表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/16

1-8 オムライスと奪還 後編 そしてエピローグ

……なんで僕はオムライスを作っているんでしょうか?


ついさっき気づいたわ。


僕は、そんな簡単に料理を作る奴なんかではなかったはずなのに。


僕は、大切な人にしか、作りたくなかったのに。


いや、待てよ?


こう考える事が出来るんじゃないか?


大切な人の為に作っているんだと。


よし、これでいこう。


というか、この世界って本当に料理の品数が少ないよな。


多分これ、この国が鎖国みたいな事をしてるから、外の国から、料理とか、文化とかが入ってきてないんだと僕は思う。


だから、この国、いやこの世界は危機に反していると思うんだよ。


他の国々と同盟とか結んだらいいのに。


まぁ、僕がこんな事言ったって、誰も耳を傾けてなんてくれないだろうけど。


……優香は大丈夫かなぁ。


確かに優香は精神的にも、身体的にも強いけど、僕の事大好きだからなぁ。


僕がいないから、夜な夜な泣いてるんじゃないか?


……そんなわけないか。


でも、僕は会いたいです。


優香と一緒にいるのは、当たり前の事だと思っていたから、いざ離れてしまうと、寂しい。


元の世界に戻りたいなぁ。


戻れるんだろうか。


戻れたら、優香に満漢全席でも作ってやろう。


作った事ないけどさ。


……という事で出来ました!


オムライスと、スフレオムレツ。


「王様、出来ました」


僕は、陶器の皿にオムライスとオムレツを乗せて、歩き、卓に置いた。


「さぁ、食べてみてください」


「うむ。お前のような一般庶民が作る料理なんて不味くて食えやしないが、一口だけ食べてやる」


そう言って、王様はスプーンでオムライスを掬って口に運んだ。


そして、オムライスを食べた王様の反応は、「美味い!」だった。


「それは、よかったです。では、こちらのスフレオムレツも食べてください」


「分かった」


王様は、スフレオムレツをナイフで切り、フォークで刺して、口に運んで食べた。


「美味い! 何だこれは? こんなに美味い卵料理は食べた事ない!」


「それは、よかったです」


本当によかったよ!


二重の意味でな。


「ナフタリア、ツクヨ! 早くこっちに来い」


彼女たちは、無事に拘束から逃れる事が出来ました!


「ナフタリア、ツクヨ。大丈夫だったか?」


「はい! 私はしずくを信じてましたから。必ず助けてくれるって」


いや、ナフタリア、お前寝てたやん。


「どうして私も助けたんですか。あなたはせっかく仲良くしようと歩み寄ってくれたのに、私はそれを無下にしたのに。なのに、どうして?」


「助けるのに理由はいらないよ。唯僕はツクヨを助けたかっただけ。それだけだよ」


「ありがとう、ございます。私、ツクヨはこれからしずくさんとずっと一緒にいる事を誓います」


「そうか? それならくれぐれも僕に心配をかけないように」


「はい!」


彼女は、ツクヨは泣きながら、返事した。


さてと、ツクヨが感情を表に出してくれたのはいいんだが、ここからどう脱出しようかな?


……何も思いつかない。


強行突破してもいいんだが、それをすると後々面倒くさい事になりそうな気がするんだよね。


「おい、ハズレ勇者よ。1週間に1回、いや1ヶ月に1回でいいから、私に卵料理を作ってくれないか?」


……王様、どれだけ卵料理好きなんだよ。


「いいけど、二つ頼みを聞いてほしい」


「何だ、言ってみよ」


「僕たちに家と調理器具をください!」


「それだけか?」


「はい! 僕は家と彼女たちがいるだけでいいんで」


「分かった。約束だぞ。家と調理器具を確保したら、ハズレ勇者、いや、音無君を王室へ招くからそれまでは待っていてくれ」


ちょろいな。


この王様は。


「はい、分かりました。では、失礼しますね」


僕は、一礼して広場から去っていく。


彼女たちは、僕の一歩後ろをついてくる。


少し、距離が近くなったような気がするけど、まぁ、いいか。


こうして、僕たちは無事に宿屋へと帰りました。


〜エピローグ〜


彼女たちを奪還した僕は今、宿屋の部屋の片付けをしています。


血液が飛び散ってるんでね。


「いやぁ、あの時は死ぬかと思ったって言うか死んだわ」


そうあの時、槍で刺された時、もしユリエリアさんがいなければ、死んでいたんだろうな。


あ、まだ謝ってもらってない。


王室へ招かれた時に、謝ってもらおう。


「しずく」


「ん? 何だ、ナフタリア?」


「少し変わった?」


「そんな事ないと思うけど、お前らの見方が変わったのかもしれないな」


「見方が変わった?」


「うん。最初は唯の可愛い少女だと思ってたんだけど、今は僕にとってかけがえの無い女の子になったんだよ」


「そうですか。……今はしずくの中ではそうかもしれませんが、しずくは私と結婚するんです」


「え? 僕とナフタリアが結婚?」


「はい! 結婚です。早くて、後1年で結婚出来ます!」


「まだナフタリア13歳だよね?」


「はい、そうですが」


「この世界では、14歳で結婚出来るの?」


「はい、出来ますよ!」


何で、そんなに嬉しそうなんだよ。


……分かってるのかな、ナフタリアは。


こういう事、本当は言いたくはないんだけど、ナフタリアは奴隷だから、人権はないから、結婚は出来ないと思う。


でも、まぁいずれは僕が奴隷制度なんてもの撤廃するんで関係ないんですけどね。


「……うーん。一年後って事は、僕が16歳って事になるのか」


日本ではありえない事だよな。


日本では早くても18歳からだもんな。


「いえ、しずくさんは私と結婚するんです!」


ツクヨまでそんな事を言いだしたよ。


僕ってそんなにモテるのかな?


いやぁ、照れるなぁ。


「いえ、しずくさんはモテませんよ」


「何でそんな事言うんだよ悲しいじゃないか!」


「泣かないでください! 違うんです! しずくさんがモテないのは、私たちのせいなんです」


「それは、どういう意味?」


「私たちが物理的に、モテなくさせます」


「そんな事しなくていいから!」


怖いわ、この人達。


何だよ、物理的にって。


何をしようとしてたんだろう。


「私をそんな事しません。私は信じてますから。しずくは、私を選ぶって」


その確信、どこから来るんだ?


(確信はありませんよ。勝ち取るんです。しずくに、私の事を好きになってもらうんです)


なぜうえ、【念話】で話すんだろうな。


(何ですか、これ! ナフタリアの声が直接脳内に伝わってくる)


ツクヨが、ナフタリアって呼び捨てしてるんだけど。


(どうして、ツクヨが入ってくるんですか。せっかく二人きりで話そうとしてたのに!)


(知らないですよ、そんな事! 勝手に聞こえてきたんですから、仕方ないじゃないですか!)


この子達、【念話】の使い方下手くそじゃないかな。


【念話】を制御しなければ、近くにいる【念話】持ちの人にも、聞こえてしまうのに。


その事を知らないのか?


(ナフタリア、ツクヨ、うるさい。少しは制御して)


(制御?)


(制御って何ですか?)


本当にこの子達おバカさんだわ。


この時、初めてそう思った。


こうして、騒がしくも、楽しい生活が幕を開けた。



ここは、王城のある一室。


「お姉ちゃん。どうしたの? そんなに嬉しそうにして」


「私、結婚相手をついに見つけましたわ」


「良かったね、お姉ちゃん! それで、結婚相手ってどんな人なの?」


「私の見立てでは、身長は168cmくらいで、体重は55kgで少し頼りなさそうだけど、お父様に嘘をついたり、言う事を聞かせてたわ! あの勇者とは全然違う」


「その勇者ってお姉ちゃんにプロポーズしてきた人でしょ? その人、結構顔は整っていたけど、どうして受けなかったの?」


「そうね。私はそこまで顔は重視しない方なのよ。あの人は強くてかっこいいだけ。でも、今日私が見つけた人は、そこまでかっこよくないし、強くもないけど、何かが違うのよ」


「そうなんだね〜。お姉ちゃんがそう言うのならそうなのかもね。でもさ、王族なのに、全然強くないし、体も弱いどころか、動かない。そんな出来損ないのお姉ちゃんの事、どう思うんだろうね」


「……」


「何も言い返せないんですか? お姉ちゃんは弱っちいですね。ふふふっ」


大丈夫ですわ。


あの人は、絶対に私の事を出来損ないなんて思わない。


そうですわよね、ハズレ勇者さん。




























これで、1章完結です!

ブックマーク、感想、レビューよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ