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俺に1人で行くように吾峠と東谷から言われて姫乃のが居る部屋へと向かう。 すると角谷が病室の椅子に座っていた。



憔悴しきった様子だったがこちらを見ると角谷は俺を睨み付ける。



「よく来れたもんだな」

「ああ、自分でもそう思う。 姫乃は?」

「中にいるよ、俺が何をどう言っても聞かないしムカつくけどこんなクソ男が良いみたいだ」

「姫乃の親は?」

「ついさっき来たよ、あいつ可哀想だぜ」



もうさっさと入れよという感じだったので俺は姫乃の病室に入る、個室のようだ。



ベッドのカーテンを捲ると姫乃は寝ていた、スヤスヤと寝息を立てて穏やかに眠る姫乃を見ていると自殺未遂なんてしたなんて信じられない。



リストカットしたんだよなと姫乃の手首を見ると左手に包帯が巻かれてある。 



不思議だ、姫乃と2人きりになるとここは病室なのに家に居るかのような気持ちになる。 姫乃が居なくなってからなんていうか喪失感のようなものがあった、白城が来ても姫乃じゃない。 例えその時寂しい気持ちが和らいだとしても寂しさは消えなかった。



ああ、そうか。 俺は姫乃と一緒に居たいんだ、白城のことも好きだ。 けど姫乃と会ってわかる。 こいつが俺が居なきゃこうなってしまったように俺ももう姫乃が居ないとダメなんだ。



俺はそっとその手首に触れようとしたら姫乃が目を覚ました。



「ん……」

「姫乃」

「え…… い、一条さん?」

「「なんで?」」



俺と姫乃は同時に言っていた。 なんで姫乃は俺のこと一条さんだなんて? 今まで通りあゆ君でいいのに……



「なんでですか一条さん?」



それは俺も聞きたい、なんで敬語に戻ってるんだよ姫乃?



姫乃は涙を溜めて俺の肩を掴んで言う。 俺の白城に対する気持ちを姫乃に言ってしまって大丈夫だろうか?



「ごめん姫乃」



またごめんと言って姫乃を傷付けてしまうかもしれないけど俺は姫乃を抱きしめた。



ビクッとした姫乃だったが泣きながら俺の背中に手を回した。



いや、姫乃が居る。 もうどうだっていい、姫乃の事情や俺の事情、そんなの全部かなぐり捨てて姫乃と一緒に居たかった。



「あたしはもういらない子ですか?」

「ごめん、ちゃんと話すから」








◇◇◇








「あたしに嘘ついて白城さんと会ってたんですね一条さんは」

「ごめん」

「だからあたしはお払い箱でいなくなって精々したんですよね?」

「い、いや違うぞ!?」

「だってあたしのこと迎えに来てくれなかったです、あたしは何度も一条さんのところに戻ろうとしたのに竜太に邪魔されて」

「ち、違う、それは俺がこんな優柔不断野郎で確かに白城と居た時迷いがあったってのは嘘じゃないけど」

「どうせここに来たのも竜太かゆかぴぃやマミちんに無理矢理来させられたんですよね?」

「結果的にはそうなった、だけど俺姫乃がこんなことになってるなんて知らなくて」

「あたしのことなんてどうでもいいんですよね? あたしみたいな人様の家で自殺未遂なんてしちゃう大迷惑女なんて誰もいらないですよね」



姫乃はブワッとまた涙ぐんだ。 



確かに角谷の両親も自分の家で自殺未遂なんてされたらたまったもんじゃないけどそこは置いておこう。



「違うんだ姫乃、俺今姫乃と会って…… いいや、姫乃が居なくなってずっと寂しかったんだ」

「嘘です、白城さんが訪ねて来ればあたしなんて居なくても一条さんはへっちゃらです。 だってあたしは一条さんの初恋の相手の劣化版ですから」

「そんなんじゃない、姫乃は姫乃だ。 白城じゃない」

「一条さんは酷い目に遭わされても結局白城さんを好きでした、あたしは白城さんの代わりとして置いてたんです」



ああ言えばこう言われてしまう、そりゃあそうだ、俺は口だけで姫乃を本当に好きなんて言っても何も信用なんかされない。



だけどどうすればわかってくれるんだ?



「あたしと居ると困りますよね? 死ぬことも満足に出来ませんでしたしあたしはみんなに迷惑掛けてばかりです、死んでも竜太の家の人に迷惑掛けたと思うけど迷惑女ですから地獄にでも堕ちて反省して…… ああ、地獄に来られても迷惑ですよねあたし」

「わかった」

「え?」

「お前が死ぬなら俺も付き合う、だから姫乃が死のうと思ったら俺も死ぬよ」

「何を言ってるんです?」



俺は必死に考えたけど咄嗟だったのでこんなことしか思い付かなかった。



「お前の左手にずっと残っちまう傷作っちまった、だから俺も一緒に背負うよ」



俺は姫乃のベッドの隣に置いてあった手鏡に拳を叩き込んだ。



思い切り殴ったので拳が切れて血が出てしまう、姫乃はそれを何が何だかという表情で見ていた。



「俺みたいなのこそ地獄行きで痛い目見ないと信用出来ないよな、ごめん姫乃」



俺は割れた鏡のカケラを自分の左手首に突き刺そうとした。



「待って!」



振り上げた手を姫乃は掴んだ。 その拍子に点滴が抜けてガシャンと点滴台が倒れた。



「姫乃!?」



その音を聴いた角谷が部屋のドアを開けて俺と姫乃の状態を見て絶句する。



「おい、あんた何を!」

「竜太、なんでもないから」

「なんでもないわけ……」

「お願い、本当になんでもないから」



角谷にそう言うと姫乃はこっちを見た。



「一条さん、それはダメです」

「いや…… 俺こんなことしか思い付かなくて」

「こんなとこでそんなことしたら迷惑です。 あたしが言えたことじゃありませんが…… ううん、あたし一条さんにこんなことしてほしくありません、死んでほしくありません…… でもあたしショックで、一条さんのことホントに好きだったから。 好きで好きでッ、ううッ……」



俺はそっと手を下ろした。 



「姫乃…… 俺ってお前が思うほど大人じゃなかった、いつも振り回されてて自分のことばっかり考えてて優しくもないしおまけに最低な嘘ついて。 でも姫乃と一緒に暮らしててずっと楽しかったんだ。 また戻ってきて欲しい、ダメかな?」



姫乃は俺の胸に顔を埋めて顔を振った。



「戻りたい、あゆ君とまた一緒に暮らしたい」



それを聞いていた角谷は黙って病室から出て行った。







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