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 さくらさんは付き合ってくれるとは答えなかったので、もう二度と会わないかと思っていた。行動範囲が被っていたとしても、そう出くわすわけではない。だって、学校の生徒を外で見かけない。滅多に会わない。


 マンションの門前にさくらさんが立っていた。金曜日と同じ傘、同じコート。今日は寒いからか、装備にマフラーが増えている。

 覚え損ねていた顔を、あらためて認識する。もらったカイロをポケットの中で揉み潰しながら、さくらさんに声をかける。


「どうしたんですか?」


「悪い。勝手に、冷蔵庫の中を見たんだ。だから、何か、作ろうかと思って、買ってきた」


 さくらさんの傘を持つ手と反対の手には、白いビニール袋。


「はあ」


「迷惑なら帰る」


 首をかしげる。

 さくらさんは、私のために、ごはんを作りにやってきた。そういうことでいいのだろうか。いつの間に冷蔵庫を見ていたのかわからないが、今日も冷蔵庫は空だ。何か食べられるものを作ってくれるのなら、大歓迎だ。


「帰らないで」


「わかった」


「ハンバーグ食べたい」


「……魚肉でもいいか?」


「かまぼこ?」


「焼けば……ハンバーグ?」


 問われても正解を知らない。さくらさんが私に食べさせようと買ってきたものがどうやら魚であるらしいことはわかった。あとはネギと水菜が見えている。ハンバーグ食べたかった。さくらさんは一瞬すらも私と目を合わせなかった。

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