表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/35

15

「薄情だよな」


 バラの茎を足元に放り捨てて、さくらさんが呟く。自らを嘲笑うような声音で続ける。


「君を殺したいのに、君を抱きたい。心臓を抉り取って潰してやりたいのに、心が欲しい」


「それ多情なんですよ」


「多情?」


「お姉さんも好き、私も好き、他にも色んなものが好き?」


「ああ、そうか。ここにある以上は、矛盾しないわけだ」


 小学生の集まる夕方の公園で、スーツ姿の男が、制服の女子高生に抱き締められて、すがり付いている。先生、どうやら世界を外から見ているように考えてしまうのは、私のほうだ。


「私、さくらさんのこと好きですよ。ごはん美味しいし」


「本当に、美しい目だ」


 体を離して、さくらさんは私の頬を下から上へ撫でた。そのまま指が瞼をなぞり、眼球に触れた。まばたきしても触れたまま。


「君が何をどこまで知っているか、私は知らない。私は司法部の一員として、軍部の暗殺機関を探っている。宮内部の協力者によって、君と出会った。いいか? 君に指示を出す人間がいるなら、今すぐにでも離れるんだ」


 頷けなかった。ただ素直に頷いて、さくらさんに着いていけばいいだけなのに。さくらさんの言葉が嘘でないことくらいは、私にも判別できるのに。


 なんかややこしいことになったぞ。さくらさんが言うには、梅影先生が敵で、おそらく鏡先生が味方。性に合わない。敵味方で分けようとすることが間違っている。梅影先生が嘘つきであることなんて、ずっと前から知っている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ