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「おはよぉござぁー、ふぁあ」

「なんだよ眠そうだな」

「まさか一条さんに遅れを取るとは不覚です」



姫乃が来てから1週間、規則正しい生活を強制してくるがお前こそ学校行けよと。



「お休みの日なのになんでこんなに早く起きてるんですか?」



実は夜中に映画を観てたらこの時間になっただけで寝てないだけだけどな。 俺が姫乃の言葉をスルーしていると姫乃はハッとした顔になった。



「ま、まさか一条さん…… そうですよね、あたしもうちょっと気を遣うべきでした」

「は? なんのこと?」

「そんなこと言わせるんですか?」



んん? ちょっと待てよ、まさかこいつ俺がお前に隠れてそんなことしてると思ってるのか!?



「お前勘違いしてるぞ、俺はただ映画観てたから寝てないだけだ」

「え? ならあたしに隠れていかがわしいことしてたんじゃないんだ?」

「するかよ!」

「むふふ、そういうことにしておきます」

「なんだよそれまったく。 てかどこで覚えたそんなこと」

「あたしくらいの歳になればそのくらいわかりますよぉー!」



いやー、それにしてもいくら15歳とはいえ女子と暮らしているのに堪えられる俺ってなかなか偉いわと自画自賛してる。



「する時はちゃんとあたしに言って下さいね」

「お前に言う必要ある?」

「ありますよー、不意にその場面に遭遇しちゃうかもしれないですし。 失礼のないようその時はお買い物でもしてますから」

「十分失礼だぞお前」



姫乃は「お世話になってる以上別にあたしを使っても構わないんですけどねぇ」と言って朝ごはんを作り始めた。 そんなにあっさり言われると半ば使命感みたいになって禁欲してる俺の努力はなんなんだ? と思ってくる。



でも俺ってそんなの我慢するような奴でもなかったのに不思議だな、姫乃の得体が知れないせいか? でもほんの少しだがこのつまんない生活に張りが出てきたのも事実だ。



「ふんふんふーん」



姫乃はいつものように気分良さそうに朝食を作ってる。 こいつは俺と一緒で満足してるのか? 学校にも行かない、家にも帰らないで大した神経だな。



「どぞー!」

「なんか凄いな」

「えへへ、失敗しちゃいました」



グチャッと卵が散乱したオムライス。 たまに姫乃は料理を失敗する、焦げてたり味が変だったりってのはこれまでにもあった。 まぁ15の頃なんてそんなもんだろう。



「食えなくもないけどな」

「そうそう、食べれるんだからマシです。 というよりあたしと居れば健康になれるかもですよ」

「明らかに健康に悪そうな味もあったのによく言うよな」

「うるさい! ところで今日はお休みなんですよね? 一条さんは何か予定とかあったりします?」

「休みの日は外に出たくないから家にひきこもるくらいかな」

「それ予定ないですよね?」



ないっちゃないが夜更かししたせいで今頃眠たくなってきたし。



「だったらどこか出掛けませんか?」

「誰と?」

「そりゃあたししか居ないですよねぇ?」



姫乃は少し意地悪そうな顔をして俺に言った。



こいつ見えすいた挑発しやがって。



「ええ……」



どっちにしても眠いから勘弁してもらいたい、つーかこんなガキにバカにされてるとは。 ひとりで行けよひとりで。



「いいじゃないですかぁー! 女っけない一条さんを誘ってあげてるんですよ」



ほれみろ、やっぱバカにしてんじゃねぇか。



「あのなぁ、別にそれほど飢えてるわけじゃないんだから誘わなくて結構。 女なんて作ろうと思えば作れるだろ」



なんてモテるやつみたいなセリフを言ってみた。 勘違いも甚だしいとか思うだろうか?



「うぐぐッ! わかった、わかりました! あたしと一緒にお出掛けして下さい」



少しむくれたと思ったら今度はお願いという感じに手を合わせて頼んできた。



「まったく。 どこ行きたいんだよ?」

「えーっと…… 一条さんにお任せします!」

「は? 行くあてもないのにどっか行きたいなんて言ってたのかよ」

「お洒落しますからぁーッ! ほらほらツインテール! あッ、そこまで髪長くないから出来ませんねぇ残念!」

「俺ツインテール好きなんて言ったか?」

「ああ、いえ、ロリコンはツインテール好きだと思ってるあたしの偏見です」

「ロリコンかよ俺は?!」

「あ、もしかして制服萌えですか? あちゃー、制服はお家だしなぁ」

「確かに制服とかは嫌いじゃないけどお前俺を変態ロリコン野郎と勘違いしてないか?」



実際ツインも悪くないけど…… って余計なことだなそれは。 なんかこいつにのせられてるような気がするなぁ。



「そうじゃないんですか? まぁその方が動かしやすいんですけど」

「お前性格悪いぞ」

「一条さんこそモテる人発言はよして下さいねー、一条さんみたいに自堕落な人モテませんよ〜。 ねぇ、ダメですか? こんなにお願いしてるのに」



はぁ、もういいや。 これってどっか行くまで続ける気だ。



「…… じゃあそこら辺ブラッとだぞ」

「あはッ! 話がわかるじゃないですか一条さん! 流石女なんて作ろうと思えば作れる人です」

「すげぇムカつくんだけど」



こうして姫乃に付き合うことになってしまった。


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