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天使の悪口

作者: 南波英人

小学生6年になる娘の担任に学校に呼び出された。


何か悪い事でもしたのかと驚いたが娘は何もしていないと首を横に振る。


急いで学校に行くと担任は疲れた顔で私を進路相談室に案内された。


「忙しい所すみません」


担任はそういうとテーブルに書類を何枚か並べていく。


「すみませんが、娘が何かしたのでしょうか?」


娘が嘘を付いているとは思わなかったが一応確認した。


「いえいえ、○○さんは何もしていません。


それどころか勉強もよくできるし学級委員長に推薦されるほどクラスの生徒から信頼されています」


担任は詳しく書かれた娘の成績の書類を見せてくれた。


家では5歳年下の弟と馬鹿なことをやってばかりいる娘を少し褒めてあげたくなった。


「ただ・・・」


「ただ?何なんです?」


「私のクラスでいじめがありその原因をたどると何故か○○さんに行きあたるのです」


「そんな訳ありません。何かの間違いじゃ・・・」


「私も最初は信じられなかったのですが、すみませんが家で学校のことで何か聞いたりしていませんか?」


「・・・何も聞いてません。変わった様子もありません」


いじめられている生徒の名前を聞いたが知らなかった。


「分かりました。もう少しこちらでも調べてみますので何かありましたらご連絡ください。」


いじめの事で問い詰めない事だけ強く約束され、


疲れた顔の先生は私に別れを告げた。


いじめで生徒と親の板挟みなのだろう。


授業参観で見たまん丸だった顔は病的に痩せ骸骨のようだった。


頭の中が整理できずに家に帰ると娘と息子はいつも通り馬鹿なことをやって遊んでいた。


「おかえりなさい。何んだったの?」


「あなたが勉強できて皆から好かれていますって褒められたわよ」


嘘ではないが胸が傷んだ。


弟から尊敬の眼差しと拍手をもらい満面の笑みで笑う娘がいじめの原因なんて信じられなかった。


夕食時、何も知らない夫は息子から姉の賞賛を聞き純粋に娘を褒めた。


「○○えらいぞ!父さんも鼻が高いよ」


「ありがとう」


「パパ、僕は?僕は?」


「〇〇○はもう少しだな。80点」


「やったー80点だー」


「クラスでも人気があるんだって?ママに似て美人だからなー」


「・・・男の子だけじゃなく女の子にも人気があるそうよ」


「そうかー。○○はパパとママのいい所を合わせたみたいだな」


「えへへへへへっ」


「でも、そんなに人気があったら誰に妬まれないか」


「そんな事ないよ。クラスでイタズラしてくる人もいたけど友達にその子のイタズラで困ってるって相談したらイタズラなくなっちゃったし」


「そっかー友達にも恵まれているのかー」



私はその時、気づいた。


多分、誰もが言ったことのあるほんの小さな悪口を


娘が言うと歪んだ正義を持って伝染するのを。

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