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腹が減ったので『木の実』を食べよう

--腹が減ったので『木の実』を食べよう--


あらすじ:ツタを採ろうとしたらネレヒルが落ちてきた。

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焼いた木の枝を駆使(くし)してネレヒルを撃退してツタを取るのにしばらくかかったが、何とか全滅させることができた。もう、落ちてこないことを祈るだけだ。


靴の代わりに足をツタをぐるぐる巻きにしただけだと隙間から木の枝が刺さるってきて足の裏を攻撃してくるので、上手い事はがれてくれた樹皮を足の裏に敷いてある。


森を歩きたいと思うだけで、手間がかかりすぎなんだよ!


やっと、オレの冒険が始まる。


いや、始める気は無いけどよ。


オレとしては、森が狩人を寄越すまで生活しやすい環境を作れればいいのだ。わざわざ方角も解らないような森の中をさ迷い歩き続けようなんてまったく思っていないぜ。動き回らずに狩人が来るのを待っていれば良いんだ。


とにかく腹が減ってきた。ツタを数本取るだけで大騒ぎしたからな。牢屋の中ほどじゃないが、そろそろ何か食いたくなってきた。


結局、村を追い出されてから魔法で出した水しか飲んでいないしな。


後は安全に休める場所が欲しい。森の腐葉土には気持ち悪い虫が住み着いているし、いつまたネレヒルが落ちて来るとも限らない。森が狩人を寄越すにしても、それを待つ間に安心して休める場所が欲しい。


まぁ、さっさと狩人が来てくれれば良いのだけど。森が狩人に教えるための場所?待ち合わせ場所みたいなものが有った方が狩人も楽だろうから食い物のついでに探そう。



でだ、食べ物を探してかなり歩いたんだが、知っている木の実や野草が無い、獣道を歩いていても喰えそうな動物はおろか、魔獣にだって出会いやしねぇ。


動物や魔獣が飲むはずの水場だって見つからねぇ。


狩人のヤツらは簡単に見つけてくるって言うのに。やっぱり『ギフト』が無いと見つからないものなのか?


『爆宴の彷徨者』で森に来てから治まっていた腹の虫が、また騒ぎ始めてきやがる。


ここで、もう一度『爆宴の彷徨者』を使っても良いのだが、また街中で倒れてしまっても困る。今度は女に見つからずに、直接、衛兵に牢屋に連行されているかも知れないしな。


それに、『爆宴の彷徨者』を使うと、またパンツ1枚から始めなければならない。今ならパンツ1枚を腰ミノで隠せば狩人から衣服を貰えるかもしれないし、作ったばかりの靴も…、良いできじゃないが、ももったいない。


魔法で水を出して飲み物を確保できるのは良いのだが、そろそろ日が暮れるので安心して休める場所はどうしても見つけたい。


その辺の草でも食べてしまおうかとも思ってしまうのだが、どうしても勇気が出せない。どうせ、浄化の魔法で毒なんて無効化できるのは知っているのだから食ってみれば良いのだ。


しかし、万が一ってヤツがある。浄化の魔法が効かなかったり、一瞬で死んでしまうような毒が有ったなんて話を聞いたことがあるし、木の実に巣食っていた虫に体の中から食い破られたって言う恐ろしい話を聞いたことがあると、知らない木の実を生のまま食べる気がしない。


火の魔法が有るから焼く事は出来るが、木の実はともかく野草なんて火に掛けたら燃えてしまいそうだから、鍋くらい欲しいものだ。


歩いていると、初めて見る真っ赤な木の実を見つけた。10個ほど生っているからこれを食えば腹も膨れるだろう。


(こぶし)ほどある中々食いでが有りそうな大きさで美味そうに見えるのだが、虫が巣食った木の実の話を思い出してしまっているので、そのまま口にする勇気は出ない。


だが、そろそろ何か腹に入れたい。考えてみれば、ずっと魔法の水しか口にしていない。


どうするか?


フライパンどころか鍋だって無いぜ。とりあえず火で(あぶ)ってみるか。


焚き火を点けても良いが、焚き木を集めるのも面倒だし、この腐葉土の上で火を起こして森に燃え移ったらオレの逃げ場がない。魔力の残りが気になるところだが、そのまま枝にでも刺して魔法の火で炙ってみよう。


赤い実をひとつもぎ取ると、簡単に取れた。上手い具合に熟しているのかも知れない。


手近な枝を折って突き刺そうとすると、赤い木の実が牙をむいて襲ってきた。


露出した肩口に食いつかれる!


チクショウ!こんな木の実なんて聞いたことが無いぞ!


急いで振り払うと、今度は木に生っているように見えた10個が牙を剥いて枝がゆさゆさと揺れてきている。枝をしならせてこちらに飛び掛かって来る気だ。


チクショウ!とにかく逃げるぞ!


いまきた獣道を走り出すと、目の前には黄色やら緑やらの木の実が枝を揺さぶっているのが見えた。まさか、これが全て牙を持った木の実じゃ無いよな?1個だけでも肩が食いちぎられてしまったんだ。こんな数に襲われたらあっという間に骨になってしまう。


とにかく逃げなきゃならない。とにかく走るんだ!


獣道は細くて足場も悪くて走りにくい。木の枝をしならせた木の実がオレの頬をかすめて行く。


危ない。もう少しで食いつかれてしまう。


次の木の実はオレの耳の先をちぎっていく。


走れなくなれば、こいつらが一斉に襲ってくるかもしれない。


森の中で獣も魔獣も見当たらなかったのはこいつらが喰いつくしたせいか?


もしかして、骨まで食い尽くすんじゃないのか?


畑の肥料に骨を撒くことがあるものな。聖女様の教えだっけか、だとすれば木の実のコイツらもオレの骨までしゃぶりつくすんじゃないだろうか?


チクショウ!


ただひたすらに走り続ける。転んでしまえば食いつかれる。


一目散に逃げると、今度は広い空き地に出た。


いや、(うね)が作ってある。これは畑か?何にせよ、木の実の付いた枝が無くなっている。少し休むことが出来そうだ。


食われた肩口を浄化して治癒の魔法をかけると一息つくことができた。


森を切り開いて畑を作ってあるようだが、家のような物は見当たらない。


「おーい!誰かいるか!?」


返事はない。まぁ、人影も見えないから当たり前か。


ぐぅぅぅ~。


腹が鳴る。


人が育てている物なら食えるだろう。誰も居ないし後から謝れば少しくらい食ったってかまわないだろう。ちょうどそこにナサルのような物が生えている。菜っ葉を湯がいても喰えるが、根っこの方がまるまると太っていて美味そうだ。


1本引っこ抜くと、水の魔法で土を洗い流して浄化の魔法でキレイにして、かじりつく。


美味い!


いつもは煮込まなきゃ(にが)みがある野菜だが、出来が良いのか野菜の甘みが口の中に広がる。出来が良いと生でも食えるって言うのは本当の事なんだな。


次いで2口3口と噛り付く。


ガツガツと食っていると、いつの間にか、まぶたが重くなってきた。


マズイ。眠たさなんてものは感じていなかったのに、意識が朦朧(もうろう)としてきた。


せめて、火を()いて獣除けをしなければ…。


ナサルに噛り付きながらオレは前のめりに倒れてしまった。



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次回:森の奥の『女』なんて怪しいだろ。



明日は予定を変えて閑話を入れようと思います。

三章の前に入れる予定なので、ややこしいですが、よろしくお願いします。

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