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オレの『意志』はどこ行った!?

--オレの『意志』はどこ行った!?--


あらすじ:お婿に行けないカラダにされちゃった。

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面手(オモテ)を上げよ。」


白い玉砂利の上に『ドゲザ』させられていたオレはゆっくりと頭を上げる。


『ドゲザ』とは魔女にやらされた『セイザ』の姿から、さらに頭を地面にくっつくほど下げさせられる屈辱的な姿勢だ。っていうか、石の上に座らせるなよ!ただでさえ痛い『セイザ』がさらにいてぇじゃないか!


門番の男に街の往来でパンツを見られたら、そのまま街の中をズボンも履かせてもらえずにデカイ屋敷まで引っ張って来られて庭で無理やり『ドゲザ』の姿勢をさせられて待つように言われたのだ。


いや、オレだって抗議しようとしたんだが、声も出せないし手も動かないんだ。


街の中で連れまわされている時だって、奴隷商の大きな荷物を背負った姿勢のままで手が動かせねぇから、大通りに群がる連中の好奇の視線からパンツを隠すことができなくて、薄布に包まれたJrをさらされる事になってしまったんだ。なんで、あの門番はオレのパンツを確認した後にズボンを丁寧に脱がしたんだよ。ワケが解からねぇ!


まぁ、今までの村でも似たような状況だったから特筆することはねぇ。というか、思い出したくねぇ。


オレが玉石の上から頭を上げると、そこには40過ぎくらいの脂ぎった男が椅子に座っていた。豪華な服に宝石を付けて、隣ではメイドが傘で日影を作って団扇(うちわ)で男を(あお)いでやがる。


女に団扇で扇いでもらっているのに男は汗でドロドロだ。荒野と比べると涼しいとはいえ直射日光の当たる庭なので暑いのは判るのだが、男以外のヤツは涼しい顔をしているのだ。なんであんなに汗をかけるんだ?


「オマエが『爆宴の彷徨者』の継承者か?」


脂ぎった男はオレに問いかけて来るが、オレは奴隷商のデブに口と手を封じられたままだから返事が出来ねぇ。


「領主様の御前で有るぞ!返事をせぬか!!」


ゴツン!


返事が出来ずに困っていると、後ろから棒で殴られた。チクショウ!オレは手をドゲザの格好のままで立ち上がって後ろのヤツに殴りかかる!手が動かせなくてもぶん回せば少しくらい打撃になるだろう。


ブン!スカッ!ゴツン!


だが、オレの手はむなしく空を切った。


後ろから棒で殴った男が目の端に移ったのだが鎧を着ていたから、おそらく訓練をした兵士なのだろう。オレの空振りした腕をかいくぐって1週まわったオレの頭を玉砂利に押しつぶすように投げつける。そのまま男に乱暴に取り押さえられて元の『ドゲザ』の姿勢に戻ることになってしまった。チクショウ!


「まぁ、これから協力をしてもらおうという相手だ。多少の無礼は構わないさ。」


脂ぎった男が、1連の動作が終わった後にゆっくりと言った。頭に血が上って聞き逃しそうになっていたが、この男は領主と呼ばれていたよな?この街で…というかこの辺りで1番偉いヤツって事か?村長より偉いヤツだ。


というか、人に協力を求めるのに庭で『ドゲザ』の格好で待たせるのってどうよ?普通は応接室とかでお茶とお菓子でもてなして待たせるんじゃないのかよ?


オレの村でだって水くらいは出すぞ?


「部下が乱暴で済まんな。とは言え、オマエもいきなり手を出す事は無いではないか。」


いや、先に手を出してきたのはオマエの部下だろう!?オレはヤられたからヤり返しただけなんだぞ!とはいえ、口がきけないのだから言いたいことも伝えられねぇ…。こんな時こそオトコのタマシイで編まれたパンツが喋ってくれれば良いのだが…。


じっとパンツを見てしまった。


「なんじゃ?股間がどうかしたのか?」


領主がオレの股間を見てくる。いや、そうじゃない!オマエが覗き込んできてどうするんだ?パンツに喋ってもらいたくてアイコンタクトを取っているんだ!


「いやさ、オレはあんまり喋る気が無いんだよな。」


「おお、パンツから声が聞こえたぞ!面妖なパンツじゃ!!」


オレのアイコンタクトが通じたのか、パンツから再び声が聞こえた。


「コイツの背中に奴隷の焼き印が押されていて喋れねぇんだ。どうにかしてやってくれよ。」


「そうなのか?」


「なに?まだ封印解除がなされていなかったのか!」


鎧を着た男が驚いているが封印を解いた状態で対面する予定だったらしい。それくらい領主が来る前に確認しておけよ。


「まあ、面白いからパンツのお前が答えてくれればいい。今、我が領では未曽有の危機にさらされている。それを『爆宴の彷徨者』を使って解決して欲しいのだ。」


いや、領主もオレの意見を無視するんじゃねぇ!


「内容次第だな。」


いやいやいや、何でパンツが普通に答えているんだ?『爆宴の彷徨者』はオレの『ギフト』なんだから、オレの意志が尊重されなきゃダメなんじゃないか?


「数百年に1度起こるという森の大氾濫が北の方で起こっている。山裾の村を飲み込んでいずれこの領都にも魔獣の群れが押し寄せてくるだろう。そうなれば街は混乱し、多くの犠牲者が出てしまう。」


「なるほど。」


パンツから神妙な声が聞こえるが、オレの話も聞いて欲しい。


「オマエの活躍は村長からの書状で聞き及んでいる。村を救い行方不明になっている事は知っていたが、ここに現れたのは、きっと運命の導きなのであろう。魔獣の群れを薙ぎ払ってきてはくれないだろうか?」


「難しい話だな。」


「なぜだ!?(いにしえ)の『爆宴の彷徨者』の英雄は1人で魔獣の群れを全滅させたのではないのか!?」


「あの頃とは状況が違う。アイツは『爆宴の彷徨者』を使わなくても強かったし、『リスポーンのマクラ』が有ったから同じ場所に復帰することができた。だが今のコイツは逃げ足はともかく、戦力としての価値は全くない。」


「『リスポーンのマクラ』とな?」


「そのマクラを使って『爆宴の彷徨者』を使うと、マクラの場所に戻ることができるのだ。英雄と呼ばれるアイツは死にそうになると『爆宴の彷徨者』を使って街に戻り態勢を整えて再び戦いに出る事が出来たが、今のコイツが『爆宴の彷徨者』を使えばランダムな場所で目覚める事になってしまって、街に戻って来るだけで何日もかかってしまうだろう。1度や2度の爆発で収まるほど森の氾濫は甘くはない。」


「で、ではその『リスポーンのマクラ』が有れば街を、みんなを助けてくれるのか!?」


「このへなちょこには無理な話だな。」


「な、ソレではワシはこの先誰から税金を吸い上げれば良いんだ!?街の者がいなくなったら、ワシが贅沢できなくなるではないか!?12人の妻たちがワシを見捨てて逃げてしまうじゃないか!!!」


いや、多いな。オレに1人分けてくれないだろうか?いや、やっぱり中古品より新しい娘の方が良いか…。


「くっ、妻のためか。ならば話は変わる。」


今の話のどこに話が変わる要素があったんだ!?


「森の氾濫の影には群れのボスとなる1匹の魔獣が居るハズだ。そのボスを倒せば魔獣は散り散りになり街を襲う事は無くなるだろう。時間が出来てから1匹づつ倒していけば良いのだ。」


「なるほど、ならばワシはオヌシがボスを倒している間に『リスポーンのマクラ』を探すとしよう。」


「そうだ、そうすれば残党の魔獣狩りもコイツが何とかしてくれるだろう。」



いやいやいや、オレはやるって言ってねぇからな!


オレの意志を無視して勝手に決めてんじゃねぇ!!!


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