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鏡を見る。 うん、特に変哲のないいつもの自分だ。 



最近よく鏡を見てしまう、それは姫乃が学校に通い出した時からだ。 なんで俺ってこんなに自分の外見のことを気にしなきゃいけないんだ?



前なんて歯を磨くくらいの時しか鏡なんて目に入らなかったのに。



そういえば学生時代はこうして鏡で大したことない顔の自分を良く見せようとか無駄な努力してたっけ。 そのおかげか彼女ひとりくらいは出来たけど昔の話だな。



おいおい、それより今更になって俺は学生気取りなのか? 姫乃の影響か? 恥ずかしすぎるだろそれは。



昔の思い出が掘り起こされる。 そう、俺は姫乃みたいな子がタイプだった。 あの時もそうだ。





「俺と付き合って!」



精一杯出来る限りのお洒落を施した俺は今からしてみれば髪型とか眉毛を整えたり清潔感を出すとか学生服を着た連中の中ではそんなもんだった、まぁ当たり前か。



俺が人生初の告白をした相手は姫乃みたいに肩くらいまでのゆるふわな髪型にパチッとした二重で笑顔が可愛く目鼻顔立ちがハッキリとしていてスラッと細身で所謂結構モテそうで俺にとってはハードルが高そうな女の子だ。



だが勇気を出して告白したのに返事がなかなかない。 ダメかと思って若干背中に汗が滲む。



「ん〜、いいよ。 付き合うだけ付き合ってみよっか」

「いいの!?」

「あははッ、うん。 君って結構大切にしてくれそうだし付き合ってみてもいいかなって。 まぁ軽いノリだけどよろしくね」




あの時の興奮は凄かったな、友達にも自慢して絶対嘘だろとかなんでお前みたいなのにとかそんなこと言われてもなんとも思わないくらい日常が輝いて見えた。



それから数ヶ月経っても俺はその子と一緒に居ると初めて告白した時くらい胸の高鳴りが収まらないくらいだった。



でも軽いノリで付き合ってたつもりのその子と俺とじゃ2人の気持ちの落差というか、何かズレてたんだろうな。



「もういいよ別れよう」

「え? 別れるって??」

「なんかさぁ、大切にしてくれそうって言ったあたしの言葉真に受けてるのかどうかわかんないけど2人で居てもなんとも思わないってゆーか。 だからってなんかしてくれって思うわけでもないけど。 よーするにここまでにしようってこと」



俺は彼女にそう言われてガラガラと何かが音を立てて崩れていく感覚になった。



俺は本当に彼女のことが好きで言われるまでもなく大切にしていた。 だから何も急いでるわけじゃなかったし付き合ってたった数ヶ月だったしこれからだと思っていたのに。



そうか、彼女がいつも付き合っていたのは俺みたいな奴じゃなくてすぐ手を出してきそうなチャラい男とかそういう奴らだった。 だから俺みたいな毛色が違うような奴と気まぐれで彼女は付き合ってみただけに過ぎない。



それで付き合ってピンと来なかったから彼女としては俺なんてどうでもよくなったんだろう。



俺が彼女にとってどうでもよい存在だとしても俺からしてみれば違う。 友達に別れたと言えば「ほらやっぱりなぁー」とか「おかしいと思った」とか「遊びだったんだよお前とは。 真に受けない方がいいって言ったじゃん」とか、付き合っている時はなんとも思わなかった言葉でもその時の俺には深く突き刺さった。



そして俺はそれから誰とも付き合うこともなく今に至る。



そんな彼女の面影を匂わせる姫乃をお金まで出してやってここに住まわせるなんてな。 彼女に似ている分俺の中で何か思うところがあってこうしてるんなら未練タラタラだな。



「おや〜? 最近変に色気付いてますねぇ」

「居たのかよ」

「寧ろ気付かなかったんですか?」

「ボーッとしてたわ。 学校行かなくていいのかよ」

「お生憎様〜、今日は頭が痛いので学校休みまーす」

「そうか、いいよなそんなんで学校休めて」

「大丈夫か? とかくらい言ってくれてもいいと思いますけど」



ムッとして姫乃はトイレに入っていった。 



大丈夫か? とは言おうと思ったけど時折り姫乃を気遣わない風な態度を取ってしまう俺は昔「大切にしてくれそう」と言われた彼女への反抗心なのかもしれない。



冷静に考えると気持ち悪いな俺、あの時の彼女ならともかくこっちは現役女子高生の姫乃。 まったく何やってんだか。 今は俺に依存するしかない姫乃だがそのうちどこかへ行ってしまうだろうに。



お金の負担が掛かってちょっと大変な反面この生活に慣れてきたんだよなぁ。



「あ、おーい一条さん!」

「何?」



トイレから出てきた姫乃は俺のところへ寄ると……



「見て見て、こんなの貼ってみたの!」



スマホカバーに何やらいろいろ女子高生が貼りそうな可愛い系の得体のしれないシールが貼ってあった。



「可愛いでしょー?」

「よくわかんないけどごちゃごちゃしてるな」

「あらそうですか、一条さんにはわかりませんよねぇ」

「はいはい。 じゃあ仕事行ってくるから大人しくしてろよ」

「うん、行ってらっしゃい」



アパートの階段を降りたところでドアが開いた音がしたので振り返るとやはり俺の部屋からだった。



「待って一条さん!」



慌てて走ってきた姫乃は手に弁当を持っていた。 姫乃が学校に行くようになってからは「ひとつ作るのもふたつ作るのも同じなんでこれからあたしが作ってあげます」と言われて弁当を渡されていた。



「ふうー、危なく渡しそびれるとこでした」

「俺もすっかり忘れてたわ」

「お弁当楽しみでしょう?」

「たまに変な味付けあるからそれほどでも」

「ひどーい! 具合が悪くても早起きして作ってあげたのに一条さんの甲斐性なし!」

「はいはい、ありがとな。 じゃあ今日はゆっくり寝てろよ」

「うん…… 一条さんもお仕事頑張ってね」




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