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貧乏学生の相手は大手企業!  作者: ネコクロ


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15話「二人の約束」

 夕美において行かれた後、俺は自分の家へと戻ってきていた。

 家には、俺の事を心配した加奈が来ていた。


「ほら龍、元気出しなよ」

 加奈は俺に、お茶が入ったコップを渡してくれた。

「ありがとう。……そういえば、加奈達はなんであそこに居たんだ? それも、紫之宮先輩達と一緒に」

 加奈はいつも映画を見に行く時は、俺達が行っていたショッピングモールとは間反対の方向にある映画館に行っていたため、あそこで会うはずがなかったのだ。


「あ~あれはね……最初はいつもの映画館に行こうかと思ったんだけど、水沢さんがあそこの大きいショッピングモールにある方の映画館に行ってみたいって言うから、あっちに行ったの。そして映画が終わって外に出ると、紫之宮先輩が居て話しかけたら、先輩達も同じ映画を見てたみたいなんだ。それで先輩達と映画の話をしてると、紫之宮先輩と水沢さんが言い争いをはじめちゃって……二人を落ち着かせようって白川会長の案で近くの喫茶店に入ったら、龍達が居たってわけ」

 加奈は苦笑いをしながら、あの時の事を説明してくれた。

「あの二人、また言い争いしてたのか……。今度はなんで言い争いしてたんだ?」

 俺は額に手をあて、天を仰ぎながら加奈に尋ねる。


「私達が見た映画って、大病を患った高校生の男の子が主人公で、お世話焼きでちょっとツンデレが入った幼馴染の女の子と、大金持ちの女子の先輩との三角関係が主になった恋愛映画だったんだけど……男の子の病気を治すには大金が必要だったの。それで、男の子の事が好きだった先輩が、治すためのお金は出してあげるから、自分の物になるよう言ってくるんだけど、幼なじみの女の子の事が好きだった主人公は、悩んだ末にその話を断っちゃうの。そして、結局幼馴染の女の子と結ばれた男の子は、病気が原因で最期を迎えてしまうって話だったんだけど、その事について紫之宮先輩が納得できないと文句を言って、好きな人と結ばれたのだから良い事じゃないですかって水沢さんが返して、喧嘩になっちゃったんだ……」

「紫之宮先輩は、何が納得できなかったんだ?」

「えっとね……折角生きる道があったのだから、幼馴染を選ばずに、大金持ちの先輩を選ぶべきだったんだって言ってた」


 先輩の言葉に、俺は彼女らしいなと思うのだった。

 俺がそう思うのは、先輩が今まさに恋愛感情ではなく、見合いを断るために、俺の事を彼氏だと周りに言いふらしていたからだ。

 俺が黙って考え事をしている間も、加奈の言葉は続く。

「それでね、恋愛は気持ちでしないと意味がないですって水沢さんが言ったら、紫之宮先輩が『気持ちなんて薄れていくもの……相手に何も思ってもらえなくなれば、それで終わりよ?』って言うと、水沢さんが凄く辛そうな顔をしてた。流石に言いすぎって、白川会長が止めてたんだけどね」

 そう言って、加奈は俺の顔を見つめてきた。

 何か思う事があるのかもしれないが、俺は加奈が何を考えているのか、読み取れなかった。 


「――先輩は厳しい人だけど、なんか夕美に対しては一段と厳しい気がするな……」

 俺はそう言うと、押し入れに仕舞っていた箱を取り出す。


「それって、龍がずっと大切に仕舞っていた箱だよね? 中には何が入っているの?」

 加奈は興味深そうに箱を見る。

「俺と夕美が約束したときに交換したものが入ってる。……小学3年生の時にした約束だから、もう夕美も覚えていないと思ってたんだけどな……」

 俺がその箱を開けると、中からは手作りのお守りが出てきた。


「これは?」

「昔、夕美が読んでいた本に出てきた約束の仕方で、誓いを込めてお互いが作ったおまもりを交換するってのがあってさ、俺と夕美もお互いの作ったお守りを交換したんだよ」

「龍達はなんの誓いをしたの?」

 加奈はちょっと不安そうな顔をしながら、俺に尋ねてきた。

 どうして不安そうにしているのだろうか?

 俺は加奈の表情に疑問を抱えながらも、俺は加奈の質問に答える。

「俺はずっと夕美の傍に居続け、夕美を守り続ける。夕美はずっと俺の事を支え続けるって誓いをしたんだ。夕美ってさ、周りに比べてかなり頭が良かったんだよ。俺も敵わないくらいにな。大人達はあいつの事を神童だって言って、ちやほやしてたんだが、それを面白がらないやつらも当然居た。そしてそいつらは、夕美をいじめるようになった。俺はその事に中々気づいてやれなかったんだ……。気づいたのはいじめがかなりひどくなった時だ。その時には、夕美はもう学校に行けなくなっていたから、俺は夕美がいじめられないように手を打って、ずっと傍についていた。すると、夕美も学校に行くようになったんだけど、俺が傍から離れる事が怖いって夕美が言うたから、俺は『ずっと傍にいて守るよ』って約束したんだ」

 俺の言葉を聞いた加奈は、目をつむっていた。




 龍から話を聞いた私は、胸の中が凄くモヤモヤしていた。

 

 龍がしたその約束って――婚約じゃないの?

 でも、小学生だからそんなことは考えていない?

 少なくとも、龍はそんなつもりで言ったんじゃないと思う。

 でも、水沢さんは小さい頃からそんなに頭がよかったんだったら、やっぱりそういう意味で捉えたんじゃ……?

 少なくとも、龍が水沢さんの心の依り代なのは間違いないと思う……。


 私が目をあけて見た先には、お守りを見つめて何か考え事をしている、龍の真剣な表情が映っていた。

 龍は一体、水沢さんの事をどう思ってるのかな?

 やっぱり、彼女の事が好きなのかな……。

 なんか、やだなぁ……。


 私は龍の事を見つめながら、彼が取られそうになっている事を、不安に思うのだった――。

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