44
「起きてー! あゆ君!」
「あれ? 姫乃??」
「うん姫乃だよ」
朝から姫乃の元気な顔で目を覚ました。
そうか、戻ってきたんだった姫乃は。 居なくなってしまった時があるからこそこういうただ起こしに来るってこともなんだか特別なことに感じてしまう。
「ふへへッ」
「なんだよ? やけに上機嫌だな」
「だってあゆ君のお家に居るんだもん」
そんなことくらいわかってるけどとりあえず訊いてみたくなるくらい姫乃が笑顔だったので。
俺が起き上がろうとすると姫乃が俺の肩を掴んでそのまま制止して姫乃が一緒になって寝転ぶ。
「起こしに来たんじゃなかったのか?」
「まだ朝早いしあゆ君とゴロゴロしたい」
「そっか、じゃあそうしようか」
「うん」
俺と一緒に寝て姫乃は布団を被った、そして俺に抱き付いて肩の辺りに顔を埋めた。
「長い間あゆ君不足だったから超気持ちいい」
姫乃はそう言って腕を俺の背中に潜り込ませる。
あったかいな姫乃の腕。
そう思ってると頭まで布団を被せられて姫乃との顔の距離が一気に近くなる。
「いい匂いあゆ君って」
「自分じゃわかんないけど」
「1番落ち着く、今まで心細かったもん」
「なら良かった」
「ああ、ちょっと! そっち向かないでよあゆ君」
あまりに近かったので反対方向に顔を向けたら姫乃の身体が俺の上に乗り顔を戻された。 もういろんなところが当たっているけど相手は高校生のガキンチョだ、付き合っているからと言って歳上の俺がなんでこんなに恥ずかしがらなきゃいけないんだ?
「お前って結構スキンシップするよな前から」
「うん、だってあゆ君だし。 もしかして照れてる? 可愛い」
か、可愛いのか? そんなのが?
「わッ、汗かいてるよ」
「あ……」
しまった、つい。
姫乃は手の甲で俺の額の汗を拭った。 このままだと滝汗確実なので布団を捲ると姫乃も少し汗ばんでいた。
「お前も暑かったんじゃん」
「えへへ、そうみたい」
何やってんだかと起き上がり窓を開けて少し涼しい風を入れるのと自分の頭を冷やす。
朝っぱらから変にドキドキした。
「あゆ君、ねえ、あゆ君!」
「ん? 何??」
「朝ご飯何食べたい?」
姫乃が手を持ち上げてそう言ったので俺は何気なく姫乃の手を見ると姫乃が手首を切った傷が見えた、そうしたら姫乃が俺の視線に気付く。
「ああ…… えっとこれ見苦しかったね」
「あ、いやそんなつもりじゃ」
姫乃は適当に買ってきたシュシュを手首に付けて傷跡を隠した。
「これなら見えないよね!」
なんかそんなことしたってのにまるでなかったかのように姫乃は元気だなぁ。
「ん??」
「いやお前凄い明るいなって思ってさ」
「そう? だってあゆ君と一緒に戻れたし! それにやっとあゆ君あたしと本気で付き合ってくれるみたいだしね〜!」
そんなもんか? と思いつつようやくいろんなこと決着がついた気がする、角谷とか俺と姫乃の関係、姫乃も言ったように俺のとこに戻ってきたし。 白城とのことは思い出すと胸が締め付けられるそうだけどもう終わったこと、あっちももう連絡はしてこないしおれみたいなのとは会いたくないもんな。
「あゆ君、ところで時間大丈夫?」
「え?」
姫乃が時計を指差すと余裕があったはずの朝の時間がもうギリギリに。
「嘘だろ!? いつの間にこんな時間に…… って姫乃、お前もいつまでパジャマでいるんだ?」
「あ、ホントだ、あゆ君見てたら忘れてた」
もう朝食なんて食べてる暇がないのでそのまま着替えて家を出て電車に突っ込む。
「ふーッ、間に合った」
「ギリギリセーフだったね」
「いやお前がトイレ長いのと歯磨きも長くてマジで置いて行こうと思ったぞ」
「離れないって言った癖に嘘つき!」
「声がでかいってバカ!」
姫乃が言った瞬間に周りの目が俺と姫乃に集ったので俺は外の方に体を向けた。
「はぁ〜」
「あたし達恋人に見られてるかな?」
「だったらなんだよ?」
「あはぁ〜、嬉しいなぁって」
「イッチーおはよー」
「はよぉござぁ〜。 ふあー」
後ろから眠そうな吾峠と東谷がやってきた。
「おはよう2人とも」
「お、おお……」
姫乃は普通に言うがこの前こいつらに姫乃のことで迫られたのもあって少しゴモッてしまう。
「なんかイッチー硬いなぁ、せっかくのんのんが元気になったってのに」
「いやマミちんにビビッてんだと思うよ? 引っ叩かれたから」
「ん?」
「え?」
東谷が?となって姫乃もそれを聞いて東谷を見た。
「マ、マミちんあゆ君のことぶったの?」
「あ、あはは、ちょっとした弾みでね、軽くだよ軽く」
「あたしだってまだあゆ君のことぶったことないのに!」
「そっちかよ! でものんのん酷いことされたんだし往復ビンタくらいやっちゃってもイイんだよぉー?」
「往復ビンタ……」
そう東谷に言われると姫乃は俺の顔を見て次に自分の手のひらを見詰めた。
ま、まさかここでやる気か!? 確かにされても文句は言えないんだけど……
「やーめたッ!」
「え? いいの??」
姫乃はやめたと言ったのに吾峠が余計なことを訊く。
「だってあゆ君にずっとお世話になってたしこれからもそうだし…… ね? あゆ君」
「そ、そうだな」
そうしていつもの日常がまた戻ってきた。




