第2幕
やぁ、また会ったね。今日も突飛な話をしよう。現実と虚構が織り成す、不思議な話。良ければ聞いていってくれ。
明日葉のつぶやきに対する、はたての返答は簡単なものだった。
は「そうですよ?ここは幻想郷です」
明「いや…軽いですね」
は「そりゃあそうですよ。何でそんなに驚いてるんですか?」
明「いえ…その…」
彼に言えるわけがなかった。外の世界では、幻想郷は創作の存在、実在しているとは露ほども思われていないのだと。
明「…どうやったら帰れますかね?」
本心を隠すべく、思ってもいないことを告げる明日葉であった。
は「紫さんに頼めばいいんじゃないですかね?」
明「そんな簡単に会えます…?」
は「どうなんでしょうねぇ?」
明「分からないんですね…」
は「とりあえず行きます?」
明「……」
何も進まないので、行くことにした。
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は「着きましたよ、博麗神社」
明「意外と近い…んですかね?」
実は1時間くらいかかってたりした。それなりに遠いが、はたてが抱えて飛んでいたので、明日葉本人は疲れてはいなかった。
霊「あら、はたてが来るなんて珍しいじゃない。そっちの人は?」
は「そう言えば、名前を聞いてませんでしたね」
明「…白銀明日葉。よろしく、博麗霊夢」
霊「いきなり呼び捨てなんて、生意気ね」
まぁそうだろうけど霊夢ほどではない、とは思ったが黙っておくくらいの忍耐力はある明日葉であった。
霊「…ふぅん、要は帰りたいわけね」
明「そーですよー」
霊「なんか腹立つわね」
明日葉はわざとこう言っているのだが、霊夢は気付いているのやら。
霊「紫がいればいいんだけど、あいつ気まぐれだから、いつ会えるかわかんないのよね」
明「はい全てを察しました。紫に会えるまでここで過ごせってんでしょ?」
霊「話が早くて助かるわね」
明「ぶっ飛ばすぞてめぇ」
早く帰りたかった明日葉は、本人としては珍しく本気で怒って口調が荒くなってしまった。
は「え、えっと…明日葉さんでしたっけ?ここに残るのであれば、私のところに来ません?情報収集とか容易だと思いますよ?」
明「…悩むなぁ…その申し出…」
霊「いいじゃない。うちに泊めることは出来ないし、人里で探すのも億劫よ?」
明「でもなぁ…」
明日葉の懸念は幾つかある。
1つ。妖怪の山には河城にとりや鍵山雛など、相手取ると面倒な面々が居ること。
2つ。日常的に山を登るのが面倒であること。
3つ。(外見的には)年頃の女性である姫海棠はたての家に泊まることへの忌避感があること。
主だったものはこの3つだろう。
霊「大丈夫よ。何かあればはたてがどうにかするから」
は「私一人ですか!?」
霊「違うの?」
は「…違いませんけど…(椛さんや文にも頼もうと思ってたのにぃ…)」
明「いや…山には射命丸文とか犬走椛とかいるでしょ…」
霊「…あんた、ホントに外来人?知り過ぎてて胡散臭いんだけど」
明「…一応、外来人ですよ」
は「ま、まぁまぁ…とりあえず、私の家に行きましょう?」
喧嘩に発展することを恐れたはたてによって、半ば拉致に近い形で家まで連れていかれる明日葉であった。
今日はここまで。次にあった時は、どんな奇怪な話になるのかな。それじゃ、また。