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「ここなんか良さそうじゃない?」



そう言われ車を停めて先輩と2人で行った場所はショットバー。 



俺こんな店に今まで入ったことがない。



「あたしもここ初めてだから安心して」

「うん? ああ」



何が安心してなのかわからないがカウンターの席に座って何を飲もうか見る。 ここに来たのはいいとして俺はあんまり酒が強い方じゃない。



カクテルってジュースっぽいけど意外とアルコール度数高いんだっけ。



「じゃあカシスオレンジ」

「あたしもそれにしよう」



そうして少しの沈黙。 俺は隣に座る白城を横目で見る。 



本当に白城と姫乃って似ているな、姫乃もあと8年くらいしたらこんな風になるのだろうか? …… 綺麗だな。



白城を見ていると白城が口を開いた。



「あ、あのね、この前取材した記事なんだけど」



そう言って白城はカバンからノートパソコンを取り出した。



「こんな感じで作ってみたの、どうかな?」



俺は白城が作ったであろう記事を見る。



「よく出来てる…… と思う」

「そうかな? あ、もしかしてお世辞?」

「そんなんじゃないって」

「まぁ別にいいんだけどさ」



クスッと俺に向けて微笑む白城を見ると一瞬あの頃に戻った感覚になる。 少し胸の鼓動も早くなるがそんな自分を戒めるため置かれていたカクテルを流し込む。



こんな小さいグラスで無駄に高い、オシャレ感覚で雰囲気だけを味わうとこだなここ。 と、頭の中で店を無意味にディスる。 



そうだ、今日俺は白城と白黒つけに来たんだ。 ほんのりとウフフアハハと白城と話してたんじゃまた都合のいい男で終わりだぞ俺!



「そういえば俺と久しぶりに話したいって言ってたけどさ、何か話すことあるのか俺と」

「うん、その記事見てもらいたいなって言ったじゃん、感想聞きたかったし。 それなりだから上々ってことで満足かな」

「じゃあもう話は済んだだろ?」

「冷たいなぁ一条君。 でもさ、無理しなくていいんだよ?」

「は?」



見透かしたように笑う白城にムカッときたが落ち着け俺。 



「一条君優しかったもんね」

「あの時はそうだとしても今は白城に優しくする道理もないし無理なんかしてない」

「ううーん、咄嗟の反応は変わらないけど一条君ちょっと拗らせてツンデレになっちゃった?」



ビシッと俺の鼻に人差し指を当てられる。 



「う、わ…… わッ」

「ほら危ない」



情けなくそんな白城の仕草に後退り椅子から落ちそうになる俺を白城は俺の腕を掴んで止めた。



「ふふふ、大丈夫?」

「だ、大丈夫」



ハッとして白城の腕を払いのける。



何やってんだ俺は……



「ごめんねビックリさせちゃって」

「ビックリなんて」



してないと言おうとした時だった、白城が俺に頭を下げた。



「は? 白城??」

「それと前はごめん」

「前?」

「高校の時のこと」

「あ……」



まさかその時のことを白城に謝られるなんて俺は思いもしなくてポカンとする。



「あの時のあたしは子供で…… 少しチヤホヤされたからって調子に乗ってた。 バカだし酷いことしたなって思ってるよ」



な、なんだと!? なんで謝るんだよ、俺はもう昔のことだと割り切っていた、割り切っていたつもりだが少なからず根に持っていることも事実でそれを糧として今日は白城に一矢報いてやるはずだったのに。



「そのことか、俺の後にもいろんな奴と付き合ってた白城からしてみれば俺のことなんてなんとも思ってないのかと」

「いやさ、あたしってそんなんだから結構遊び人だと思われてて体よく扱われて下心丸見えなのばっかだったよ。 でも一条君はそんな風にあたしを見てなかった、なのに逆にそれはそれでつまらなかったって思ったあたしは最低だったよ」



…… これはどうすればいいんだ? 



「そうだな、お前は最低野郎だ」か? それとも「頭を上げてくれ、わかれば宜しい」…… いやいや! でもだからってどうなるんだ?? 



もういいや。



「いいよもう。 俺ももうなんとも思ってないし」

「そっか」



ゆっくりと白城は俺に向き直った。



「…… じゃあ偶然の再会を祝して乾杯しよう」

「ああ。 って俺もう全部飲んじゃってるし」

「それならもう一杯。 あたしの奢りだから遠慮しないで」



そう言って白城はもう一杯頼み乾杯する。 その後は高校の時のこととか今友達が何やってるかと色々話した。



「一条君はさ、結構貯金とか貯まってる?」

「急に貯金の話?」

「なんとなく」

「んー、45万くらいかな」



何かと姫乃と一緒に遊んでたら半分近くパーになってしまったのはちょっと反省してる。



「えー、そんなもんなんだ? 一条君のことだからもっと貯めてるのかと思った」

「俺ってそういう印象なの? お生憎様、そんなもんだよ」



というか貯金の話ということは俺を使えるかどうかの値踏みか? 



「あたしなんてもう結構貯まっちゃったよ、これでも真面目に仕事してたから」

「なんか俺は真面目に仕事してないみたいに聞こえるな」

「あははッ、違うって」



なんだろう? 思ったよりスムーズに会話出来てるような気もする、それも昔よりも。



白城が綺麗とはいえ俺が前よりもこいつに対する気持ちが薄いからか? いやいや前よりもってなんだ、カケラもないだろ! と言い聞かせていると……



「ねえ、一条君さえ良かったらさ」

「うん?」

「こうしてまた一緒に飲まない?」



きた! ここだ、ここでハッキリと断ってやるんだ。 こんなことじゃフラれるのとは比にはならないような気もするけど言ってやれ、「だが断る!」と。



「だ……」

「今のあたしね、一条君に会って前より…… ううん、もっと話してみたい、こうして会ってみたいなって思うの」



…… は?







◇◇◇







「じゃあまた連絡するね」

「いやどうだろうな」

「ふふッ、じゃあ一条君の気が向いたらね」



自宅の近くで車から降ろしてもらい白城は帰って行った。



結局俺は白城の言った言葉のせいでハッキリ断るはずが有耶無耶になってしまった。



「バカな俺、懲りてないのかよ?」



ボソッと呟くが虚しかった。 というか普通に飲酒運転だぞお前…… サラッとさも当たり前かのようにバーから出て車に乗ったからどうするつもりなんだろうと思ったら。 




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