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『岩場』に行けば貝が食えるんじゃないか?


--『岩場』に行けば貝が食えるんじゃないか?--


あらすじ:魔女はステーキを食べるそうだ。

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熱い。熱い。熱い。


「うわぁっつっつっつ!!!」


背中の焼けるような熱さにオレはがばっと跳ね起きた。って、次は足が熱い!まるで焼けた鉄板の上に乗っているようだ。


「水!!水!!」


目の前に海が広がる。


「水!水!!」


勢いよく海に走り込む。


ざっぱーん!


「いてぇ!!」


海の水に飛び込んだ瞬間。全身を、まるで傷口に塩を塗り込んだかのような痛みが走る。慌てて波に足を捕られながら砂浜に戻るが、砂浜は焼けたように熱かった。


「あちぃ!あっつい!あっつえ!!」


砂浜は人間が歩けないほどに熱いじゃないか!かといって、海に入ったらもっと痛かった。どこか安全な場所は無いか?昨日登った木が見える。あれだ!あの木に登れば砂を踏まなくて済む!


飛びつくように急いで木に登ろうと抱きつくと、繊維質な木の肌がオレの体に突き刺さる!


「いてぇ!!」


たまらず、手を離すと木から転げ落ちて尻もちをついてしまった。


だが、木陰はは安全なようだ。体はまだヒリヒリするが、耐えられない痛みじゃない。木の影になっていて根元が薄く緑で覆われている。


とにかく、浄化の魔法と治癒の魔法をかけよう。浄化の魔法をかけ忘れると土が肌に食い込むことがあるって言うからな。治癒の魔法をかける前には絶対に浄化の魔法を忘れちゃだめだ。


何が起こったか確認しようと木陰から手を差し出すと、太陽の強い光がオレの手を焼いて行く。なるほど、太陽の熱でオレのパンツ1枚の体が焼けていたって事か。


海の水には塩が混じっていると聞いた。焼けて赤くなった肌に塩水をかければ痛いよな。そして木の肌に触れた時も日に焼けて真っ赤になって敏感になったオレの肌に剛毛な木の繊維が突き刺さって痛かったんだろう。


試しに、砂浜の砂に指を伸ばすと、白い見た目とは裏腹に肉が焼けそうなくらい熱い。なんだここは?昨日はひんやりと気持ちが良いくらいだった砂浜が太陽に焼けて燃えるように熱い。


チクショウ。砂浜で寝たらダメなんだな。


やっとの事で寝起きの事態を理解するが、かと言って緑が生えている場所で寝ると森の時のように虫にやられる恐れがある。何か、良い手は無いだろうか?


ぐぅ~。


また、腹が鳴る。結局、昨晩遅くまで木の実を叩き続けてみたが、繊維質ばかりで美味いと言われていた実の中身なんて無かった。


ひたすら叩き続けて硬い繊維を削ったのに、食えそうな部分は全く無かったのだ。


いや、まだだ。海では豊富に大きな魚が獲れるはずだ。海を探せば行商人が持っていたような子供の背丈ほどもある干し魚が食えるじゃないか。


危険な砂浜は見渡す限り何も無さそうだが、遠くに岩が固まった場所がある。川魚だって岩の影に隠れるヤツがいるんだから、ああいう場所の方が取れるんじゃないのだろうか?


すきっ腹を抱えて砂浜を避けるようにして岩場に向かう。昨日のひたすら木の実を打ち付けて徒労(とろう)に終わった事と、朝に目を覚ましただけで起きる疲労にすでにクタクタで、目の前がクラクラする。さっさと何かを食いたい。


昨晩は限界まで木の実で殴り続けて無駄な時間を過ごしてしまい、疲れ果てた肌に砂浜が冷たくて気持ちよくて寝てしまった。太陽は(あお)ぎ見なければならないほど上に有るから、この浜にリスポーンしてきてから半日以上が過ぎているようだ。


しばらくまともなモノを口にしていねぇ。また、魔法の水だけで過ごすなんてイヤだ。


いくら腹減りが解消できるとは言え『爆宴の彷徨者』を使うのは最後の手段だ。


物を食べるってのはそれだけで娯楽なんだよ。


街に出ても森に出てもロクな目に遭わなかったじゃないか。その上、今は魔女の呪いのような首輪もある。街に出て隠れまわっても、あの魔女様の事だ、オレがパンツ一枚で走り回る姿を見たいからという理由だけで声を上げるかもしれない。


気分を害したという理由だけで、どう猛な魔獣の前で声を出すかもしれない。チクショウ。逃げても隠れても魔女の気分次第でオレの命は危険にさらされる。


どこに有るか解らないリスポーンのマクラを探すか、孤独に生きていくかを天秤にかければ、孤独に生きていたって良いかも知れない。どうせ、オレの所に嫁が来てくれるなんて夢物語だったんだ。


いや、オレだって可愛くて若くて優しい嫁が欲しかった。今のオレにへばりついているのは、呪いのような女物のパンツの男と忌々しい魔女の首輪だ。


いや、考えるのはよそう、このパンツが男のタマシイでできているなんて考えたら、Jrを大きくすることもできない。小さくするのも負けた気がするからしたくないが。


沈黙を保ったままのパンツを見つめても返事はない。



だんだんと暗くなる思考とはうらはらに、だんだんと岩場が近づいてくる。


海の岩場と言うのは川の岩場と違って、波しぶきが大きくあがる。岩の周りに白い泡が立っている。ときおりオレの背を越えるような波が寄せているから注意をしなければならない。


行商人は岩に貝がへばりついていると言っていた。アイツが持っていたのはカチカチに乾燥させたものだったが、魚を捕れるとも限らないので岩場を探すついでに一緒に探してみようか。村の川に居たネレみたいな巻貝とは違うらしいが、岩にくっついているモノを探せばいいんじゃないかな。


波が打ち付ける岩をおっかなびっくり跳んでいくといくつか海水が溜まっている場所がある。小さな小魚が泳いでいたり、沢蟹みたいなヤツが走って行ったり、巻貝から脚を出している虫見たいなヤツが居る。


なかなか生き物が豊富だが、食いでが有りそうなヤツが居ない。


パンツ1枚だけで鍋なんて無いのだから、出来れば木に刺して焼けるくらいの大きさのヤツが欲しい。


そう思って岩場を進んでいくと、大きな魚が3匹も泳いでいる大きな潮だまりがあった。村の川で釣りをしたってこんなに大物は滅多に見かけねぇ。


コレを捕まえれば3日は腹いっぱい食えるに違いない。海の魚なんて行商人の持ってくる干からびたものしか見た事も無いし、何より高くて食ったことは無いから楽しみだ。


潮だまりになっているから、逃げられる心配もないから、じっくりと作戦を練る事も出来る。まぁ、釣りの道具なんて無いからな。



やれる方法は限られているんだ。



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次回:『魚』ぶぜいがオレから逃げられると思うなよ!


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