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1-6 死?とチート

無事に宿屋に着いた僕は、オムライスを作っています。


まぁ、作っていると言うか、オムライスの具材を切っているだけというか。


それで、ナフタリアはというと、まだ眠っております。


というか、寝させています。


絶対命令権を使ったから、ナフタリアは自分からは起きれなくなっているのです。


そうだ。


こういう時にツクヨと仲良くなるチャンスなのでは?


そう思った時には、すでに行動を始めていました。


「えーい!」という掛け声で僕はツクヨに抱きつきました。


ツクヨの顔は見えていませんが、心音が速くなっているので、多分顔が赤くなっている事でしょう。


「ツクヨ。遠慮はしなくていいからな。僕はツクヨの事を迷惑とかそんな事思っていないから。これから仲良くしよゔな゛」


最後まで上手く喋ることが出来なかった。


何故かと言うと、槍で背中を刺され、心臓を貫かれ、胸を貫通し、そしてその槍を抜かれたから。


そのせいで、僕の口からはゴポゴポと血液を吐き出し、体からは血液が噴き出ている。


血を急速に失っていくのがよく分かる。


槍からは、ぽたぽたと血液が垂れている。


まずい、まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい。


心臓を刺された。


血液を全身に巡らせる事が出来なくなった。


死ぬ、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。


絶対死ぬ。


【再生】が遅い。


前に刺された時は、このくらいには【再生】していたはずなのに。


それに寒くなってきた。


だが、それだけではない。


視覚が、聴覚が、嗅覚が、味覚が、触覚が。


それらの五感が徐々に消えていっている。


血を流し過ぎたせいだろう。


もうほとんど体が言う事を聞かない。


僕は、最後の力を振り絞って、顔を上げて、僅かに声がする方向を見る。


すると、そこには見た事がない男が立っていた。


いや、もしかしたら見た事があるのかもしれないが、その男は顔を黒い布で隠していたから、分からなかった。


でも、その男が持っている槍には見覚えがあった。


しかし脳に血液が送られていないため、その事を思考する事が出来なかった。


何で、ここに男がいるんだ?


部屋のドアが開けられるような音なんかしなかったはず。


助けなきゃ。


ツクヨが泣いてるから。


ツクヨが捕まってるから。


だから、助けなきゃ!


……でも、どうやって?


無理だろこんなの。


僕みたいな最弱職が足掻いたって、意味なんてないんじゃないのか?


だって、レベル1でも上級職のツクヨが手も足も出ないんだぞ。


そんな奴に僕がどうにか出来るわけない。


……じゃないだろ!


何を言ってるんだ、僕は!


この世界に来る前に言ってたじゃないか!


この世界の人たちを笑顔にするって。


なのに、たった一人の少女を笑顔に出来ずに泣かせている。


……あ、やばい。


もう、目を開ける事すら出来なくなってきた。


この時、全ての五感を失ってしまった。


そして、僕は、音無 雫は───────────────────────────────────────────────────────────死んでしまった?



ここは、どこなんだろう。


何もない、殺風景な部屋。


でも、どこか安心でき、何より暖かい。


暖かいけど、僕はこれよりも暖かいものを知っている。


知っているけど、二度と会う事が出来ないだろう。


だって、僕は死んでしまったのだから。


「まだ死んでなんかいませんよ」


「え? でも、僕は確かに心臓を貫かれたはず。それに、誰?」


そう、今僕の目の前には金髪ロングで翠眼の女性がいる。


その女性の服装は純白のドレスにヒールで、その純白のドレスに包まれている膨よかな胸が僕の視線を釘付けにする。


「私ですか? 私はユリエリア、女神よ。それで、あなた、音無 雫さんの心臓は貫かれました。ですが、お詫びを兼ねて私が体を修復しましたのでご安心を」


「そうなんですか、ありがとうございます! それでは、早速戻してください! 助けたい人がいるんです! 早く行かなきゃいけないんです!」


「その事は知っています。でも、慌てないでください。この世界は、他の世界から切り離されているので、この世界にどれだけいても、他の世界の時間は進みません」


「理屈はそうかもしれませんが、心配なんですよ!」


「雫さん! 今のあなたが行っても無駄死にするだけです!」


「じゃあ、どうすればいいんですか」


「さっきも言ったじゃないですか。お詫びを兼ねてって。本来、雫さんは異世界に転移される前にここに来るはずだったのですが、手違いでなんの能力も与えずに転移させてしまったのです」


「というと?」


「雫さんは、最上級職に就くはずだったんです」


「え? 本当に、僕は最上級職に就くはずだったんですか?」


「はい。ですが、一度決まった職業は変える事は出来ないので、あなたに5つの能力を与えます。本来は1つしか与えないんですよ」


「何を言ってるんですか? 何が『本来は1つしか与えないんですよ。』なんですか? ユリエリアさんが、ちゃんとしていれば、こんな事にはならなかったはずです」


それは、事実で二度と覆らない事。


「確かにそうです。ですが、私が手違いを起こさなければ、雫さんは奴隷商のところなんて行かなかったはずですし、まず奴隷を買えるお金がないはずです」


「確かに奴隷商の所には行かなかったと思いますが、奴隷を買えるお金はあるはずです。だって、僕にお金をくれたのは、王妃様なんですよ。例え、ユリエリアさんが女神でも、この事実を捻じ曲げるような事出来ないと思います」


「分かりませんか? 私をよく見てください。」


僕は、言われた通りユリエリアさんをよく見た。


……え? まさか、本当に。


「はい。私が王妃、マリア本人です。ですので、私が雫さんにお金をあげて、抱きしめたんです」


……心読めるんだ、この女神さん。


「ユリエリアさんが、王妃様なのは理解しました。ですが、お金の事は納得してませんよ。ユリエリアさん、あなたはみんなに金貨10枚あげたんじゃないんですか?」


「いいえ。私がお金をあげたのは、雫さんだけです」


「それは、何故?」


「何故かと言われたら、雫さんの事が気に入っているからでしょうか」


「そうですか。……照れちゃいますね。それで、チートにはどんなのがあるんですか?」


僕は本題に戻した。


「分かりません、そんなの。チートの数は多いんですよ。そんないちいちチートの能力なんて覚えてられません」


えぇぇぇぇぇ。


そんなのでいいの?


ユリエリアさん、女神ですよね?


「はい、女神ですよ」


心読むのやめてもらえませんかね。


「分かりました、やめます」


「ありがとうございます。それで、チートはどうなるんですか? 把握していないのであれば、チートは使えそうなものを5つ与えてくれればいいですよ」


「その心配はいりません。この紙に書いていますから」


そう言って、ユリエリアさんが何もない空間から出した紙の枚数は、100枚以上。


聖剣やら、魔剣やらなどの武器系チート。


死に戻りや、セーブ機能などの、タイムリープ系チート。


単純に、ステータスを底上げする加護系チート。


これよりもたくさんのチートがあったのですが、紹介なんてやってたらきりがありません。


僕は、その紙の束を受け取り、床に広げて見る。


……加護系チートはいらないな。


加護系チートは後々、手に入れることが出来るからな。


となると、タイムリープ系チートと、武器系チートは絶対に欲しい。


これで2つだから、後3つ。


知識系チートもあれば、後々楽になると思うから、これで3つ目。


この神の祝福ってなんだろう。


神の?


いや、ちょっと待て。


さっきの加護系チートには、……やっぱり【神の加護】になってる。


危ない、危ない。


後々手に入れる事が出来るのは、【神々の加護】だから、この【神の加護】とは何かが違うはず。


「ユリエリアさん。【神の加護】と【神々の加護】って何が違うんですか?」


「基本的には同じですが、【神の加護】は【神降ろし】という《スキル》が追加されています。【神降ろし】というのは、名前の通り、神を身体に降ろし、ステータスを上昇するっていうものです。ちなみに、【神降ろし】で降ろされるのはあなたの場合、私ですのでよろしくお願いしますね」


なるほどね。


後は、この【神の祝福】や【魔王の祝福】などの、祝福系チートか。


女神が【魔王の祝福】なんて与えるのはどうかと思うけど、まぁいいだろう。


ちなみに渡された紙には、1枚1枚にチートの名前と、その内容が書かれている。


祝福系チートは、主に特定のステータスを底上げして、《スキル》を追加するって感じなのか。


加護系チートとあまり変わりはないか。


……どうすれば効率よく強くなれるのだろうか。


今の所は、武器系チートの【妖刀村正】と、タイムリープ系チートの【セーブ&ロード】と、知識チートの【叡智の図書】と、加護系チートの【神の加護】の4つ。


……何これ?


【精霊の祝福】 MPと魔力を+10000する。《スキル》【蘇生】【魔力還元】【全属性耐性】を覚える。


【魔力還元】というのは、よく分からないが、【蘇生】は名前の通り、死んだ人を生き返らせるという事だろう。


なら、決まりだな。


これで、いこう。


「ユリエリアさん、決まりました。僕が選んだのは、【妖刀村正】、【セーブ&ロード】、【叡智の図書】、【神の加護】、【精霊の祝福】の5つ」


「これでいいんですか?」


「はい」


「分かりました。チート能力を決定しました。それでは、雫さん。頑張ってくださいね!」


「はい!」


そして、僕はドロドロと意識が溶け始め、意識を失い、現実世界へと戻った。



音無 雫 15歳 ヒューマン 11月23日生まれ AB型

職業 治癒術師

レベル 1

【HP 103/103】 【MP 10127/10127】

攻撃 102

防御 103

敏捷 106

器用 110

魔力 10124

《スキル》 再生 常時回復 状態異常無効 癒光 癒輪 省エネ 念話(特定の人のみ) セーブ&ロード(1日3回) 叡智の図書

《スキルポイント》 0

《加護》 神の加護(全ステータスを+100する。全ての《スキル》を強化する。《スキル》に【神降ろし】追加)

《祝福》 精霊の祝福(MPと魔力を+10000する。《スキル》に【蘇生】【MP還元】 【全属性耐性】追加)

《武器》 妖刀村正 流天(銀貨3枚の刀剣)

《称号》 ハズレ勇者 神に気に入られし者






















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[一言] つーかさお詫びするくらいなら転移そのものをさせるなよ
2023/05/06 18:14 退会済み
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