とりあえず『靴』が欲しい。
--とりあえず『靴』が欲しい。--
あらすじ:不気味な森にいた。
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オレのJrがこそばゆい。
がばっと跳ね起きると、Jrの上を虫が歩いていやがった。チクショウ。さっきと同じじゃないか!しかも今度は直接上を歩いて居やがる。大慌てで飛びあがろうとするが、膝に絡まったパンツで上手く身動が取れずに転んでしまった。
くぅぅ。踏んだり蹴ったりだ!
あわてて水の魔法で虫を払い落として浄化と治癒の魔法をかけて、玉の裏やパンツにも虫がついていない事を確認してやっと人心地付いた。
まだ狩人に発見されていないようだが、今度はどれくらい気絶していたのだろうか。まぁ、女物のパンツを膝までずり降ろして、Jrを晒した全裸で気絶している所を見られなくて良かったとも考えられるか。
物事は良い方に考えよう、ばあちゃんも言っていた。悩んでいたってしょうがない。明日には狩人も来るさ。来なければ森を荒らせばいい。そうすれば森が慌てて狩人をよこすだろう。
よし。何とかなりそうな気がしてきた。
太陽の傾きを見るとそれほど経っているとは思えない。短時間でこんなに魔法を連発したのは初めてだが大丈夫だろうか。大量に魔法を使うと魔力切れなんて事が起きると聞いたことがある。
とにかく、サンダルでも良いから靴が欲しい。
森の中を裸足で歩くと、腐葉土の間には枯れ木や石が落ちているし変な虫とか踏みそうなので裸足では歩きたくない。慎重に足元を見ながら靴の材料になるものを探そう。
靴を作るには、なめした皮が有れば良いのだが、その皮を獲るためには歩かなきゃならない。木の板も無いし、葉っぱじゃちょっと強度的に問題が有るか?
きょろきょろと見回していると手近な木に巻き付いていたツタを見つけた。村の女たちもこんなツタを使ってカゴなんかを編んでいたし加工は簡単だろう。小指ほどの太さがあるツタを足にぐるぐる巻きにすれば良い感じに靴代わりになるんじゃないか?
ツタを引っ張ってみるがどこまでも続いていて終わりがなさそうに思える。適当な長さで切るためにツタを手に持ってぐにぐにと曲げてみても、まったく切れそうな気がしない。
まぁ、こういう時はナイフとか使うよな。
パンツ以外に道具なんて持ってないから、そこらに落ちていた少し角ばった石で殴り付けると表面が削れた。これを繰り返せばそのうち切れるだろう。
がんがんと殴りつける事、数十回。数十回で終わったんだろうか…。ツタの真ん中の方は生きていたから削れる量が極端に落ちたんだよ。
1本切るだけで汗だくで、オレはすでにへとへとだ。浄化の魔法で汗を飛ばしたいけど、どうせもう1本切らなきゃならないからガマンして魔法で水を出して飲むだけにしておこう。
適当にツタを足にぐるぐる巻きにし…出来ねぇ。ツタって言うのは小指ほどの太さしかねえのに、思ったより硬いんだな。チクショウ。せっかく苦労して切り出したのに。
もう少し細いヤツを探さなきゃならない。
細くなると近くには見当たらねぇし、有っても長さが足りないんだよな。歩きたくないが、少し森の中に入らなければなら無さそうだ
腐葉土や草で覆われた地面は歩きにくそうで、その中に一本の道があるが、これは森で目覚めた時にいたイッサラの逃げて行った獣道だ。この獣道を追って行くと肉食獣が出そうで怖い。
チクショウ。イッサラの後を追いかけていかなきゃならないいのか?肉食獣に出会ったら拳ほどの石で殺すことは出来るのだろうか?いや、逆に考えるんだ。毛皮と肉が手に入るんだ。
他に思いつかないからイッサラの獣道をたどって見よう。オレだってヤレばできるんだよ!
切り取ったツタは何かに使えるかも知れないので一応持っておく。足に巻くには硬すぎるが、肩掛けに巻く事ができた。
途中で杖になりそうな木の棒を見つけて、足元を確認できるようにして、次のツタを切りやすいように持ちやすい尖った石を手に入れた。イッサラはとっくに逃げ出したのか見当たらなかったのは残念だ。
いや、強がってなんて居ないぞ。ホントに。
何本かツタも見つけたが、太かったり指で簡単に切れてしまったりと中々良い素材が見当たらない。森なんだからもっとツルが伸びていても良い物だが。
お、アレなんか良いんじゃないか。
人のフトモモほどの太さの樹にツタが絡まり付いている。引っぺがして曲げてみれば丁度良いしなりと硬さを持っていそうだ。
がん!
杖代わりの木の棒を横に突き刺して、とがった石で殴りつけるとツタの表面が削れる。
うん。これならさっき切り取ったツタほど苦労はしないだろう。
がんがんがん!
ぽとぽとぽと。
調子にのって連続で殴りつけると、空から何かが落ちてきた!!
ネレヒルだ!
吸血性の気持ち悪いヒルで、どこにでも居やがる。しかもデカイ。
親指の太さほどあって、こいつに寄生されて血を吸われて干からびて死んだ大型の魔獣なんかも居るらしい。
チクショウ!それが三匹も居やがる!
コイツに血を吸われたら、オレなんてすぐに干からびてしまうじゃないか。それに、そのまま皮膚から剥すと牙が残るんだよ。火の魔法を使って炙ってやらなきゃならない。左の肩と腕に付いたヤツはそのまま炙ってやれば良いが、背中に付いたヤツはどうするんだよ。
とにかく、急いで左の肩と腕に付いたヤツをはがさなきゃならない。
火の魔法を操作してネレヒルと同じサイズの火を近づけてやると、のたうち回ってぽとりと落ちる。冷静になれば簡単に殺せそうだ。
問題は背中に張り付いたヤツだが…。見えない背中に火の魔法をかけるには勇気がいる。
枯れ枝を1本見つけると火の魔法で火をつけてやる。チクショウ。湿っていて火の点きが悪い。もっと陽の当たる場所の物を取っておけばよかった。
ネレヒルが背中でもぞもぞと蠢く感覚が気持ち悪すぎて、さっさと剥してしまいたい気持ちがオレを急がせて、火の魔法が強くなる。
よし、火が点いた。
しばらく待って火を消して熾火になった所で背中のヒルに押し当ててやる。
「あちぃ!」
見えないから手元が狂いやすいし、ネレヒルのヤツものたうち回って暴れて弾いた枝の先端がオレの背中を焼いてしまう。
チクショウ!
しばらく格闘していると、やっとネレヒルが落ちてくれた。地味な戦いだった。はたから見ていればオレがのたうち回っているだけだったからな。病気を移される心配もあるから浄化と、それに傷口と火傷にも治癒の魔法をかけてやらなきゃならないな。
ふぅ。
やっと、ツタを切る事が出来る。石で殴りつける作業を再開するとしよう。
がんがんがん!
ぽとぽとぽと。
チクショウ!!ここはネレヒルの巣かよ!!
ああ、パンツの中には入るなよ!そこには大事なJrががが!!
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次回:腹が減ったので『木の実』を食べよう。
■注意■
ヒルを火で撃退する方法は昔から有りますが、調べたところ虫除けや食塩、アルコールでも撃退できるようです。火傷をしないためにもヒルに噛まれた場合はそちらで撃退しましょう。
ちなみに、マヨネーズやポカリス〇ットなどで撃退する方法もあるようです。




