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第九話 究極の選択②

 19:00


「 なんだと!一体それはどういうことだね! 」


 牡丹身体医学研究所の所長室で智光の大声が響き渡る。先ほどまで、

これから起きることが楽しみだと言わんばかりの笑みを浮かべていたはずが、

電話を切った途端一変して険しい表情になっていた。


「 まずいぞ、まずいぞ、このことが法師様にでも知られれば、FUJI製薬の副

 社長の座どころか、人生まで終わりだ 」


 所長のあまりの慌てぶりに上吉野も不安に掻き立てられる。


「 所長どうなさったのですか!?一体何が起きたというんです 」


「 き・きみはだまっててくれんかね!今、考えておるんだ! 」


 すると、どこからともなく携帯の音が鳴りだした。所長室のテーブルの上の電

話ではない。どうやら、引き出しの中から音が聞こえてくる。


「 ひぇ!法師様からだ!もう情報がいったというのか! 」


 十数秒の沈黙の後、意を決したのか智光は携帯を取り出し話始める。


「 これはこれは法師様。どうされたんですか、法師様から連絡とは! 」


 何事もなかったかのような対応に上吉野も飽きれた顔をした。


「 貴様、己の失敗をわしの前でとぼけるつもりじゃなかろうの? 」


「 いえいえ、とんでもございません。たしかに、重要な検体を取り逃がしたこと

 は、わたくしめの失態ではございますが、見張りの者の情報から、現場には

 龍の一族のみならず、五つの角を持った鬼も現れたとのこと、さらには、法

 師様ならご存じかと思いますが。黄一族の者もいたとのこと。今それを追わ

 せておりますゆえ、上手くいけばそれらを一網打尽にできるかと! 」


「 ふん、まあよい、今回のことは目をつぶってやる。しかし、次はないぞ 」


 携帯を持ちながら、頭を何度も下げる智光に上吉野も法師様という存在

がどんな人物なのか想像もつかなかった。


「 上吉野!部隊に連絡だ!フル装備で出撃準備と伝えろ! 」


 所長室に響く智光の声は、これまでに聞いたことのないほどに鬼気迫るも

のだった。



 18:46


(( くそっ!くそっ!おふくろが! ))


 感情が高ぶる俺をしり目に無情にもこの空間は漆黒と静寂に包まれ、何

事もなかったかのように、いつもの文字が羅列されていた。


   【 誰を選択しますか? 】


          【 桐蔵 斉隠 】


          【 半部 覆蔵 】


          【 風間 幸士郎 】


          【 佐川 鈴女 】   【 佐川 龍之助 】


(( 待て待て待て、落ち着け俺!今回は選択肢が事前にあったんだ、間違

  っただけだ!そうだそうだ!もう一つを選べばいいんだ! ))


 もはや、それ以外を考える余裕はなかった。そして再び親父の名前を見つ

めた。



 18:46


「 わかった!あんた行くわよ! 」


「 あ、ああ 」


 目を開けると出口に向かう親父とおふくろがいた。先程と同じ光景だ。


(( よしっ!戻ったぞ! ))


   【 どちらを選びますか? 】


          【 1,戦う 】


          【 2,従う 】


                        10・・・9・・・


(( ” 1 ”だ! ))


 そう思い” ”を見つめる


                         2・・・1・・・ 


「 不久良か?どこにいる? 」


(( 親父!敵の待ち伏せだ!おふくろを外に出すな! ))


「 なんだと!おい、かあちゃん、外は敵がいて危ないから出るなって不久良が

 ! 」


「 やめてよね、あんたついに頭がどうかしちゃった・・・ 」


 唐突に黙ったおふくろは、静かにというふうに口に指をあてる。戻って来ると

親父に近づきつぶやいた。


「 気づかなかったわ、人と獣の混ざった匂いが入口から流れてくる 」


(( そいつは、たぶん鬼の匂いだ!イルシオに聞いてくれこの洞窟に他の出口

  はないかと! ))


「 不久良がその匂いは鬼だ言ってるぞ!おい、イルシオさん!この洞窟に他

 の出口はあるかい 」


「「 ごめんなさい、他に出口はありません。なぜですか? 」」


「 外に鬼が待ち伏せしてるってよ。不久良どうするよ! 」


「「 そんな、ここへは龍の一族の者がいないとたどり着けないはず・・・ 」」


(( くそっ!選択肢は従うか、戦うしかなかったんだ!鬼と戦うしかないっての

  かよ! ))


「 あんた、さっきから不久良ってどこに向かって話してんのよ! 」


「 なんか、頭ん中でしゃべってんだよ、選択がどうとか、従うか戦うか?鬼だか

 なんだか知らねぇけどよ、俺が竜人に・・・あ!えっと不久良な・・・ 」


(( 大丈夫だ、親父も俺も龍の一族、竜人になれることも知ってるし、元の

  体も血清丸飲んだから継承は済んだ!それより外の鬼の力は竜人と変

  わんない、 数体に取り押さえられるのが目に見えて・・・ ))


     “  ド  ー  ン  “


 大きな音とともに、地響きがし、頭上からパラパラと小石が落ちてくる。音は

二度三度続くと、洞窟は崩れだし、巨大な岩盤が親父とおふくろの真上か

ら落ちてくる、同時に俺の視界も暗闇に落ちた。



 17:00


(( どういうことだっ!どちらを選んでも助からないってのか!考えろ考えろ!

  なにか他に方法は!勝手に正解があると決めていた? ))


 まさかこんな結末が待っていようとは。選択肢には意味があるそう思ってい

た。いや、なければ出る意味がない。ただ、この結果に意味はあるのか。俺

の思考は、完全に混乱していた。



   【 誰を選択しますか? 】


          【 桐蔵 斉隠 】


          【 風間 幸士郎 】


          【 佐川 鈴女 】   【 佐川 龍之助 】


(( 親父の名前が消えている!?もう結末を変えることができないってことか

  よ!待てよ!?親父と会話できたんだ、これから行く先の人物ともできる

  んじゃないか?あ、時間!17:00あの出来事の前だ!間に合う!この

  時間は、風間の親父さんのとこか?連絡してもらえば何か対策が・・・ ))


 一縷の望みをかけ、風間の親父さんを選択し光に包まれた。

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