『奴隷商』捕まる。ザマァみろ!
--『奴隷商』捕まる。ザマァみろ!--
あらすじ:逃げられないと諦めていたオレの側から声がした。
------------------------------
「なぁ、門番さんよ。奴隷の焼き印ってのは、あのデブが使っても問題ないモノなのか?」
「ちょっと待て!おい!オッサン!馬車を止めろ!!」
オレの側から聞こえたのんびりとした声に、門の付近がにわかに騒ぎだした。
「これは、これは、いかがいたしましたか?」
門を通り過ぎた馬車の先頭から、慌てたそぶりを隠すように奴隷商のデブがゆっくりとした声をだして戻ってきた。
「なぁ、オマエの所は向こうの国の奴隷を譲ってもらって来てるんだよな?」
「ええ、そうでございます。」
「そこのガキが、オマエが奴隷の焼き印を使っていたと言っていたが、本当か?」
そう言って門番はオレの事を指さすが、オレは奴隷の焼き印で口を封じられているのだから喋れるワケがねぇ。
「まさか、滅相もございません。この国の法に触れるような大それたことをする訳がありませんよ。」
やっぱり、この男が奴隷の焼き印を使う事は違法みたいだ。ならなおさら逃げ出すチャンスだ。誰が門番に尋ねたのか知らねぇが、もうひとつ騒ぎを大きくして欲しいモンだ。
「なぁ、そこのガキにいくつか質問したいのだが構わないだろう?」
「いえ、あの子は向こうの国で嘘やでたらめを吹聴して周った罪で口を封じられているんです。ここでも、どんな嘘を吐くか解ったモノじゃないですし、封印を解くことはできませんよ。」
「オマエの所の奴隷は静かすぎる。なぁ、ちょっとだけで良いんだよ。どうやって奴隷になったか本人の口から聞きたいんだ。」
「ダメですよ。私の所の奴隷が静かなのは奴隷に良い待遇を与えているからですって。」
門番の質問をデブが必死に誤魔化している。メシも粗悪なものしかもらえず、寝る時に掛布1枚もらえねぇのに良い待遇だとは聞いてあきれる。オレの着ているボロボロの服を見たら、どう考えたって待遇が良さそうに見えないだろう。
「なぁ、その前にオレの質問に答えてもらってもいいか?」
また、のんびりした声が響いた。凄く近くで聞こえるし、いや、どこかで聞き覚えがある声なんだが思い出せない。
「な!オマエ、封印は?」
「なんだ?口を封印されていたんじゃ無いのか?」
デブと門番がオレに向かって聞いてくるので、封印された口をパクパクさせて喋れないことをアピールしてから首を振ってやった。他に方法は無いよな。
「いや、オレが喋っているんだ。」
また、声が聞こえた。
不思議に思って、ぐるっと一周まわってみたが、他の奴隷たちは巻き込まれるのを嫌ってか、みんなが逃げてしまっていてオレの周りには誰もいねぇ。
「ここだ。ここ。オレだってばよ。」
良く聞けば声は下の方からする。
嫌な予感がした。いや断言できる。嫌な予感しかしねぇ。声の主が判ってしまった。オレが股間を見下ろすと、デブと門番の視線もオレの股間に集中する。
「なぁ、奴隷の焼き印を使うとどういった罰が与えられるんだ?」
オレの股間から声がする。間違いなくヤツだ。
オレの股間に居座って脱げなくなってしまった女物のシミの付いたパンツだ。
一度だけ声を聞いた事がある。魔女のどさくさに紛れての一言だったからすっかり忘れてしまっていたが、このパンツはオトコのタマシイで編まれていて、声を出すことができるんだ。
って、今は普通に喋るのかよ!?
周りに人が居る場所ではまずいだろ。デブと門番だけじゃねぇ、周りにいた奴隷たちまでオレの股間に視線を集中させてしまうじゃないか!Jrがびっくりして、おっきしたらどうするんだ!
「そ、そうだな。死刑。あるいは犯罪奴隷に落とされるかな。ところで、キミはどこにいるのかね?」
門番はしゃがみ込んでオレの股間に顔を近づけて質問をしてくる。顔が近いって!息がかかるだろう!!いやまぁ、オレの股間を注視しながら返事をするなんて考えてもいないだろうな。パンツが喋るだなんて考えたくもねぇ。
「おう、オレはこの男のパンツをやっている。ヨロシク。んじゃ、あのデブを捕まえてくれよ。コイツの背中に大きな奴隷印が押してあるし、4台目の馬車の底に焼き印が隠してあるから、一致するハズだ。」
オレのパンツはいたって気楽そうに返事をする。
「お、おう。おい、その男を拘束しろ!馬車も奴隷も全部差し押さえろ!違法な手段で連れてこられた人かも知れんから、奴隷でも丁重に扱えよ!」
みるみるうちに門番の仲間があつまって馬車ごとデブが拘束されて、奴隷が連れていかれる。
た、助かったのかもしれない。
できれば喋って欲しくはなかった。オトコのタマシイがオレのJrを包んでいるなんて思い出したくも無かった。だが、奴隷から解放されそうなのは事実だ。いつの間にか、変な空気になっている門番とオレを残して誰も居なくなっていた。
門番の顔はまだ、オレの股間の前にある。マジで息がかかる距離なのだ。
「ところで、キミのパンツを見てみたいのだが?」
長い逡巡の後、門番の男が言った。
何を言っているんだ!?男のためにズボンを脱いでパンツを見せる趣味なんてオレにはねぇぞ!と、言いたいのだが、奴隷商のデブは封印を解かずにつれていかれてしまたから、オレはまだ喋る事ができない。
「ん、良いんじゃないか。コイツは手も封印されているから、オマエがズボンを下ろしてくれよ。」
いやいやいや、何を勝手に言っているんだ!?男にズボンを下ろしてもらうなんてありえないだろう!?
「あ、あ、ああ。公務だからな。仕方ないよな。ああ、公務だ。」
いや、公務でもなんでもここは人が通る門なんだぞ!奴隷商のデブは居なくなったが、門を通って街に出たり入ったりするヤツ等が見ているんだぞ。門番がオレの股間を凝視して奇妙な雰囲気になっているから、オレと門番の周りだけ避けられているんだよ!
考え直せ!ここで男のズボンを脱がしている所を視られたら、オマエも一生言われるんだぞ?『往来の真ん中で抵抗できない男のズボンを下ろした男』のレッテルを貼られるんだぞ!!
ほら、あっちの男も目を丸くしてみているし、あそこのオバちゃんはニヤニヤして見ているんだ!あのオバちゃんの手にかかれば明日には尾ひれ背びれに胸ひれまで付いて町中の噂になっているに違いないんだ!門番のオトコが奴隷のオトコと門の前でランデブーしていた事になりかねないぞ!
やめろ!!!!
心の中で叫ぶが、封印された口から声が出る事は無い。
門番の男がゴクリと唾をのむ。
いや、そういうのは良いから!
せめてもの抵抗で後ろに下がるが、門番の目が血走っていて逃げたら何をされるか判らねぇ。じりじりと近づいてくる男を前に、ゆっくりとしか後ずされねぇ。オレの後ろで門を通る人たちの列が割れていく。
がしっ。
誰かが後ずさるオレの肩が背後から捕んで、門番の男の指がオレのズボンにかかる。
いや!やめろよ!せめてどこか人気のない所にしてくれ!
ゆっくりと、男の指がオレのズボンを下ろしていく。
男の荒い鼻息がオレの腹をくすぐる。
「こ、これは!」
オレの下半身のパンツ1枚の無防備な姿が、門番の手によって衆目に晒されてしまった。
------------------------------
次回:オレの『意志』はどこ行った!?




