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「来てくれたんだ」
待ってた車のドアを開けるとクスッと白城は微笑みそう言った。
「なんだよ、意外?」
「一条君あたしに怒ってそうだったし」
あの時の怒りはあるけど白城からそんな風に見えたのにまた飲みに行こうなんてよく誘えたな。
「あの時から時間も大分経ったしな」
嘘だ、時間も大分経っても俺はずっと根に持ってたのに何カッコつけて水に流した風に語ってるんだか俺。
「変わらず一条君は優しいしね」
「それが白城にとってはつまんなかったんだろ?」
「そうかもしれないけど今はありがたいなぁって思うよ、今日はどこ行きたい?」
「さぁ、考えてなかった。 どこにしよう?」
俺がそう言うと白城は「ならあたしにお任せってことで」と言って車を走らせる。
すると着いたのはゲーセン。
「え、ここ?」
「うん、得意なんだぁ」
得意? 白城ってゲーム好きだったんだと高校の時はそんなの知らなかった。 こういうとこ白城と行ってなかったから。
「UFOキャッチャー?」
「そう、ネットで取り方見たら出来ちゃってさぁ」
そして白城はとあるUFOキャッチーにお金を500円ほど入れた。
どうせすぐには取れないだろうと気長に見ているつもりだった。
「見ててね!」
そう言って白城がアームを進めたのは商品じゃなくて土台の方。 まさか……
土台はアームに引っ掛かりそのまま持ち上がり置かれてあった商品は丸ごと落ちた。
「すげぇ……」
「こんなの序の口だよ、ほら出禁になる前にあらかたこの辺のUFOキャッチー取り尽くしちゃおー!」
そうして白城は外道な方法でどんどん商品をゲットしていく。 俺はその光景をポカーンと口を開けながら見ていた。
土台ごとや普通の取り方を無視した取り方で『故障しました』と何度か鳴るが取ったことには変わりないので景品やら商品を持っていた俺の両手はいっぱいになる。
「やー、いっぱい取れたねぇ」
「これどうすんの?」
「欲しい?」
「こんなにいらないよ」
いや姫乃におみやげ…… それもおかしいか? 何してたんだよってなりそうだし。
「じゃあこのゲーム機とかは? オークションかお店で売ればお金になるよ」
「ああ、なるほど。 っていいの?」
「いいのいいの、凄かったでしょ?」
「確かに…… こんな才能あったんだな白城って」
「あはは、コツさえわかれば誰でも出来るよ」
多分こういうのも俺と別れた後とか他の男と一緒に遊んだりしてたんだろうなぁ。 いや何そんな当たり前のこと考えてるんだ?
「じゃあお腹空いたし何か食べようよ?」
「あ、うん。 どこ行く?」
「そこのファミレスにしよ?」
ということで白城とファミレスに入る。
なんかデートみたいだ、高校の頃も白城と行ったことあるけどこんな感じじゃなかったよなぁ。 今考えるとその頃は俺とこんな場所に来ても白城は頬杖をついて退屈そうにしていたように思える。
なんで今になって楽しそうにしてるんだよ白城は?
そんな白城のギャップに俺は白城を見ていると……
「決まった? ごめん、あたしまだ」
「いや、俺もまだだよ」
「そっか。 じゃあ何? じっとこっち見て」
「楽しいのかなって思って」
「うん、楽しいよ」
即答。 まさか俺と居てそんな迷いなく楽しいと言うとは思わなかった。
「今更だよな」
「え? …… うん、今更でごめんね。 あたしもそう思ってる」
白城は選んでいたメニューをパタンと閉じた。
「あたしってさ、よく男の人と遊んでたけどホントにただ何も見ないで遊んでただけなんだなぁって思うよ。 多分あっちもそうなんだろうけどね、好きとかそんな気持ちよりもさ。 子供だったんだよあたしって」
「ふぅん……」
そんなこと聞かされたってどうしようもない、ただただ俺と付き合ったのはやっぱりこいつのその時の気分だったってことがわかっただけだし。
「でもさ、思い返してみるとホントにあたしのこと好きになってくれたのって一条君だったからさ。 こうして偶然会ってまた遊んでるのが嘘みたいだよね」
閉じたメニューの上を指でつつきながら白城は言った。
俺も勝手だけどこいつも自分勝手だ、たまたま会った俺にそんなこと潮らしく語ってみせて。
「ねぇ一条君」
白城はトントンとメニューをつついてた手を握った。
「あたし達もう1度やり直す?」
「え?」
白城は俺の目をじっと見つめてそう言った。
やり直す、白城と俺が? 1度俺を捨てといてどの口がほざいてるんだ??
「だよね、あたしが言えたことじゃないよね」
白城は俺の様子を見てそう言った、けど俺は閃いた。
これはチャンスなんじゃないか? 俺は白城がやり直すなんて言わなければ今会ってみてやっぱりこれで会うのは最後にしよう、と何度も「仕返しするんじゃないのか?」という自分の気持ちを押し殺してきた。 心の中でそうした方がいいに決まってるのはわかってたから。
でも白城は性懲りもなく…… また飽きたらポイされるかもと思うと俺は。
姫乃、白城、俺は優しくなんてないよ。
「白城がやり直したいって言うなら俺も……」
その瞬間姫乃の姿が浮かんだ。 ダメだ、これは完全に裏切りだ、今ならまだ戻れると考えた矢先に。
「ホント? いいの?」
「あ、いやえっと」
「だったらあたしね、今度は一条君のことちゃんと見るから!」
前のめりになって予想とは違うやけに嬉しそうな笑顔に俺は後先引けなそうなこの状況で「お、おお……」と言うしかなかった。




