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「一条さん、この子は吾峠結花でゆかぴぃ。 それでこっちが東谷真美でマミちんだよ」

「ゆかぴぃでいいでーす」

「うちもマミちんでよろしく〜」



そんなノリで呼べるか! ええと一番派手で毛先がピンクなのが吾峠でタメ口しやがる色黒なのが東谷か。 



「まぁいいや、俺は一条……」

「あはは、もうのんのんから話聞いてるから知ってまーす、いっちー」

「いっちー……」

「一条だからいっちーでいいでしょ?」



すげぇ軽いノリだなこの2人、正直ついていけない。 



「一条さん、まぁそのうち慣れますよ」

「そぉそお! のんのんも最初はガチな真面目ちゃんだったんだけど今ではすっかり砕けたからさ」

「だよねだよねッ!」

「ちょ、ちょっとぉー! 余計なことはいいから」

「真面目ちゃん? 姫乃が??」



姫乃の見た目もどっちかと言えば派手な方でこのノリといい友達の2人もそうだけど…… ははーん、さては姫乃は高校デビューした口か。



「なんですか一条さん?」

「いいや別に」

「別にじゃありません! その小馬鹿にした顔はなんですか!?」

「あらら〜、お仲がよろしいようで」



それから夕飯を一緒にどこかで食べて帰ろうと提案されたが女子高生3人と俺とじゃどう考えてもおかしいので俺は帰ることにした。



そうすると姫乃も一緒に帰るとなったので今は一緒に帰り道だ。



「いやー、女っけがなかった一条さんが一気に華やかになりましたねぇ」

「あのな、それはあっても構わないけどお前らみたいなガキンチョはごめんだ。 なんかあってみろ? 俺は一発でアウトだ」

「あはは、一発だけにですか?」

「例えが下品だなお前」



家に着くと疲れて欠伸が出た。



「あ、夕飯用意しなきゃ」

「今日はカップラーメンでいいよ」

「だったらみんなで夕飯食べて来た方が良かったじゃないですか」

「あの空間に俺居るなんて場違いだろ。 話もついていけないし」

「そんなの気にしなくてもいいんですけどねぇ」



テーブルにお湯を注いだカップラーメンが置かれてボーッと眺めていた。 



こんな生活いつまで続くんだろうなぁ? 俺の貯金だってそんなにあるわけないし。 そもそもなんでこいつに金掛けてんだ? 退屈しないからか? 確かに姫乃が来てから色のなかったような生活が変わった気がするけどずっとこのままなんて行くわけないのになぁ。



そもそもこいつが親にあれこれ聞かれて言わないにしてもヘマして俺のことを探られたりでもしたら感謝されるどころか警察沙汰になりそうなのに。



ああでもここまで姫乃に関心もないならフラッと帰った姫乃にも無関心かもしれないな、そこまで深刻に考えなくてもいいか? てか育児放棄も甚だしい、よし俺はそれに比べれば悪くないな。



「麺伸びちゃいますよ、いつまで待ってるんですか?」

「え? そうだった」

「もしかして今日会った2人に気になる子でも居ました?」

「んなわけないだろ」

「ですよねぇ〜、2人とも可愛いけど一条さんのタイプはあたしですもんね」

「相変わらず大した自信だな、もしお前より年上で俺のタイプな女が来たらどうするんだ?」



そう言うと姫乃は目を丸くして首を傾げた。



「一条さんそんなに自分がモテると思ってるんですか? なんだか聞いてて可哀想になってきました」

「う、うるさいな! お前が自画自賛するからだろ」



姫乃は少し考えるように視線をテーブルに置いていたカップ麺に落とした。



「でもそうか。 そしたらあたし邪魔者になっちゃう」



キュッと手を握って絞り出すように言う。 いつものふざけた口調ではないので調子が狂う。



「まぁそもそもそんな人は一条さんを選ばないし、あたしみたいなダメ人間くらいだよ」



姫乃は少し沈んだように見えてたけどニコッと笑って付け加えるように言った。



「それもそうかもな」

「あー! ダメ人間ってのは訂正してくれないんですか!?」

「お前がいろいろと俺をバカにするからだ」

「もぉー、バカになんかしてませんって」



そして姫乃が来てから3ヶ月が過ぎた日曜日のことだった。



「一条さん一条さん! 今日はなんの日かわかりますか?」

「やけにうるさいな今日は」

「うるさいとか酷いです! それでなんの日かわかりますか?」

「10月15日ってなんかの日だっけ?」

「鈍い、鈍すぎる…… 今日はあたしの誕生日なんです!」

「あそ、ふぅん。 あ、おめでとう」



言うと姫乃がヘラを持ってきて俺の頭を無表情で叩こうとした。



「いやなんだよ!? ああ、言い方か、誕生日おめでとう!」

「凄く取って付けた感がありますがまぁ良しとしましょう、ありがとうございます」



そして俺の前に手を差し出すが。



なんだこれ? まさかプレゼント渡せとか? ここまでお世話になってんのに図々しいことこの上ないぞ!



「ん〜んッ!」

「いやわからん」

「16歳の誕生日なあたしに何かありませんか?」

「やっぱプレゼント目的かよ、はぁ〜」



可愛いってのは得だよな、言われて何焦ってんだよ俺……



いきなり言われても渡せるものなんてないし。 あ! そうだ、いいものあった。



「じゃあこれ」

「え? これ??」



俺が姫乃に渡したのは自分が使っていたスマホだった。 あれ以来姫乃は自分のスマホも取りに行ってないし別にそんなに必要ないのかもしれないけどよく俺のは借りて使ってたみたいだし。



「いいんですか? 一条さんが使うのは……」

「まぁ無駄だけどもう一回買えば済むことだし」

「ふふッ、やったぁ! 超嬉しいです」

「自分が使ってたやつじゃないのに?」

「だってこれなら余計な電話も掛かって来なそうですし」

「そっちかよ。 まぁそれで満足ならいいけどさ」



新しいスマホ買い直したら新しい番号とかなんとか考えていたら俺の顔の前にいきなり姫乃の顔がドアップで近付いたので避けた。



「なんだ!?」

「一応お礼としてキスくらいはしといた方がいいのかなと思いまして」

「はあ? なんだって?!」

「そんなにドン引きするなんて予想外でしたけどー!!」

「ドン引きっていうより姫乃が悪いんだろッ!」



不意に何かしようとしてくるから……




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