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そうして姫乃が居ないまま3日が経った、白城からも連絡がない。
姫乃も今頃は落ち着いて考えられるようになってるだろう、そうして連絡も音沙汰ないってことはそういうことなんだろう。
仕事には行かなきゃいけなかったので行っていたけど帰ってコンビニで買った飯を食べる姫乃と会う以前と同じ生活。 いや、片付けもする気力がなくて洗濯や食器類も放置したままのヤバい部屋になりつつあるからもっと酷いか。
前は誰も居なくても平気だったのに姫乃と一緒に居たせいだ、物凄く寂しく感じる。
幸い今日は休みだからこの汚い部屋を少しは片付けて気を紛らわそうと思ったら腹が減ったのでカップ麺を漁る。
カップ焼きそばしかなかったけどこれは姫乃が買ってきておいたやつだ、なんでもカップ焼きそばは絶対粉末ソースのが美味しいとどうでもいいこだわりを言っていたな。
焼きそばの麺が出来たので粉末ソースを振り掛ける。 混ざりにくい、姫乃が居たらやっぱり絶対液体ソースのが楽だろと言って食べてたとこだ。
まぁもう姫乃が居ないから何も言えない。 そう思うとまた寂しくなる。
ダメだ、いちいち考えるな。
食べ終わると掃除しようなんて思っていたのも失せてまた床に寝転んだ。
白城と同じく姫乃も俺を最低な奴だと思ってるだろう、白城にも悪いことしたなぁ。
なんでこんなことに…… また今更なことが頭をよぎる。 俺が白城と高校の時上手く付き合えてたならこんなことにはならなかったんだろうか? それは無理だ、あの頃は俺と白城はどうやっても上手くいく気がしない。
いやいや、今も結局これで上手くいかなかったじゃないか。
姫乃が居ないと思うと何もする気にならなかった。
そして夕方になった。 夕飯買うのも用意するのも面倒くさい、明日も休みだし今日は食べないで明日の朝食べようと思ってたところ玄関が開いた。
まさか姫乃!? と思って体を起こすとまさかのまさか、俺に愛想を尽かしたと思った白城だった。
「あれ? まだひとりぼっち?? こりゃ本格的に姫乃ちゃんにフラれたのかもね」
「し、白城? なんでここに?」
「あ、うーん、しばらく放置して打ちのめしてやろうと思ったんだけど早過ぎたかな? もし姫乃ちゃん来てめでたしみたいになっててもムカつくし」
「それってつまりどういうこと?」
「まぁ…… 自暴自棄になってたんなら夕飯作りに来てあげたってとこ」
「俺のことゆるし」
「てない!!」
大きめの声で被せ気味に言われた。 だったらなんで来てくれたんだよ……
「あたしと付き合っててあたしの他に女が居た最低男が一条君だけだったからよ、あーホントムカつく」
白城は俺が訊きたいことが顔に出ていたのか俺の顔を見てそう言った。
「ごめッ!?」
俺が謝ろうとしたら白城は俺の口に人差し指を当てた。
「今は聞きたくないしとりあえずご飯食べよう? あとでゆっくり抉ってあげるから」
「あ、うん……」
そう言われるとあとが怖い。
「じゃあ適当に台所借りるねって…… きったな! 部屋もそうだけど一条君全然掃除してないでしょ?」
「見ての通り、なんにもやる気が起きなくて」
「それなりに打ちのめされてたのね、いい気味だけど」
白城は台所の食器洗いから始めた。 ちょっと前まではそこには姫乃が居たんだよな、似てるから姫乃だって思えるけど。
「ボーッとしてないで一条君はテーブルの辺り片付けてよ」
「ああ、わかった」
思いの外誰か居るってのは今の俺の寂しさにはよく効いたようでそれが白城だからかはわからないけど少しは元気が出てきたような気がする。
「はいどうぞ」
置かれたのは雑炊だった、なんか風邪とか引いたみたいだ。
「なんかそんなに食べないかなぁって思ったから」
「よくわかったな、あんまり食欲なかった。 でも美味しいよ」
「あたしが作ったからね」
「白城は食べないの?」
「うん、あたしもそんなにお腹減ってないんだ。 なんせ一条君の顔見たらはらわた煮え繰り返りそうになったし」
笑顔でサラッとそう言われてスプーンを運ぶ手が止まる。
「なーんて冗談だよ冗談」
「そうは聞こえなかったけど」
「だって一条君にムカついてるのは本当だしどうやって仕返ししようかなぁって考えてたの」
「ゲホッゲホ!!」
「だから冗談だって」
ホントかよ? でも俺は何されたって文句言えないからな、姫乃と白城には……
「ところでさぁー、あたしもうわかっちゃったんだし姫乃ちゃんとのこと教えてよ」
「え? 知りたいの?」
「まぁあんだけ似てたら姫乃ちゃんってどんな子なんだろうなぁって思うじゃん? あたしに似てモテそうだけどよりにもよってこんな悪い男に捕まったのは同じく男運ないのは一緒だなぁって」
「いちいちくること言うなぁ。 言われても仕方ないけど」
それから俺は白城に姫乃のことを話した。 白城はそれを静かに俺に時にはまた辛辣なことを言って聞いてたりした。
「そっかぁ、それで姫乃ちゃん一条君と今まで一緒にいたんだね」
「ああ」
「だからってあたしには何の関係もないし、今の話聞いたからってあたしにそれについて同情とか求めたり一条君がやったことを帳消しにするなんてありえないよ? わかってる?」
「わかってるよ」
そう言うと白城は「はぁ」と溜息を吐くと……
「そういやさ、姫乃ちゃん連れてった男の子居たじゃん」
「角谷?」
「ふーん、角谷君か。 あの子結構かっこいいじゃん。 あたしが姫乃ちゃんと同じ歳だったら迷わず角谷君かなぁ」
「そんなん当たり前じゃん、俺でもわかるよ」
まぁそりゃそうだ。 角谷は角谷で姫乃の癪に触ることもあるんだろうけど口だけの俺よりは誠実だ、だから姫乃も戻ってこないんだろう。
「でもさ、ダメダメな一条君でもちょっとは良いとこあるよ」
「え? どこ??」
「………」
「いやないのか?!」
「あはッ、ちょっとあたし言い過ぎたかなって。 ごめんごめん」
白城はしばらく俺と居てくれた。 そのおかげかほんの少しだけど楽になった気がする。




