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姫乃は制服を取ってきた次の日から学校に行き始めた。 どうやら俺のアパートから行くのと自分の家から行くのにあまり時間差はないらしい。 だがひとつ問題があったのは……



「なんでお前まで一緒について来てるんだ?」

「ここからだとこれが通学路ですし」

「じゃあ時間ズラすか一個違う電車にしろよ」

「する必要がありません」

「お前なぁ……」

「いいじゃないですか、そんなに意識しなくても。 あたし的に一条さんは空気を纏っているのと同じようなものですし。 一条さんがそんなにあたしを気にしてるのはあたしが好みのタイプだからもしかしてあたしのこと好きなんじゃないですかぁ〜?」



姫乃はニヤリと意地悪く笑って俺に言ってきた。



この野郎、大人を揶揄いやがって。 でもそうか、言われてみれば姫乃は確かに何も気に素振りはないし俺も何も気にしなければ周りからはなんとも思われないかもしれない。



こうやって2人並んでなければだが。



「おや、どこ行くんです?」

「お前に言われてみれば確かにその通りだなって思ったからさ、それに少し離れてれば更になんとも思われないと俺は思っただけだ」

「ほへー、まぁそれならそれでいいですけどねぇー」





それから電車に乗ったが姫乃は俺の向かいの席の少し離れたとこで腰を下ろして自分の足を見て爪先の上に踵を乗せたり脚を組み替えたりしていた。 



携帯を忘れたから手持ち無沙汰なんだろうけど家では俺の携帯を弄ってたりしてたしな。



そんな様子を見てると姫乃と目が合いニコッと笑い掛けられたそんな時……




「のんのん! なんでこの電車に乗ってるの?! てか学校なんで来なかったのよぉー?! 連絡しても音信不通だし」



のんのん…… 姫乃のことか? てか友達か? 



「やーん、ゆゆおひさー! ちょっと色々あってさぁ」



やっぱり友達か、制服同じみたいだし。 よく見れば姫乃の制服見覚えあるのは今姫乃が話し掛けてる女の子ってたまに電車で見掛けたことあったな。



「まぁいいわ、学校で話聞かせてよ。 あっちの車両行かない? マミちんも居るしさぁ」

「ううん、あたしここでいいよ。 ゆゆこそあたしがここに居るってよくわかったねぇ」

「そりゃホームであんたっぽいの見掛けたからもしかしてって思ったらやっぱのんのんじゃーんって思ってさ」



うげッ、やっぱちょっと離れてて良かったわ。 姫乃と普通に話してたらなんだこいつ?って思われるかもしれないしな。



てか友達いるとこ行けよな姫乃も……



そして姫乃のもとにマミちんとやらも来て3人でワイワイ話していた。 



そっか、こいつにもちゃんと友達は居たんだな。



俺は携帯を取り出して適当に画面を見ているうちに降りる駅になったので降りた時にそれは起こった。



「あッ! 一条さんバイバイ」

「え?」




電車のドアがプシューッと閉まると満面の笑みで俺に手を振る姫乃と怪訝な目でそれを見る姫乃の友達2人の姿が俺の目に入る。



何やってんのお前?



俺は過ぎゆく電車を愕然と見送った。 




その日の会社帰り……




駅のホームで電車を待っているとスッと俺の前に人影が立ちはだかった。 朝の会話からしてなんか嫌な予感はあったんだ。 



「ちょちょちょッ! これがのんのんの同居人!?」

「うそー?! ちょっといいですかぁ?」

「2人ともやめなって、一条さん照れてるし」

「いや照れてないし」




JKから囲まれる…… そりゃそういうのに敏感な年頃だってのはわかるけどそれほど明るい事情でもないし。



「一条さんにしつもーん! もうのんのんとはヤッちゃいました?」

「何聞いてくれてんだマミちん!」



いきなりその手の話題とは。 



「でもでも一条さんってのんのんが前に言ってた好きな人のタイプと違くない? 超絶イケメンが好きって言ってたじゃん」

「だからそういうのじゃないっていうか…… それはいいでしょー!」



ははは、別に俺の好みのタイプが姫乃だからってこいつのタイプが俺じゃないってのは承知の上さ。 いい歳こいて真に受けちゃダメだ。



俺は疲れてたし一旦この3人から距離を取ろうと自動販売機に向かうと姫乃が追いかけて来た。



「ごめんね一条さん、あの2人どうしても一条さんを見たいってここで待ってようって聞かなくて」

「そりゃお前が去り際にあんなこと言うから」

「だってあれはせっかく一緒に来たのに何も言わないで行くのはなんだかなぁと思ってつい」

「そうか」

「怒ってる?」

「怒ってない」

「怒ってるよ、なんで? あたしが勝手なことしたから?? だったらごめん謝るから」



怒ってないけどいきなりわちゃわちゃ質問されそうだったから落ち着きたいし離れただけなんだけど姫乃は酷くそんな俺の様子を心配してるみたいだ。



「ねえ、ごめんったら一条さん」

「それで?」

「え?」

「あの2人に話したの? 俺の家に住んでるとか今までの経緯とか」

「あ、うん。 で、でもでも! 2人とも誰にも言わないって約束してくれたよ? 2人はあんな感じだけどそういうことはちゃんと守ってくれるから」



俺が怒っていると思っている姫乃は俺を伺うように覗き込んで言った。



「そっか、まぁ姫乃がそう言うならそうなんだろうけど俺は別に怒ってないよ。 ただ単に仕事帰りで頭がボーッとしてたとこにいきなりだったからってだけ」

「ほんと?」

「ほんと」

「ああ、なんだ良かったぁ。 あ、じゃああたし2人のとこに戻ってるんで落ち着いたら一条さんも来て下さい、少しお話したいって言ってたから」



ホッとした顔をして姫乃は戻っていった。 



少しお話とか言ってたけど根掘り葉掘り聞かれるんだろうな。




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