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盗みがバレれば『石牢』に入れられる。

--盗みがバレれば『石牢』に入れられる。--


あらすじ:串肉を盗もうとして棍棒で殴られた。

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目が覚めると牢屋の中だった。めちゃくちゃ頭が痛い。


薄暗くて窓もない石畳の上に転がされていた。


『爆宴の彷徨者』を使った時のように記憶が曖昧(あいまい)になっていないから、串肉を盗ろうとして屋台のオヤジに棍棒で殴られたのをはっきり思い出せる。チクショウ。本気で殴りやがった。


頭をそっと触ってみるとコブが出来ていやがる。急いで治癒の魔法をかけるのだが、おかしなことに魔法が発動しない。


鉄格子に(はば)まれた石壁の部屋には毛布が1枚と手桶が1つ、それに水の入った桶がある。


普通なら人間のクソはスライムが分解してくれるし、浄化の魔法を使えば匂いまで消えてしまうのに、手桶はまるで放置された動物のフンのように異常に臭い。動物を閉じ込める檻には見えないので誰かがココでクソをしたに違いない。動物のフンのような臭いの中で寝ていたので、頭が痛い事もあって気分は最悪だ。


牢屋の臭さも気になるので浄化の魔法を発動させようとするのだが、浄化の魔法も発動しない。


あわてて火も水も風の魔法も使ってみるが、全ての魔法が封じられたように発動し無くなっている。なんてこった。街の牢屋って魔法が使えなくなるのか?だから臭いのか。


ズキズキする頭を抱えて臭いの元になる桶を呆然と見つめてしまった。オレも(もよお)してしまったら、ここで、この桶でクソをしなければならないのか…。


窓もない牢屋で、通路とは鉄格子で阻まれているだけで丸見えだ。


ケツを出して踏ん張っている所に牢番が通りかかりでもすれば。いや、例え見られなかったとしても、ひり出したモノを片付ける場所もない。


もしかして回収されるまでモノと一緒に暮らさないといけないのか?回収されるときに鼻をつままれながら嫌そうな顔して見られなければならないのか。終わった後も浄化の魔法をかけられないから、ケツにこびりついたままにしなければならないのか?


ごくり。自然と唾を飲み込んでしまう。


まだ、腹の具合は大丈夫だ。腹が減りすぎて串肉を盗ろうとしたくらいだからな。もうしばらく大丈夫だろう。腹が痛くなる前に絶対にここから逃げ出さなければ。


「おいおい、何で食い逃げ犯なんかをここに入れるんだ?」


遠くから声が聞こえた。どうやら男が2人話しているようだ。牢屋なんだから牢番だろうか。ついでに、オレは串肉を食いそびれたから未遂(みすい)だと心の中で毒づく。


「どうやら食い逃げの前に、大通りでストリートキングをしたヤツらしいんだ。」


薄暗い路地だったから顔を見られていないと思ったのだが、どうやら食い逃げをする前のことまでバレているようだ。


「ストリートキング?裸で走り回ったのか?」


「女物のパンツ一枚で走り回ったんだってよ。」


オレだってやりたくてやったんじゃないからな。気が付いたらパンツ1枚で路地に寝ていたんだ。


「変態じゃないか。」


「そうだな。だが、もっと大きな問題がある。」


「アイツはパンツ1枚で走り回る以上の変態なのか?」


「そうじゃない。そのパンツにはシミが付いていたそうだ。」


「やっぱり大変態じゃないか。ションベンのシミか?他のシミか?」


「黙って聞けって、ジジイどもの中にシミの付いた女物のパンツを知っているヤツが何人かいてな、変な事で捕まえた連中の下着を確認してたんだ。」


「いちいち捕まえたヤツ全員のズボンを下ろしたんか?」


つまり、顔ではなくパンツでオレを判断したようだ。っていうか、寝ている間にズボンを下ろすんじゃねぇよ!変態か!?


「うるさいな、オレだってやりたくてやったんじゃねぇよ。だがな、もしかするとアイツは『爆宴の彷徨者』の『ギフト』を持っているかも知れない。」


「げげ、あの英雄の『ギフト』か?そいつはヤバいな。」


「だろう?だから『ギフト』も魔法も封じ込められるここの牢屋が選ばれたんだ。」


「厄介なヤツが現れたもんだな。てことは、ここも安全じゃなくなるな。」


「まぁ、まだ可能性だけだ。ただの変態だと良いのだが。」


「そうだな。あの有名な、呪われた『ギフト』を取ろうなんてヤツは居ないだろう?話のオチを聞いたら絶対に取りたくなくなる『ギフト』だ。」


話しのオチ?そう言えばオレが話を聞いた行商人は酔っぱらっていて話の最後の方は寝てしまっていたな。もしかして、その部分に何か重大な秘密が有ったのかもしれない。


そもそも、この『ギフト』の力ってよくわからないんだよな。何の武器も持たずに魔獣の相手が出来ると村長のジジイは思っていたみたいだし、そもそもこの街に居る理由も解らない。


まぁ、名前からしても爆発を操るハズなのだから武器を持たせなくても不思議じゃないのだが、結局は村から街まで移動しかしていない。


治癒の魔法でも治りそうもなかった、ちぎれた腕も足も元に戻っていたから良いけどな。もしかして怪我を直して安全な場所に移動する能力かも知れない。村は安全な場所だと思えなかったから知らない街まで飛ばしてくれたとか。


「ところが、辺境の小さな農村で取ったヤツがでたらしいんだ。2年前に報告があったそうだ。」


「なに?それじゃソイツは『爆宴の彷徨者』を使ったのか?」


「王命で『ギフト』封じの首輪を付けさせていたと言っていたから間違いだとは思うのだが。何らかの理由で外されたのかもしれない。だから新しい『ギフト』封じの首輪が届いたら尋問することになる。」


「タダの大変態で有って欲しいな。」


「そうだと良いな。とにかく、さっさとこの牢屋から出て行って欲しいぜ。」


なるほど、牢番達の話によるとオレの村は遠くにあって、この街まで森の大氾濫の話は届いていないらしい。そして牢屋の中では『ギフト』も魔法も使えないみたいだ。チクショウ。


魔獣に囲まれた時は『爆宴の彷徨者』を使おうと思っただけで使えたハズだ。なぜかその後の記憶が曖昧(あいまい)で使ったハズだという事しかわからない。


まぁ、解かっていればこの街に来た経緯を知っているハズだよな。


試しに『爆宴の彷徨者』の『ギフト』を使ってみても、やっぱり使えない。という事は『ギフト』を封じる首輪を付けられる前に逃げ出さなければならないようだ。



村で奴隷のような扱いにしてくれえた、あの忌々(いまいま)しい首輪なんぞ、2度と付けられてたまるか!!



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次回:どうにかして『脱走』してやるんだ!



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