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『木の実』でも良いから食いたいんだよ!

--『木の実』でも良いから食いたいんだよ!--


あらすじ:オレの未来は明るいぜ。

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「そろそろ、眠たくなったわ。今日の夕食はテテのステーキしか残って無いのよね。また、明日ね、オモラシ君。」


魔女がそう言う頃には日はとっぷり暮れて、空には満天の星が輝いていた。オレだって腹が減っているのにステーキしか食えないとか贅沢な事を言いやがて。オレがまったく食料を持っていないのを知っていてワザと言っているに違いない。チクショウ。


「痛てぇ~!!」


魔女と話している間ずっと『セイザ』を強いられていたオレの足は、長い事感覚がマヒしていたにもかかわらず、動かすとスタンの魔法でもかけられたように一歩も動けなかった。


座っている間しびれさせるだけじゃない、恐ろしい魔女の遅延攻撃にオレは砂浜を転げまわってしまったが、マクラと言う夢のアイテムを思い出せば自然と口元がほころんでいく。


マクラさえあれば、どこにリスポーンするか解らなくて使えなかった『爆宴の彷徨者』が使い放題だ。


つまり、オレは最強になれるのだ!


傷つけられても毒を盛られても『爆宴の彷徨者』さえ使えれば、オレは相手にダメージを与えたうえで、安全な場所に逃げられる。それも空腹さえ消えると言う万全な体に戻ってだ。


「ふふふ。ははは、ふはーはっはっは!」


「オモラシ君うるさい。」


「ア、ハイ。」


「お姉様が足りないんじゃない?」


「ごめんなさい。お姉様。」


魔女の言葉に凍り付く。居なくなったと思ったのに、まだ聞いてやがった。これから魔女の見ていない間に自家発電しておこうと思ったのだが、いつ覗かれているか解らないと怖い物がある。


あの魔女の事だ、終わった後に声をかけてきてオカズについて尋ねてきたり、爆発する直前に声をかけてきて一気に醒めさせるなんて事を平気でしてくるかもしれない。


あの魔女を殺さないと自由にナニもできない。


崖の上から大空に向かって自由にションベンをする事すらできないのだ!


まぁ、今日のところは、やっと手足という小さな自由を得たのだから、魔女のようにステーキとは言わないがメシが喰いたい。考えてみれば、村を追い出されてからロクなモノを口にしていない。


星のおかげで明るいとはいえ、夜の海は恐ろしい場所だと聞くし、さっきからザブザブ言っている波も怖いので、地上で食い物を探そう。


星明りを頼りに砂浜から緑の生える場所まで行き、海岸沿いに歩くと大きな木が生えていた。変わった木で1本の太い樹の先端にだけ葉が茂っている。その大きな葉の根元にこれまた、オレの頭ほどもありそうな大きな実が生っている。


行商人のオヤジがラッルと言っていた実じゃ無いだろうか。だとしたら硬い皮に囲まれてはいるが、中の実が喰えるに違いない。


あれだけ大きな実ならば、もしかしたら1つ取れば1日分の食料になるだろう。それが3つも生っている。


足が掛けられる枝が少ないとはいえ木登りは得意だから、あの程度ならば問題ない。村のヤツに脅されながら家の倍もあるサッキの木に登らされたことを考えれば簡単なことだ。


ラッルの実が生っている木の肌は、獣のように長い毛が生えている。ちょっとばかり滑りやすくて苦労するが、オレは難なく登って行った。


木のてっぺんにしか実が生らないのは不便だが、オレにかかれば簡単なもんだ。近くで見るラッルの実は思った以上に大きかったが、大きい分には問題がない。くるくるとねじると簡単に切る事も出来た。


くく、これなら魔女の事を放っておいて、ここで暮らすと言うのも悪くはないかも知れない。


似たような木はいっぱい生えていたから食い物に困る事は無いだろうし、人間の痕跡を今まで見ていない。それに、これだけ大きな実が生っていても誰も採りに来ていないのもその証拠だろう。なら、魔女に見られることを考えなければ、ここは楽園かも知れない。


いや、女1人に見られるくらい快感に変えても良いんじゃないか?


魔女のヤツも言いふらす相手が居なければ、オレに屈辱を味合わせるなんて出来ないからな。


まぁ、今はコイツを食ってさっさと寝よう。


残りの実も()じり落して滑るように木を降りる。着地には失敗したが、なに、少し練習すればすぐに上手くなるさ。それに、この実が喰えればここは楽園になるかもしれない。


オレの事をバカにするヤツも奴隷扱いする奴もいない木にさえ登れればメシが喰える楽園に。


行商人の話だと、こいつをとがった石にたたきつけて、周りの分厚い皮を破いてやれば中には甘い汁と、上手い果肉が手に入るという事だった。星明りの中、大きめの角張った岩がの影が見える。丁度良い。


天はオレに味方している。


手に入れたラッルの実を岩に叩きつける!叩きつける!叩きつける!


フン。中々硬いが、表面が少し破れてきたぞ。中の太い繊維質な皮がちぎれて方々に散らかっている。こいつを(むし)って更に叩きつける!叩きつける!叩きつける!


ハァハァハァ。


指が入るほどの穴になってきたぞ。そろそろ、中の果肉が見えてきても良いんじゃないか?魔法の水を飲むのはガマンしておこう。中に甘い果汁が入っているって話だ。(のど)(かわ)けば渇くほど、中の汁は更に美味くなるはずだ。


ラッルの実を岩に叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!


狂ったように叩きつける!

おかしい。すでに実の中心を越えてしまったが何も出てこない。


中には甘い果汁どころか、果肉すら入っていないじゃないか!


この実は失敗だったのか?



まぁ、良い。木の実はまだ2つもある。



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次回:『岩場』に行けば貝が食えるんじゃないか?



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