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『ボス』が居なきゃ倒せないじゃないか!

--『ボス』が居なきゃ倒せないじゃないか!--


あらすじ:コピットはツンデレ説

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「魔獣のボスが居ない?どういう事だよ?」


「さてな、森の声の意地悪か森から出たか、あるいは死んだか。」


森に入ってすぐにジィちゃんが森に問いかけてくれたのだが、さっぱり要領を得ない。オレ達は予定通りに3人で森に入ってきた。奴隷商のデブはやっぱり来なかった。まぁ、足手まといになるだけだしな。


だからオレのギフトもデブと別れる前に使えるようにしてもらってる。コピットの為ならいつだって『爆宴の彷徨者』を使ってやる。魔獣の腹に取り付いて爆発してやればボスだろうが何だろうがイチコロだぜ!


だが、森にボスが居ないんなら話は変わって来る。ボスを倒して魔獣群れの統制を乱してやるのが今回の仕事だ。ここは一度村に帰って対策を立て直した方が良いのかもしれない。


「死んだという事は無いでしょう。ボスが死んでいればもっと魔獣たちに変化があると思うんです。」


「そうだな。村を見張る魔獣に動きが無い。普通の動物だったらボスが死ねば新しいボスを選ぶべくオスたちが集まって争いを始める。魔獣だって縄張り争いをしているのを見た事があるから、そう違いもあるまい。」


「森の氾濫だから普段とは違う動きを見せているとか、そう言う事は無いのか?」


滅多に起きない現象だから、普段とは違う行動を魔獣たちが取る可能性は大きいと思うんだ。


「そうだったらオレの知識なんて役に立たん。まぁ、森の氾濫なんて何百年も起きなかった事だから教わる相手も居なかったしな。」


「当時のご先祖様が残した文献とか無いんですか?」


「馬鹿言っちゃいけねぇ、狩人が文字なんて書けるわけがねぇ。狩人の村になら何か伝わっているかも知れないが…。それだって望み薄だ。」


兵士のノブイなら文字を知っているかも知れないが、オレ達村人には文字なんて必要ないから、知っているのは村長のジジイくらいだ。


「となると、選択肢は2つだな。森の中を探すか、外を探すか。」


言っては見たものの森の外とは考えにくい。オレが村を追い出される前から森の動向を知るために見張りが立っている。その目をかいくぐってボスだけ外に出たりするのだろうか?


「神様の思し召しってやつなのかな、森の声だって完全な嘘はつけねぇみたいなんだ。だからオレ達でも今までなんとか村を護ってやれることができていたんだ。」


「森の中には居ないと言うのが嘘ではないのでしたら、森の外って事ですか?」


ノブイの疑問にジィちゃんが首を振る。


「森の少し奥の方に小高い丘がある。山の少し手前の森の中にあるんだがな、あそこにはなぜか木が生えていねぇから、森の声が誤魔化すのには打って付けだろう?」


森に囲まれていても木が生えていないから森じゃないって変な言い訳の気もするが、丘と森の違いなんて誰かが決めているワケでも無いな。


「とにかく、そこまで行ってみますか?」


「他に思いつかないから、仕方あるまい。森の奥になるから少々危険だが、セガレが行っていた程、魔獣の位置がつかめないわけじゃないみたいだ。十分気を付ければ何とかなるだろう。」


「だったら、オレが独りで行く。」


いつでも『爆宴の彷徨者』が使えるからオレが死ぬ事は無い。魔獣に見つかったら『爆宴の彷徨者』で逃げて仕切り直しをすれば何度でもやり直せるんだ。だが、ノブイとジィちゃんはそうはいかない。


「バカ言うな!森の歩き方も知らない小僧が!!オマエ1人で行かせたらボスに辿り着く前に見つかるに決まっているだろう!…オレは後悔していたんだ。オマエの事に気が付いてやれなくて村長の暴走を止める事が出来なかったことを。小さい頃からやんちゃしていたお前を、見殺しにしてしまったことを。」


「領主の命令ですからね。アナタの護衛なんて言って付いて来ていますけど、実のところボスが倒されるのを確認しないと隊長に殺されてしまいます。ガジルちゃんと幸せな家庭を作るためには、ここで逃げるわけにいかないのです。ここまで一緒に来た仲じゃないですか、私に幸せな家庭を作らせてくださいよ。」


オレの目頭が熱くなった。ずっと独りだと思っていたのに。ずっと独りでがんばってきたのに。



なんだよ!良いヤツ等じゃねぇか、チクショウ!!



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オレ達は森を進む。魔獣のクソを塗りたくって。


クセえんだよ!


ジィちゃんの言う事だから聞いているが、狩人のオヤジが提案していたらオレはきっとそのまま帰っていただろう。何でも魔獣は鼻が良いらしくて人間の臭いを感じ取れるらしいんだ。


「なに、森を出る時に浄化の魔法をかければ綺麗になるさ。」


だからってコレは無いと、思うんだが。浄化の魔法をかけ続ければ臭いなだって消せると思うんだ。


「魔獣は魔法にも敏感なのさ。アイツ等は生き物の魔力を食っているんだから魔法を使えば美味しそうなエサにしか見えなくなるぞ。結局、原始的な方法が1番効果があるのさ。」


オレの頭をクソの付いた手で撫で繰り回しながらジィちゃんは言っていた。頭が重たくなるくらいに塗りたくってくれたよ。


だが、効果はてき面だったようで、ハンドサインで合図を送ってくれるジィちゃんに着いて行くと魔獣に襲われずに丘のふもとまで来ることができた。そりゃ、何度か魔獣のすぐ横を通らなきゃならないような危険な場面はあったけどな。


だが、ここからが問題だ。


ボスが居たのだ。日の当たる高くもない開けた丘の山頂に、オレの背丈の倍以上ありそうな魔獣が横になってくつろいでいる。その周りには何十匹もの魔獣たち、ボスより小さいがそれでもオレの背丈より大きい、が(はべ)っている。


「思ったより数が多いな。ヤツのハーレムだけじゃなくて、手下や子供もいるのかも知れない。どちらにせよ、あの中を通らねばボスの場所まで行けないな。」



おいおいおい、オレは無事に魔獣のボスの所まで行けるのかよ?



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