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英雄の2つ目の『愛用品』

--英雄の2つ目の『愛用品』--


あらすじ:お姉様は魔女だった。

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まずい、まずい、まずい。


本物の狂想の魔女だとすれば殺されてしまう。いや、今までの(もてあそ)び方からすれば死んで終わりなんて生ぬるい事で終わるワケが無い。


今までも、ひたすら昂らせて放置して、希望を見せつけては簡単に辿り着けなくされている。いつまでも魔女の手の平で踊っているじゃないか。このまま魔女に取り付かれていたら、今度は畑の時よりも、砂浜の時よりも恐ろしい目にあわされてしまう。


いったい、これ以上の苦痛と屈辱が有るのだろうか?いや、絶対にあの魔女なら何かをしてくるはず!


「それでね、最初に言った通りオモラシ君にお願いがあるのよ。」


どうやって、この魔女の魔の手から逃げ出すことが出来るのか?いや逃げ出せるのか?


「英雄の愛用品を取ってきて欲しいってお願いがね。」


そうだ!孤独な英雄が大事にしていたモノなら、オレの役に立つかもしれない。同じ境遇だった英雄が必要としていた物なら、オレにも必要かもしれない。


「ど、どのように素晴らしい物でございますか?お美しいお姉様。」


体が震えてしまうが、できる限り丁寧な声を出して()びを売るほかあるまい。今は誰も見ていないし、自由を得るためならなんだってしてやる。


「気持ち悪いわ。変態君。」


一発でダメ出しを食らった。とにかく魔女の機嫌を取らなければならない。体の震えを止めるんだ。


「どこかに保管されているのでしょうか?お姉様」


気持ち悪いと言われれば、できるだけ少ない単語で怒りを買いそうな点を減らしていくしかない。愛用品はオレにとって有用だろうから、魔女と話が出来るうちに情報だけでも聞き出しておきたい。


「そうね、場所も判らないから探すところから始めてもらいたいけど、当の本人であるオモラシ君なら見つけられるかも知れないでしょ?」


そうだ、このパンツだってオレが『爆宴の彷徨者』の保有者だからジジイがくれたものだ。他の一般人よりは英雄の愛用品も受け取りやすいのかも知れない。


「品物が解らなければ、探しようが無いのですが。お姉様。」


英雄のパンツが有ったのだ。英雄の愛用品が1つだけとも考えにくい。できれば、他の男物の衣類や、この呪われたパンツを切ることが出来るハサミなんかが有れば嬉しいのだが。魔女の答えは無情だった。


「マクラよ。」


「マクラ、でございますか?お姉様。」


マクラとは思わなかった。英雄の寝汗とヨダレで汚れたマクラとかだろうか?だとしたらそんなものを欲しがる魔女も趣味が悪い。


「リスポーンのマクラ。1度そのマクラで寝れば、次に『爆宴の彷徨者』を使った時にそのマクラの場所にリスポーン、つまりマクラからスタートするようになるらしいわ。」


なるほど便利だ。今まではどこにリスポーンするのか解らないからリスポーンのたびにパンツ1枚で走り回らなければならないが、リスポーンする場所が解っていればマクラのある場所に衣類を置いておくことが出来る。


つまり、マクラを安全な場所に置いておけば、衣類のある回数だけ『爆宴の彷徨者』が逃げ回らずに使えるという事じゃないか。


オレにとっては是非欲しい逸品だ。他の何よりも優先して手に入れたい。


「お姉様は、そのマクラをどのようにお使いになられるのですか?お姉様。」


オレにとっては喉から手が出るほど欲しいものだが、魔女はなぜ手に入れたいのだろうか?それによっては横から(うば)われる可能性もある。


「私の操り人形にだってリスポーンさせられる物が有るのよ。それに、そのマクラには転移の魔法陣が組み込まれていると思うの。それを一度見てみたいのよ。」


リスポーンと言う言葉は聞きなれないモノたが、魔女の人形がその機能を持っていると言われると妙に納得できてしまう。


だが、魔女に転移の魔法陣を見せてしまっても良い物だろうか?今この場に居ないから安心して媚びを売れるが、狂想の魔女がオレの横にいつ転移して来るか解らない状況は怖くて仕方がない。


「お姉様が転移の魔法を使えるようになるのですか?お姉様?」


狂想の魔女が転移を覚えてしまったら、オレどころか世界中が恐怖するだろう。


「今だって条件がそろえば転移出来るわよ。なんなら、今からオモラシ君の隣に行ってあげようか?ふふん。」


「いえ、とんでもないです!お姉様の手を煩わせるようなそんな事はしなくて良いです!!」


振り向いたら魔女が居るなんて、恐怖以外の何物でもない。オレは大慌てで拒絶する。


「うふふ。冗談よ。そんなに上手くできないのよ。だから魔法陣を見てみたいの。」


声しか聞こえないのに心臓に悪い。だが、魔女がオレの居る場所に簡単に転移できないという話は朗報だ。マクラさえ手に入れれば、安全に魔女を倒せるかもしれない。このままでは自由に自家発電もできないしな。


「魔法陣をお見せしたら私めが使ってもよろしいのですか?お姉様。」


魔女を倒したいと言う本心を気取られないように、恐る恐る尋ねる。


「いいわよ、見てしまえばいくらでも複製が作れるし、他人が使ったマクラなんて興味はないもの。」


くっ、そうか。オレが連想した通りマクラが寝汗やヨダレで汚れているかも知れない。英雄が浄化の魔法で清潔を保っているようなヤツなら、パンツにシミが付いているのだっておかしいんだ。


「あの、できれば私にも新しいマクラを作っていただければ嬉しいのですが。お姉様」


オレだって他人の汚いマクラで寝たくはない。


「ん~、それはオモラシ君の働き次第で考えてあげるわ。」


よし!よし!よし!それさえ手に入れば安全に魔女をヤれる。オレは自由になれるんだ!


魔女を殺したら、村の全滅させるのも良いだろう。オレの未来は明るいぜっ。



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次回:『木の実』でも良いから食いたいんだよ。




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