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「一条さーん、朝ですよー! お仕事あるんじゃないんですかー?」

「うるさ……」



今何時だよ?



スマホを見ると5時40分、仕事でもいつもまだ寝てるよ俺。



「一条さーん!」



ガキは年寄りと同じで朝早いんだな、俺はギリギリまで寝てたいのに。



「こらー!」

「起きるってば」



こんな時間に起きるなんて滅多にないので身体が慣れてない。



俺が住んでるこのアパートは部屋がふたつしかない。 台所が付いてる居間にあとは寝る部屋、昨日は姫乃に寝る部屋を提供したので俺は居間に寝ることにした。



「一条さんの部屋なんだからあたしなんて気にしないで一緒にこの部屋で寝ましょうよ」と姫乃は言ったがこれ以上こいつのネタになるような罪状を増やしたくないので別で寝た。



「あー、なんか朝から疲れるなぁ」



トイレに行こうとしたら姫乃が慌ててトイレのドアの前に立った。



「何してんの?」

「ちょっと待って下さいよ! 10分くらい」

「待つ? なんで?」

「それはその…… 変態!!」

「はあ?」



さてはこいつ…… 大体想像ついた、そんなことが恥ずかしいなんてやっぱガキだな。 学校で大便すると一躍有名になるそれと同じくらいの低レベルなガキの発想。



「あのなぁ、例えお前が可愛くても俺は仕事前でピリピリしてるから今はまったくそんなのどうでもいいんだ」



すると姫乃が首を傾げた。



「え? 今一条さんあたしのこと可愛いって言いました?」

「は?」

「言いましたよね? ははーん、なるほど。 あたしって一条さんのタイプだってことですよね?」

「なんでそうなる」

「だってそうでもなきゃ見ず知らずの人にご飯を恵んで住む家も提供するはずないじゃないですか?」

「お前俺のこと脅迫してたの覚えてないの?」



タイプだってのは間違ってないがな。 こいつがあと5歳上だったらその栗色のフワフワな髪の毛わしゃわしゃして撫でたいけど手を出したら何言われるかわかったもんじゃない。



「あれ? どこ行くんですか?」

「トイレダメなんだろ? だったらもう一度寝る」

「ダメです! 一条さんだらしないんですから二度寝したらしばらく起きなそうです。 今コーヒー作るんでそこに座って待ってて下さい」



マジかよ…… コーヒーなんて別に飲みたくないのに。



「はいどうぞ」



置かれたコーヒーはまだ熱くて飲めないし夏なんだからアイスコーヒーが良かったな。



「飲まないんですか?」

「熱くて飲めない」

「ぷぷッ、そうなんですか」

「何がおかしいんだ?」

「なんでもありません、じゃあ氷入れましょう」



姫乃は冷蔵庫から氷を出すと別のコップに氷を入れてそこにコーヒーを入れ直した。



「こちらアイスコーヒーになります」



どこぞの店員みたいに差し出した。 今度は冷えてるので飲んでみた。



「どうですか?」

「うん飲める」



そう言うと姫乃はニコッと笑って「あたしって親切」とドヤ顔でご満悦そうにしていた。



「お前さ、いつ自分の家に戻るわけ?」

「来たばっかりでもうそれですか? そんなのわかりません」

「ならせめて親に連絡しろよ、友達の家に泊めてもらってるから心配しないでとかいろいろ言いようあるだろ」

「あたし携帯持ってないんで」

「持ってないの?」

「家に置いてきちゃいました」

「なんだよそれ、本当にきのみきたまま来たんだな。 俺の携帯貸すから親に電話しろ」



スマホを姫乃の前に出すとジーッと見つめるだけで受け取らないが少しして溜め息を吐いてスマホを手に取った。



「仕方ないですねぇ」

「それくらい当然だろ、くれぐれも余計なこと言うなよ。 お前が変なこと言ったらここにも居れないんだからな」

「わかってますって」



姫乃は俺の前で電話をすると親が出たみたいで話し出した。



「もしもしあたし。 しばらく友達の家に泊まるから…… うん、わかってるって。 迷惑掛けないから」



なんか淡白だなぁ、こいつの親は心配してないのか?



「じゃああたしのことは気にしなくていいから」



そう言って姫乃は電話を切り俺に渡した。 一応履歴を見たが知らない番号、確かに電話したみたいだ。 つーか学校とかはどうしてるんだ? まぁ今はとりあえず……



「で? どうなった?」

「はい、問題なく済みました。 これで満足しました?」

「まあ捜索願いは出されずに済むからとりあえずは安心かな」

「じゃあ朝ごはん作っちゃいますね。 と言ってもろくな食材ありませんよねぇ。 ご飯は昨日セットしておいたのでいいんですが」

「もともと朝食べてないし」

「そうだろうと思いましたいた一条さんですし」

「昨日の今日でお前に俺の何がわかるんだよ?」

「だらしがないってことはわかりました」



姫乃はしばらく冷蔵庫の中を確認したが諦めてご飯が出来るとふりかけにすることにした。



「何か食材買わないとですねぇ」



俺を見ながら言った。



買いたいから金よこせってことか? まったく……



「じゃあ何かこれで好きなの買ってこいよ」

「一万円!」

「足りないのか? だったらほら」



更に一万円を渡した。 貯金は80万くらいは貯めていた、生産性のない日常の中で最近唯一貯金するのは楽しみになっていた。 けど使い所みたいなのはなかったので今こそいいかと思った。



「ちょ、ちょっと待って下さい! 食材買うのにこんなに使うわけないじゃないですか」

「いや、お前の日用品も込みで使って良いからってこと。 でも待てよ、それじゃ二万じゃ足りないか?? だったらほら」



更にもう二万円追加した。 そうすると姫乃の慌てる感じが面白かった、15歳に四万ポイッと渡したんだからな。



「ああ…… でもいいんですか?」

「お前下着とかも必要だろ? 昨日からずっと同じ下着履くつもりか? 服もそうだし」

「エッチ!! セクハラ!」



姫乃はちょっと恥ずかしたかったのか舌をベーッとだした。



「でもこんなに必要ないかも」

「余ったら返してくれればいいよ。 俺はもう仕事の時間だし」

「一条さんの財政が気になってきました。 それじゃあたしはお部屋掃除とかしてから買い物に行ってきますね」

「ああ、頼んだ」



俺は家を出たが大丈夫かな? と思ってアパートを振り向いたが姫乃に任せることにした。


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