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「もう具合良くなった?」

「ああ、ありがとう」

「じゃあ大丈夫だね?」

「え?」



白城が右手を振りかぶる、俺はその瞬間ビンタが来るんだとわかったので覚悟した。



「あれ??」



平手は俺の頬直前で止まった。



「ぷ…… ぷぷッ、病み上がりの体にビンタすると思った? そこまであたし酷い奴じゃないよぉー! 一条君とは違って」

「うぐッ」



けれど言葉では突き刺してきた。



「まさか一条君が浮気するなんてあたしショック。 しかもあんなに若い女の子と」



実際は白城が浮気相手で姫乃とはもともと付き合って…… 今はどうなんだ? 俺と姫乃の関係って。



「本命は姫乃ちゃん? 見た目はあたしに似て可愛いし見た感じ一条君にベタ惚れしてるし」

「本命?」



本命って……



「あー、その反応はあたしにするか姫乃ちゃんにするかって悩んでるでしょー? あの子あたしにそっくりだったもんね、そもそも一条君はあたしのこと未練に感じててあたしの面影がある姫乃ちゃんが気になってって感じでしょ?」



ぐッ、的を得ている。



「まぁ…… そうだけど」

「でしょー? そんでもってその反応だと姫乃ちゃんに最初に出会って姫乃ちゃんと上手くいって後からあたしが現れて本物と比べちゃってあたしにも傾き掛けてる、でも姫乃ちゃんも大事。 もうどっちにしたらいいかわからなくなっちゃってズルズル今まで引っ張ってこんな状況。 で合ってる?」



速攻で見抜かれて俺はただ頷いた。



「完璧にダメなパターンじゃん!」

「俺もそう思う」

「あーあ、あたしってまだ男を見る目なかったようだなぁ。 ホント傷付く」

「い、いやそれは俺のせいだし」

「まぁそうなんだけどね。 姫乃ちゃんも可哀想、あんなに縋り寄ってきた男が一条君だなんてあたしに似て男を見る目ないんだね、ちょっとそこは親近感。 …… ん?」



白城は何かに気付いたのかテーブルの下にごちゃごちゃ置いてた中から姫乃に買った子供用のピアノを取り出した。



「ふーん、姫乃ちゃんピアノ弾くんだ?」

「あ、ああ、そんなんでも喜んでよく弾いてたよ」

「そっかぁ、そんなとこもあたしにそっくりか」

「え?」



白城はピアノの電源を入れてピアノを弾き始めた。 



白城もピアノが得意だったのか、そんなの全然知らなかったというかそもそもそんなの出来そうに見えなかったってのもあるけど、姫乃と同じく。



「意外でしょー? 小さい頃からピアノ習ってたけど得意だなんて言ったら弾かされそうだから言わなかったんだ」

「そうなんだ」

「うん」



姫乃と白城って本当いろいろそっくりなんだなぁ。



ボケーッと白城の弾く姿を見ていると白城は突然乱暴にピアノの鍵盤をバン!!と叩き、心地よかったリズムを中断させた。



「白城??」

「だからムカつく…… そりゃあたし昔一条君に酷いことしたよ? けど今度はちゃんとしようって思ったのに。 一条君をホントに好きだって思ってたのに酷過ぎる、ただの浮気相手だったなんて」



鍵盤に置いた白城の手の甲にポタッと涙が落ちた。



その泣き顔を見た時姫乃の泣き顔と重なって俺は思わず白城の肩を掴んで自分の方に引き寄せた。



「何これ?」

「あ…… ええと」



白城だから? 姫乃に見えたから? どっちかなんてこの時の俺にはわからなかった。 けど俺の初恋の相手の白城と今まで一緒に居た姫乃が似過ぎているのとさっきの修羅場が合わさって俺は自分のしていることが何が良いのか判断がつかなかった。



「ごめん白城、俺最初はお前のことが許せなかったんだ。 昔のことだってわかってたけどやっぱり根に持ってて白城とあの時会って今度は俺が白城を傷付けようって思ったんだ」

「酷いね…… でも目的果たせて良かったね」

「違うんだ、白城が言った通りあの時とは違う今の白城を見て姫乃が居たのに本当に白城のことが好きになってしまって。 俺は白城が言うように優しい奴なんかじゃなくて最低な奴だった」

「そうだね最低だよ、普通だったら問答無用でポイよ君なんて…… バカみたいあたし」



白城は俺の肩に顔を埋めてしばらく泣いていた。 俺は「ごめん」となんどか呟いて白城の背中に手を当てていた。



するといきなり白城の手に突き離されたかと思ったら白城は部屋を出て行った。 出て行った後少しして玄関から出ると白城の車はもうない。



物凄く疲れた。



疲れて床にゴロンと寝転び天井を見て大して広くない部屋を見渡す。 



いつもならここに姫乃が居て2人で居る時ちょくちょく姫乃は俺に絡んできた。 けど今はもういない。



姫乃は今何してるんだ? そう思って体を起こすが全部俺が招いた結果だと思って姫乃に最低なことをした俺が誰に何を言えるんだと思ったら力が抜けてまた床に転がった。



ひとつ言えるのはそうだな、自業自得だってことだ。



姫乃も冷静になって考えれば俺に騙されてたとわかって嫌いになるだろう、白城にも愛想を尽かされた。



なんであの時の俺は両立なんて出来ると思ったのか……



溜息を何度も吐いてもし時間が戻せるならこうすれば良かった、ああすれば良かったと意味のないことばかり考えていた。





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