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しばらくすると姫乃は風呂から出てきた。 



「上がったよ一条さん」

「おう…… オッ!?」



ドライヤーの音が聴こえずにドアが開いて姫乃が出て来たので姫乃の髪は濡れていた。



「髪乾かせよ」

「…… うん、後で乾かす」



姫乃が濡れたままの髪の毛で俺のところへ近寄って俺が座っている股の下に膝を突いて座り込み肩を掴まれた。



何してんだこいつ?



「姫乃?」



姫乃の肩を掴む手に力が入って俺を強引に押し倒そうとしたが俺は踏ん張り止まる。



「なんで?」

「は?」



俺が踏み止まっていると姫乃は更に力を込めるがそうとわかれば俺より小さくて力が弱い姫乃に俺を押し倒すことは出来ない。



「一条さんなんであたしをここに置いてるの?」



姫乃は泣きそうな顔でそう言った。



「あたし一条さんを怒らせてあたしのこと拒んでるくせになんでここに置いてくれてるの? あたしこれで拒まれたらこれ以上どうしていいかわからないよ、なんで怒ってるの?」

「俺が怒ってるから自分の身体で俺を?」

「わかってるよ、一条さんからしたらあたしが好きなタイプだからってあたしに手を出したら後が面倒だって思ってること。 でもあたし一条さんを困らせること絶対しないから、好きにしていいから。 だから…… 怒らないで冷たくしないで見捨てないで!!」



手の力が抜けてついに姫乃は泣き出してしまった。



俺は姫乃の手を掴んでそっと姫乃から離れようとした。 すると……




「イヤ、イヤだ!!」



何を勘違いしたのかわからないが服を掴まれて姫乃は離れようとしない。



「違うって! ちょっと落ち着けよ姫乃」

「だって、だって! 一条さん怒ってるもん!」

「怒ってないよ、俺悪かったって思ってる。 だから姫乃に謝ろうとしたんだ」



そう言うと姫乃は「え?」と言って俺をジッと見た。



「ごめんな。 俺さ、学生の時に付き合ったことある女の子が姫乃にそっくりだったんだ」

「あたしに?」

「そう、けど俺と彼女はすれ違っててあっちはお試しってつもりだったんだけどそん時の俺はバカだったから有頂天になって本気にしてさ、姫乃がさっき海で言ったこととちょっと被るとこあってさ」

「海で…… あッ」



姫乃は思い当たる節が姫乃にあってあのことだと察してハッとした顔をした。



「あ、あれは…… そういうつもりじゃッ…… ううん、ごめんなさい。 そんなの言い訳にならないよね」

「わかってる。 姫乃からしたら俺の彼女だった奴のことなんか全然知らないのに俺は姫乃が似たようなことたまたま言ったからってその時のこと思い出しちゃってあんな感じになってさ。 俺の方が悪かった、ごめん」



姫乃に頭を下げるとポンと頭の上に手を置かれたと思ったらムニュっと頭に柔らかい感触が伝わった。



姫乃が俺の頭に身体を押し付けてたのだ。 俺はビックリして姫乃から離れると姫乃は手で目をゴシゴシさせながら涙を拭っていた。



「あたし…… 一条さんを傷付けた」

「いや、だから俺が勝手に思い込んでただけで姫乃は悪くないんだって」

「し、知らなかったから…… あたし知らなかったから。 うッ、ううッ」



「だよな、だよな?!」と焦って俺は姫乃を慰めるがしばらく姫乃の涙は止まらなかった。



「ごめッ、ごめんなさい、ふぐッ、困らせないって言ったのに」

「いいよ、困ってないから」



実際はこんなに泣かれてどうしたらいいか困ってるけど。



姫乃には行くあてがないんだ、それは必死になるだろう。 例えば友達が居るからといってその友達にも親が居てこんなに居候することを許すなんて考え辛い、たまたま俺みたいな奴に当たってそれが運がいいのか悪いのか姫乃としてはそれに安泰を感じてるんだから。



俺は俺で白城とのことが引っ掛かってて自分の気持ちでこうして姫乃と一緒に暮らして本当はこんなの良くないとわかってるくせに白城にひょんなことでだぶらせていい加減にしろ。 




「あのさ、見捨てたりとかしないからもう泣くなよ? 俺もどうしていいかわかんないし」



と思えばこの言い草である。 慰めているつもりが困ってる感丸出しで言った後にマズかったか? としんぱいになる。



「う、うん、うん…… うあッ」



俺の顔を見て更にボロボロと姫乃の目から涙が溢れるので失言だったかと焦る。



それから困った俺は姫乃に甘いコーヒーをいれてやったら少し落ち着いたようだ。



「落ち着いたか?」

「うん…… ごめん」

「いいよ。 あ、髪乾かした方がいいんじゃない?」

「そうする」



コーヒーを飲んで髪を乾かそうとして立った姫乃が「あっ」と言って俺に向き直った。



「一条さん、髪乾かしたらあたし一条さんの話し聞きたい」

「俺の?」

「うん。 一条さんの学生時代知りたい」

「俺のなんてつまんないと思うけど? 話して面白いエピソードなんてないし」

「ううん、そんなことないよ。 一条さんのだったらあたしは面白そうだし」

「ふぅん。 ならまぁいいけど」



そう言うと姫乃はニコッと笑って風呂場の方へ髪の毛を乾かしに行った。




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