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俺が帰ってきてテーブルに座ると姫乃から……



「はぁ〜」



と盛大な溜め息。



「意味深に溜め息吐いてどうした?」

「聞いてよあゆ君!」

「そうくると思ったけど」

「あたしまだ言ってなかっけどあたしには幼馴染の男の子が居てね……」

「へぇ、そんな奴が居たのか」



幼馴染か、ぶっちゃけ姫乃みたいな幼馴染なんて居たら俺どうなっていたかなと考えていると……



「近くまで来てるの」

「ふぅん…… はッ!?」



な、なんだって?? 近くまで来てるってどういうこと?



「ごめんなさいッ! ダメって言ったんだけど聞かなくて」

「それで? 今どこにいるわけ?」

「アパートの外辺りにいたんだけど。 ちょっと見てくるね」

「マジかよ……」



そうして姫乃が外に行って数分後、玄関をノックされる。 わざわざノックするということはその幼馴染とやらも一緒ということなんだろう。



「はーい」



俺が返事をすると玄関が開いて姫乃が顔を出すと姫乃の後ろから怪訝な顔をした男の子がいた。



「ほら、ここまでついてきたんでしょ?」

「うるせぇよ、お前がこんなとこで…… あ、どうも」



俺の顔が見えるとその男の子は言葉を止めた。



こんなとこで悪かったなこんなとこで! 確かにボロアパートだけどさ。



姫乃の学校の奴らと同じ制服、ということは高校も同じか。



「こちらあゆ…… オホンッ、一条さん! これはあたしの幼馴染の角谷 竜太だよ」



いつも通りあゆ君と言い掛けそうになった姫乃は咳払いをして誤魔化した、どうやら俺が彼氏というのは話がややこしくなりそうなので伏せておくという感じか、そういうのは事前に打ち合わせしといてくれよ。



「これ呼ばわりやめろよ。 ええと、一条さんでしたよね? 長い間姫乃がお世話になってすみません」

「ああ、いや。 そんなこともないさ、ここじゃなんだから入ってくれよ」



ううむ、結構イケメンじゃないか。 少なくとも俺よりは。 こいつが姫乃の幼馴染か。



居間に入れると姫乃は俺と角谷にジュースを入れた。



「とりあえず姫乃、お前も座れ」

「はいはい」



角谷が姫乃に言うと姫乃は俺の横に座った、それを見た角谷はちょっと眉が上がった。



「なあ姫乃、お前なんでこんなにここに居座ってるんだ? お前がそれじゃあ一条さんも迷惑してるだろ」

「何度も言ったでしょ、それに竜太だったらわかるでしょ?」

「まぁわからなくもないけどなんでここなんだ? だったら俺の家とかでも良かったじゃないか?」

「竜太の家だとすぐに帰されるもん。 竜太はあたしのお母さんからよろしくねって頼まれてるからね」

「そうかもしれないけどこんなことしてていいのか?」



学校でもこいつに言われてるんだろうな姫乃。 けど普通は姫乃は帰るべきなのだから角谷の言うことはわからなくもない、けど幼馴染やってたんなら姫乃の親のことだってわかるだろうが……



「ならあとちょっと我慢してあの家からは出てけばいいだろ?」

「イヤ、あたしもうずっと我慢してたの、あとちょっととか言うけど竜太になんかあたしがどれだけ苦痛かなんてわからないよ」

「お前なぁ」

「ちょっと落ち着けよ」



話が熱くなりそうなのでストップを掛けると角谷は俺に話し掛ける。



「一条さんからも言ってやって下さい、こいつ聞き分けがいいとこもあるけど本当は結構ワガママなんです」



うん知ってる。



「俺もそのことについては姫乃と散々話したんだ、けど姫乃は本当に家に帰りたくない…… というか両親と顔を合わせるのが辛いみたいでさ、だったら姫乃がその気になるまで無理せずに待ってあげてもいいんじゃないかなって思って今もここに居させてるんだ」

「そんな…… 見ず知らずの人が、しかも大人の人が女子高生を拾って一緒とかって」



俺の言ったことに唖然として尚且つ敵意みたいな視線を角谷から感じた。



そうか、やっぱこいつは姫乃のこと幼馴染というより好きヨリなんだな。 ここまでついてくるくらいだしそうなんだろう。



「ちょっと! 一条さんは凄く良い人なんだよ? そういう言い方なくない?」

「そう言うけどさ、お前の神経も信じらんないよ? 例え良い人だったとしてもそんな人じゃなかったらどうしてたんだ? 一緒に住んでみてわかったことだろ、違かったらどうしてたつもりだ? 警察沙汰なんかになったらどうするんだ?」



そこについてはまったく同感だ。 後先考えてないにも程があるよな今考えると。



「それは…… でもその時のあたしそれどころじゃなかったし。 それにあたしの立場になってない竜太にはわかんないよ!」



まぁ姫乃の言うところもわからなくもない、俺だって姫乃の立場になったらその時の姫乃は藁にもすがる思いだったかもしれない。



「けどそれで一条さんの迷惑とか考えなかったのか? いきなり住み込んで。 どうせお金とかも持ってなかったんだろ?」



角谷はチラリと目に入った姫乃に買ってやったつい昨日弾いていて床に置いてあったピアノのオモチャを見てそう言った。



「こんなのまで買わせて…… 一条さんは待つと言ってますがこのまま姫乃が駄々をこねてずっとこの状態だったらどうするんですか?」



どうするって……



「それは姫乃が決めることだ、俺はここまできた以上姫乃に任せるよ」

「そんな甘やかして……」



少し3人の間で言葉が詰まる。



「…… あたし」



と、そこで姫乃が口を開く。



「あたしやっぱり一条さんがいい!」

「姫乃! お前はそうやって」

「何度も言うけど竜太にはわからないよ、あたし今凄く幸せなの。 竜太の家はずっと家族仲良しで羨ましかった、あたしはそれがテストの成績とかお母さんに対する態度とか上辺だけの関係だった、わかんないよね?」



うぐッと言葉に詰まる角谷に対して姫乃はまた続ける。



「それで手のひら返されて冷たくされてあたしがどれだけショックだったか。 でもここじゃ違う、一条さんはあたしをそんなので決めたりしないでずっと優しくしてくれた。 竜太みたいに頭ごなしで決め付けてあたしを無理矢理家に帰そうとしない、竜太はあたしが家に帰れば満足で後はあたしがどれだけ辛くてもその時だけなんでしょ?!」

「姫乃落ち着け、ちょっと声が大きい」



ヒートアップしてるので俺は姫乃を宥める。



「角谷君、姫乃がこうまでイヤがってるんだ、これで家に戻れって言うのは姫乃にとって辛すぎるよ」

「いやでも……」



だがこれ以上はと思った角谷は今日のところはということで帰って行った。




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