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姫乃が退院するまで少しあるけど俺は姫乃にああ言ったからにはちゃんと白城にも話をしなければならない。
でもここまで拗らさせたのは俺なんだがこういう話をするってのは気が重い、なんだかんだで白城を都合良く使っただけだ。
姫乃には白城とちゃんとけじめをつけてくると言っていたので会うのは了承済みなんだが。
「あ、一条君」
「ごめん、ちょっと待たせた」
「あはは、全然待ってないよ。 なんかソワソワしてるよ?」
「ああ、うん」
ソワソワせずにいられない、いつだ? いつ切り出したらいいんだ??
「?? まぁいっか」
車に乗った途端白城は俺の肩に頭を置いて手を握った。
「なんかねぇ、一条君に言いたくなかったことも言っちゃってそれでも一条君はあたしを受け入れてくれるんだなって思ったら余計好きになっちゃった」
……… これは大丈夫か俺? こんな白城に「俺は姫乃のことが好きだからごめん」なんて言えるのか??
言ったら言ったで俺は白城の中で大ホラ吹きな奴と思われてしまう、姫乃に似ているからもし泣いてでもしまったら姫乃を泣かしているようで俺にとってもくるものがある。
なんでだよ白城、俺お前ともう少し…… いやいや、変な考えはやめろ!
「一条君、君に偶然だけどあの時会えて本当良かった」
やめてくれ白城、どうせならこの浮気野郎とかクズ男とか罵ってくれ。 じゃないと言えない、言いたくないという思いが湧いてくる。
「今日はあたしのアパート行こう? なんか一条君とゆっくりしたいな」
「あ、ああ……」
白城のアパートに着くと特に何をするわけでもなくテレビを見て2人でボーッとしてたり夕飯になれば白城が作りそれを一緒に食べてたりしていた。
「白城、暇してないか?」
「え? なんで??」
昔の白城だったら…… 俺のイメージでは何か楽しいことしてないとつまんなそうにしている印象だったけど。
「ずっと部屋に居るだろ?」
「ううん、あたし一条君と居るだけで楽しい。 一条君が居ればどこだって楽しいって思えるの」
「そうか」
「一条君こそ今日ずっとソワソワしっぱなしだよ? 何かあるの〜?」
言えない、こんな雰囲気で言えるわけない。
「もしかして…… したいの?」
「え? したい?!」
「そう、エッチしたいのかなぁって。 いいよ、いつまでもこんなんじゃあたし的にも申し訳ないし一条君ならそのうち大丈夫になるかもしれないし」
ち、違う、そういう意味でソワソワしてたんじゃないしそれをやってしまったら姫乃に合わせる顔もない。
「そうじゃなくて…… あッ! トイレ」
「あ、一条君!」
はぁー、ダメだダメだ。 言わなきゃダメなのに言えない。
しばらくトイレに篭っているとドアがノックされた。
「一条君もしかしてお腹下しちゃった?」
「!? いやいやそんなことない今出るとこ」
「良かったぁー、夕飯で変な物でも入っちゃったかなぁって思っちゃうじゃん」
トイレから出ると白城は俺と腕を組んでソファに連れられた。
「はい座ろう」
「うん」
俺を触らせると白城は俺の正面に跨って座って顔と顔が合いジッと見つめる。
「なんかこうするとちょっと緊張しちゃうね」
「緊張? 白城が??」
「ふふッ、散々遊んでたのにおかしいよね」
フワッと白城の髪の毛が俺の頬をかすめる。
「こうしてくっ付いてるとさ、ホント安心する」
これ以上はいけない、言うしかない。 何かまた新たな間違いを増やす前に。
でも白城とのこと間違いだなんて思いたくない、俺はこうしてこんな白城と短い間とはいえ付き合うことにまでなって…… なのにそれが間違いか?
グルグルと思考していると頭の中に姫乃の顔が浮かんだ。 でもダメなんだ、姫乃と一緒にって誓ったからには。
「白城、話があるんだ」
「うん……」
「言いにくいことなんだけど」
「う…… ん」
「え? 白城?」
見ると白城はウトウトとして今にも寝そうになっていた。
「何?」
なんとなく話すタイミングではない気がする。
「なんでもない」
「そう…… ちょっとこのまま寝たい」
「ああ」
そうして結局この日は白城に言えずに終わってしまう。




