第1幕
これは、とある少年の物語。語り手は僕、聞き手は君達。数多の虚構と、ほんの少しの現実を織り交ぜた、そんなお話。良ければ聞いていってくれると嬉しいな。
そこに居たのは、1人の少年。名を、白銀明日葉と言う。
明「はぁ、暇だなぁ。今日も何もしてないや…」
彼は、常に暇であった。どこかへ遊びに行くような友もおらず、遠くへ出かけるような資金もない。彼の親は何かと過保護で、彼に遠出を禁じていたのもひとつの要因ではあった。しかし1番の要因は、彼自身にその気がないことだろう。
明「勉強しようにも、課題は全部終わらせたしなぁ。買った本もあらかた読み終わってるし」
そんな事を呟く彼の前に、謎の空間が現れた。その空間は、多くの目を伴っていた。
明「…これって…なんだろう?」
退屈なときに、目の前に現れた不思議な空間。こんな非日常を、彼が放置するわけがない。どこかで見たことがあるような気がしたが、彼は気にしなかった。
明「それっ!」
そして、その空間に飛び込んだ。次に見たのは、大空から見下ろす、未見の土地。彼を襲うのは、急速な落下感。
明「う…うぁぁぁぁぁぁ!!!」
眼下の山に向かって落下し続ける少年。ついには、死を意識した。
明(これは、助からないよねぇ!)
そう思い、目を閉じて諦めかけた時。彼は、誰かに抱きかかえられていた。
明「えっ?」
?「大丈夫ですか?」
目を開けてその姿を見た時、彼は心底驚いた。
明「う、嘘…そんなはずは…」
?「どうかされましたか?」
明「姫海棠…はたて…?」
そこに居たのは、彼のいた世界では二次元の存在である、東方Projectのキャラクターの1人。彼が最も好んでいたキャラクター、姫海棠はたての姿があった。
は「なんで私の名前を知ってるんですか?貴方と会ったことありましたっけ?」
明「うぁぁ…ホントにはたてなのか…」
は「失礼な人ですね」
そして彼は不意に、姫海棠はたてに抱きかかえられていることを意識してしまった。
明「…あっ…あぁぅ…」
は「ホントになんなんですかこの人は…」
明「あの…降ろしてくれません?恥ずかしくて死にそうです」
は「はぁ…」
納得のいかないような顔をしながら、はたては手を離そうとした。
明「待って待って待って!!落ちる!落ちるから!!せめて地面に降ろして!!」
は「えっ、飛べないんですか?」
明「普通は飛べないから!!」
は「空から降ってきたのに?」
明「よく分からない空間に入り込んだら、あそこに放り出されたんですよ!!」
そして、彼は考えた。見覚えのある、無数の目のある空間と、目の前にいる姫海棠はたて。この2つの事実から導き出される答えは…
明「もしかして…あれって、スキマだったのかな」
否定したくて呟いた一言。しかし、現実は非情であった。
は「はぁ、霊夢さん達がよく言う、紫さんとやらが使う空間でしたっけ?」
霊夢、紫。その2人の名前も出てきて、彼は確信した。
明「僕は…ホントに、幻想郷に来ちゃったのか…?」
少し疲れたから、今日はここまで。次に話すのは、どんな突飛な話なんだろうね。それじゃあ、次のお話まで、しばしの別れだよ。