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5話「妹分の可愛いわがまま」

 春休みが残り三日となった今日は、俺と加奈のバイトが休みの日だった。

 そして、朝ご飯を一緒に食べた後に加奈が急に――

「新しい服買いたいから、一緒に選んで」

 と、わがままを言いだしたのだった。

「他の用事ならいいけど、女子の服を選ぶとなるとよくわからないし、恥ずかしいから嫌だよ」

 俺がそう断ると、加奈はそっぽを向いて、何も言わずにスマホを弄りだした。

 少しすると、俺のスマホから通知音が聞こえてきた。

 見てみると、大量の呪いの画像が、次から次へと送られてきていた。

 もちろん、送り主は加奈であったのだが、次から次へと鳴り続ける通知音に、俺は冷や汗をかく。

 

 加奈がなぜ急にこんな行動をとったのか、俺にはわからなかった。

 いつもならもっと直接文句を言ってきたり、わがままを言ってきていたからだ。

 結局、いつになっても止まない通知音に俺が降参し、加奈の買い物に付き合う事にしたのだった。


 今日の加奈の様子がいつもと違う事に首をかしげるが、もちろんその原因を作っていたのは俺だったのだ。

 まぁ、そのことを俺が知るのは、もっと後になってからであった。





 ショッピングモールについてからは、かなりの店を加奈に連れまわされてしまい、俺は疲れてしまった。

 しかし、最初は乗り気ではなかった俺も、色々な服を着る加奈が可愛くて、一緒に回るのが楽しく感じていた。

 次に入った店で加奈が着たのは、白を主としたフリルブラウスだった。

 低身長で少し幼さが残る加奈にとてもよく似合っていて、加奈自身も気に入っている様子だ。

「りゅう~、どうこれ? 似合ってる?」

 加奈は褒めてほしそうな顔で、俺の事を見ている。

「その服良く似合ってると思うよ。それにしたら?」

 俺がそう勧めると――

「うん、これ買ってくる」

 と、加奈は満面の笑顔で、会計をしにレジに並ぶのだった。


 そして、加奈は嬉しそうにツインテールをぴょんぴょん跳ねさせながら戻ってきて、そんな加奈を可愛いなと思って俺が見ていると、ふいに見覚えがある姿が、俺の視界に入った。


「な!?」


 俺は反射的にその姿を追った。

「え? 龍? ちょっとまってよ!」

 加奈も慌てて俺を追いかけてきた。

 俺が追っていた姿は、人混みに紛れてしまってわからなくなった。


 人違いか……?

 あいつがここにいるはずないよな……。

 俺が見かけたのは、このみそっくりの女の子だった。

 しかし距離があったため、本人かどうかまでは確認できていなかった。


「ちょっと龍! 急にどうしたの!? おいて行かないでよ!」

 追いついてきた加奈は、かなり怒っていた。

 せっかく機嫌が直っていた加奈がまた怒ってしまっていたので、俺は自分がとった行動に後悔した。


「あ、ごめん。ちょっと知り合いを見つけたから追いかけてしまったんだけど、見失ってしまって、人違いだったのかもしれない」




 ――私は、取り繕うような笑みを浮かべている龍の事を見て、考え事をする。


 さっき、龍凄い血相を変えておいかけていったけど、もしかして見つけたのって、地元においてきた妹か幼馴染なの……?

 だけど、私はその質問を口にすることはできなかった。

 先ほど、龍はその人影をみるなり、私の事を忘れておいかけてしまった。

 つまり、もしその人影が龍の妹か幼馴染のどちらか片方だった場合、龍にとって、私よりもその二人の方が大切だという事になっちゃう。

 そしてそれは、その二人のどちらかでも龍の前に現れたら、龍がとられてしまうという事だよね……。

 そんなの嫌だと思った私は、龍の服の袖をつまんだ。

「どうした?」

 龍は不思議そうに私の事を見てくる。

「さっきみたいにおいて行かれると嫌だし、周りも人が結構増えてきたから、離れないように袖を掴んでるの」

 私はそれとない理由を言って、龍の服を離さなかった。





 加奈は下を向いていたため、俺からは表情が見えなかったが、加奈がそうしたいのなら、好きにさせようと思った。


 ――加奈の買いたい服も決まったため、家までの帰り道を歩いていると、いつもは騒がしい加奈が静かだったため、俺はまた違和感を覚えていた。

「なぁ、加奈? 今日は朝から様子がおかしいけど、何かあったのか?」

 その状況に耐えきれなくなった俺は、加奈に尋ねた。

「……だって、寂しかったんだもん。龍、この前の紫之宮先輩との食事会から帰ってきてから、なんかよく上の空になってて、声かけても気づいてくれないし、最近ずっとほっとかれてたもん」

 確かに俺は、紫之宮先輩にこのみ達のことを聞かれてから、このみ達のことが頭から離れなくなっていた。

 先ほど、このみに似た姿を見かけて反射的に追いかけてしまったのも、それが原因の一つであるだろう。

 そして、心ここにあらずの俺に、ここ最近相手をしてもらえず、我慢していた加奈の限界がきてしまって、今回のわがままにつながったのだった。


 そのことに俺は反省し――

「ごめんな、もうほっとかないから」

 と、謝った。

「今日の晩御飯は、オムライスで手をうつよ?」

 加奈はちょっと膨れっ面をしながらそう要求してきたので、俺も了承して、二人仲良くスーパーに向かうのだった。


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