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今日は姫乃が酷く憂鬱そうな顔をしていた。 



「…… 」

「何か悩み事か?」

「悩みは尽きませんが」



勝手に家を出て来て強引に俺の家に住み込んだ厚顔無恥なこいつにも尽きない悩みとは?



「話したくないなら別にいいけど」

「いいんですか!?」

「聞いたら面倒そうだし」

「なんなんですかそれ! 悩み事か? なんて聞いてきたくせに。 そりゃあ一条さんに話したって……」



それは思わせぶりにしてるから悪いんだろ。 



「じゃあ一条さんになんて話しません」

「うんいいよ」



そんな俺の態度にポカンと姫乃はしていて俺は仕事に行くから準備し始めると何やら不機嫌になってきたようで俺にドンと肩をぶつけた。



そんなのには構わずに更に無視を続けていると……



「一条さん!」



俺の目の前に姫乃が来て洗濯して乾いた服を部屋に持っていこうとしたらそれを踏みつけられた。 



「足退けてくんないか?」

「イヤ! あたし怒ってるの!!」



あからさまに怒ったような表情で俺を見下ろしている。 



「悩みを聞いてくれないから?」

「それもあるけど冷たいんだもん!」



ああ、ぶつかってきた時もスルーしたからな。



「じゃあどうすりゃいいんだよ?」

「あたしの悩みを聞いて欲しいの!」

「だったら最初からそうすりゃいいのに」

「それは一条さんが冷たくあしらうから悪いんでしょ!」

「まぁいいよ聞くから。 仕事あるから手短に」

「ほら冷たい!」

「わかったわかった、聞かせてくれよ」

「実は……」



姫乃の悩みはそれは下らない悩みだしバカみたいだなぁと思うようなことだった。 そろそろ学校行かないとヤバいらしい。 



それはそうだ、あっちではどうしてるかわかんないけど無断欠席だもんな。 単位とかいろいろあるだろうし。



「それで制服もお家だし取りに行かないとなぁと思いまして」

「取ってくりゃいいじゃん?」

「イヤだ! 帰りたくありません!」

「じゃあ高校は退学ってことでいいのか? 中卒じゃ今の世の中苦労するぞ〜、定時制っていう手もあるけどさ」

「そんなのお母さんがやってくれるわけないもん」



他人の家庭に口出すつもりないけどお前どんだけ親に嫌われてんだよ…… と言いたかっけど更に怒りそうなのでやめた。



「じゃあどうしようもないじゃん。 確かに俺に言ってもだったな」

「それでですね…… お願いがありまして」



嫌な予感……



「退学はあたしも出来れば回避したいので制服とかは取りに行くしかないです、だから一条さんも今からついてきてもらえます?」



予想通り。 こいつは自己中なんだろうか? 俺も今から仕事があるのに。 ああ、でもガキは自分中心で世の中回ってると思い込んでるのかな年頃的に。



「俺は仕事あるんだけど?」

「わかってます」



わかってるなら言うなよ。



「でもひとりじゃ帰りたくありません」

「姫乃の母さんだって仕事くらいしてるだろ? だったら居ないと思うしそのスキに取ってくればいいだけだろ」

「そりゃそうですけど。 不安なんです、動悸がしてきそうなんです、わかって下さい!」



まったくもって自分勝手な奴だよなぁ。 俺の好みのタイプじゃなかったら断ってたところだ。



「はあ〜、ほんと仕方ない奴だな」

「えッ!? いいんですか?」



俺が行ってやるかみたいに答えると姫乃が俺の肩を両手で掴んでパアアッと明るい顔になった。



ち、近い…… 思わずこっちも触りたくなってくる。



「仕事はいつもバカみたいに行ってるしたまに風邪だって嘘ついて休んでも罰は当たんないだろ」

「そうですそうです! 一条さんに罰が当たったらあたしが許しません」

「調子いい奴」




ということで姫乃と一緒に家を出てこいつの家に向かっているけど15歳とはいえ高校生の隣りを歩くなんて。 周りには変に見られてないよな? と若干俺は不安だ。



「一条さんなんかソワソワしてますよ」

「そうか?」

「あッ、もしかしてもしかして! 近所をあたしと一緒に真っ昼間から歩いて緊張してるとか? あたしってそれなりに可愛いからなぁ〜、えへへへ」

「バカかお前は。 未成年のそれも女連れて歩くなんて慣れてないだけだ」

「車の中とは違いますしねぇ。 でも変に意識しないで下さいね? 余計に変ですから」

「うるさいな」



それにしても姫乃の家はどこだよ? 結構歩いてるのにまだ着かないのか、結構遠いとこから来たのかな?



「あそこです」



そうして1時間ほどだったろうか。 ようやく姫乃の家に着いたみたいだ。 



普通の一軒家…… もしや大金持ちの子かと考えたこともあったがそうでもないみたいだ。



「着いたなら行けば?」

「わかってるよ! でも帰ってなかったしイヤだなぁ」



俺は家の前をうろちょろしているわけにも行かないので適当な離れた場所で待機する。 



15分くらい待ってると姫乃が何故か学校の制服に着替えて戻ってきた。 



「大丈夫だったのか?」

「はい、お母さん居ませんでした。 家出る時鍵を持って出て良かったなぁ〜って…… もっと他に言うことありませんか?」

「え? 制服のこと?」

「はい! どうですか? 生JKですよ」

「なんで制服に着替えた?」

「一条さんこっちのが好きだったりしてと思いまして。 ついてきてくれたお礼です」



姫乃はえへへと笑っているがこれじゃあ女子高生連れてるって思いっきりわかるじゃねーか! でもこの制服は見覚えあるなぁ。



「なんか反応薄いですね〜、可愛いって評判の西高の制服ですよ、知らないんですか?」

「いや知らないし」



もともと俺の地元じゃないしここ。



「ええ〜! 知らないんですかまったく!」

「いいから帰ろう、その格好で俺とウロウロすると俺が怪しい奴みたいに見られる」

「はぁーい、じゃあ帰りましょう。 あ、カフェとか寄っていかないですか?」

「話聞いてたか?」



だが家に着いた時姫乃は「ああッ!!」と言って頭を抱えた。



「ビックリした。 なんなんだ?」

「スマホ持ってくるの忘れてました…… なんたる不覚」

「バカだろお前……」



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