( うぉっ! ))
光はだんだん大きくなり、あまりの光のまぶしさに目を閉じた。
17:58
無いはずの体がなにかを感じ始める。さらに、行きかう車の音、湿気た匂い。
真っ暗な時に感じなかった、いつもの感覚。ゆっくりと目を開けると、そこは家
から数メートルの交差点近く。が、視線が異様に高い。と足元を見ると1・2m
程浮いているではないか。しかも、うっすらと自分の体が見えるのがわかった。
(( 俺、幽霊になったのか?やっぱ、死んだのか? ))
そう思いながらも、よく見ると足先から細い糸状のものが伸びていて、足元に
いた男性の頭につながっていた。
「 イ・タ・タ・タ・タ 」
頭を抱えてうずくまる男性に見覚えがある。
(( 斉 ? ))
そう、先ほど選択しろと言いながらも、1つしかない選択肢を半ば強制的に選
択させられた【 桐蔵 斉 】だ。
(( 斉隠の選択をして、斉のところに来たということは、同一人物?
どういうことだ? ))
(( 「 おい!斉!大丈夫か!? 」 ))
自分なりに声を出してみたんだが、予想通り声にはならない
(( なんか繋がってるみたいだけど、伝わんないのか? ))
すると、突然目の前にカーソルが現れ、文字を書き出す。
【 どちらを選びますか? 】
【 1,助ける 】
【 2,助けない 】
10・・・9・・・
(( 今度は選択肢が出たのはいいけど、って誰をだよ! ))
8・・・7・・・
(( これはカウントか?10秒以内に決めろってか!? ))
6・・・5・・・
(( 決められなかったら、どうすんだよ! ))
4・・・3・・・
(( た・助けるに決まってるだろ! ))
そう思い”1”を見つめる
2・・・1・・・
”1”が一瞬光ると文字はゆっくりと消えていった。
(( 間に合ったか?にしても、なんの説明もなしかよ! ))
すると、先ほどまでうずくまっていた斉が、頭を振りながらゆっくりと立ち上がる。
「 なんだったんだ、今の頭の痛みは!
やっば、18時過ぎちゃったじゃん、不久良のやつバイトあがっちゃったか 」
ポツリ ポツリ ザァー
「 まじか!最悪じゃん 」
突然の雨にそう言って交差点に駆け出した。
すると、まるで子供がタコを挙げているかのように、斉に引っ張られる俺。
(( まてよ? ))
(( 18時過ぎ・・・ ))
(( 俺のバイト終わり・・・ ))
(( 突然の土砂降り・・・ ))
(( 大通りの交差点・・・ ))
(( まさか! ))
「 あれ? 不久良じゃん? お~い、不久良~ 」
しかし、斉の声は車と土砂降りの音に阻まれ、大通りの向かいにいる俺には、
届かなかったようだ。
そして目の前では、俺が少女を助けるシーンが再生されていた。
((やっぱり!))
((でも、助けるって?))
「 バカヤロ! 」
その声に目を向けると、斉の体が突如光りだし、その光は瞬く間に車にぶつか
る寸前の俺の元へと飛んでいた。
(( うおぉぉぉぉぉ~ ))
俺は、そのものすごいスピードの光に引っ張られる。
” ド ン ”
大きな衝撃音とともに光からはじき出されたのは、RPGでいう、そう!
(( リザードマン!? ))