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2-5 過去と分岐

「しずく。これ、何?」


「手紙」


「手紙ですけど、手紙の内容の事を言ってるんですよ!」


「別に普通じゃないか?」


「どこが普通なんですか! 何が、『シズクのルナより』ですか! それに、いつどこで女を抱き枕にしたんですか!」


「どこでって言われたら、ルナの家って答えることしか出来ない」


「私、ルナって人知らないんですけど!」


「そんな事言ってもだなぁ。じゃあ、お前は信じるのか? 今の俺は未来から来たって」


「信じるわけないです」


「だろ? だから、言っても仕方ないんだよ」


「未来から来たっていうのは、本当ですよ」


「ツクヨ。お前さ、ちょっとは空気読めよ。後もうちょっとで収まってたんだぞ? それが、お前の所為で、お前の所為で……」


「ツクヨ、本当にしずくは未来から来たんですか?」


「はい。しずくさんは、嘘をついてないです」


「……しずく、疑ってすみません。ですが、未来から来た、なんて他の人には言わないでくださいね。バカにされますから」


「はい、はい。……あ、そうだ。お前らに渡しとかないとダメな物があったんだ」


そう言って、俺は異空間指輪で異空間を呼び出し、そこから二つの指輪を取り出した。


「この指輪をお前らに渡そうと思ってたんだよ」


まぁ、この指輪はこいつらが操られるのを防ぐ為の物なんだがな。


「指輪ですか? それに、さっき、空間が歪んだように見えたんですが、気のせいでしょうか?」


ナフタリアは、目を擦りながら聞いてくる。


「気のせいじゃないぞ」


「そうですか。では、指輪を早く渡してください。保管しますから」


あの、『そうですか』って言い方、絶対信じてないよな。


どうでもいいが。


「保管したら意味がない。この指輪はな、俺が造ったオリジナルの指輪なんだぞ。この指輪を着けているとな、状態異常を受けなくなるんだぞ。だから、着けていてくれ。頼むから」


「仕方ないですね。そこまでしずくが言うなら、着けてあげます」


そう言って、ナフタリアは右手の薬指に指輪をはめた。


「それ、婚約指輪じゃないからな。ほら、ツクヨもさっさと着けろ」


そう言って、ツクヨに指輪を渡した。


「ありがとうございます。大事に保管します」


「だから、保管すんな。何で、そんなに保管したがるんだよ」


ったく、こいつらは本当にバカだな。


一応言っとくか。


「お前ら、俺を舐めていたら痛い目見るぞ。お前らが例え上級職でも、今の俺には勝てないぞ」


「本当に言ってるんですか? 治癒術師のしずくが私に勝てるわけないじゃないですか」


「じゃあ、証拠見せてやるよ。ほら、これが証拠だ」


そう言って、俺はジャケットの内ポケットから、ステータスカードを取り出して渡した、


ナフタリアは、渡されたステータスカードを凝視していた。


よっぽど信じられなかったんだろうな。


「だから、造りたい物があるから、少し黙ってろよ。もし、邪魔したら、どうなるか覚悟しとけ」と言って、俺はある物を造り始めた。



「……何だよ。何でずっと見てるんだよ」


「何をしてるのかなぁって思って」


「しずくさんって、性格変わったような気がしましたが、あまり変わってないですね。前より、口が悪くなっただけで」


「あのな。性格が変わったんじゃなくて、戻したんだ。確かに元の性格に戻したんだが、そんなに変わってないなとは思ってはいたがな」


「そうだったんですか。でも、どうしてそんな猫を被るなんて事したんですか?」


「そうだな。猫を被ったのは、俺の一番大切な人の為なんだ。猫を被る前の俺は、人を殺してしまったんだ。いや、正確に言うと、人を死なせてしまったと言うべきだな。直接手を出してはいなかったが、それが俺の心を蝕んだ。だから、部屋に引き篭もった。ストレスで髪色も失った。今の髪の色は黒だけど、これは染めてるだけだから、そろそろ落ちて来る頃だと思う。でだ、その一番大切な人は、そんな俺を怖がりもせず、一緒に居てくれたんだよ。それが、俺は嬉しくて、嬉しくて、仕方がなかったんだ。だって、その一番大切な人以外、俺と話をする奴なんていなかったんだからな」


「しずくの髪の色が後もう少しで、私と同じ色になるんですか。これは、嬉しいですね」


「なぁ、そこ? 髪の色とかどうでもいいだろ」


「そうですね。じゃあ、聞きます。しずくさんって引き篭もりだったんですね」


「あぁ、引き篭もりだった。2年くらい引き篭もってた。今から1年前まで引き篭もってた」


中学1年生から、中学3年生まで引き篭もってた。


もう、その頃には両親は他界していたから、誰も文句は言わなかった。


それをいい事に、俺は動きもしなかった。


ずっと、暗い部屋で一人にいた。


風呂に入る気にもならなかったから、入らなかった。


動いたのは、トイレに行く時くらいだ。


さすがに、このままだとまずいと思ったのか

優香は無理矢理風呂に入らそうとしたし、外にも出そうとした。


だが、それを俺は拒否した。


優香があまりにしつこいから、怒鳴った事もあった。


多分、その頃から優香はずっと俺の隣にいた。


眠る時も、ご飯を食べる時も、ずっとだ。


その頃から、優香は学校にも行かなくなってしまった。


俺の為だけに、そんな事をさせてしまったんだ。


それはダメだと思って引き篭もるのをやめた。


そこからは、一生懸命勉強を頑張った。


そして高校に受験し、無事に受かって、高校に入学する時から、猫を被り始めて、それからしばらく高校生活をして、異世界に召喚されて、現在に至る。


「よし、完成だ」


俺は、そこでナフタリアとツクヨが寝ている事に気がついた。


それも、俺にもたれかかって寝ていたのだ。


右にナフタリア、左にツクヨ。


だから、俺はこいつらをベッドに運んでから、俺もベッドに入り、眠った。



さてと、今日はついに前回のルートで人生が変わったイベントがある日だ。


取り敢えず、今回は絶対に前回のような事にはならない。


今はもう兵士が訪ねて来た後だ。


それで、今俺が何をしているのかというと、イメチェンだ。


髪色を落として白髪にし、右目に青いカラーコンタクトを入れ、その上に眼帯をする。


「完璧だな。後は装備を纏って、必要な物を異空間指輪に入れたら、準備は終わりだな。ナフタリア、ツクヨ。準備は出来たか?」


「はい。あの、しずく? その格好で行くんですか?」


「そうだが、どこか変か?」


「いえ、変なとこはないです。ですが、私たちは王宮に行くんですよね?」


「あぁ。だからこその格好だ」


「しずくがそう言うならいいんです」


「なら行こうか」


「あの、ツクヨはどうしますか? まだ寝てますが」


「まだ、あいつが寝てるの忘れてた」


俺はまだベッドで寝ているツクヨに近づき、抱き上げて愛の言葉を囁いた。


よし、起きた。


「ツクヨ。早く準備しろ!」


「まだ寝たい」


「やめとけ。また恥ずかしい夢を見る事になるぞ」


「分かった。あんな夢、二度と見たくない。もっとしずくさんとラブラブな夢が見たいから、もう一回寝る」


こいつ話を聞いてんのかと思いながら、「寝るな!」と言いながらツクヨの頭を叩いた。


「痛い」


「当たり前だろ。叩いたんだから」


「しずくさん、着替えるの面倒だから着替えさせて」


「あぁ、もうくそっ! 分かったよ!【空間転移】!」


「一瞬で着替えさせられた。しずくさん、何をしたんですか?」


「【空間転移】を使って、パジャマと装備を入れ替えたんだ」


「便利な《スキル》だね」


【空間転移】 何かと何かを入れ替えたり、何かを他の場所に転移出来る。転移出来る距離の制限無し。


【空間転移】は、主にリボルバーに弾丸を詰める時に使う。


手で詰めるより、【空間転移】で弾丸を転移して詰めた方が早いし、手間もかからないからな。


さてと、準備も出来た事だし、王宮へと向かいますか。



王宮へは前回と違って、【空間転移】を使って行く。


一瞬で王宮の前に着いた俺たちは、兵士に案内されて王室へと向かった。


そして今、俺は冤罪を着せられるところまで来た。


前回と同じ様な流れでここまで来たが、ここからは前回とは違う。


「娘たちよ、こちらに来なさい」


そう王様が言うと、二人の王女さんが左にあるドアから出て来た。


「よっ! 会いに来たよ!」


「私に話しかけないでください!」


「まぁまぁ、そう言うなよ。ここへ来た理由はな、お前らに冤罪を着せられる為に来たんじゃないんだよ。俺は二人の王女さんに会いに来たんだから」


そう言って、俺は二人の前まで【空間転移】で転移した。


「お前にはこれをあげる」


俺は異空間指輪で異空間を呼び出し、この王女さんの為に造ったリボルバーを渡した。


「これはお前が欲しがってた物に、少し改良した物だ。これの使い方は、この引き金を引くだけ。それでこの弾丸が全て無くなれば、また弾丸を詰めればまた使える」


「あの時は造らないって、言ってたじゃない。だから、こうやって計画を実行したのに。無意味だったじゃない」


「そんな事言ったっけ?」


「言いましたよ! それに、何でそんなに私好みの格好をしてるんですか!」


「お前の為にこの格好したんだぞ。もっと喜べ!」


「何で私があなたの為に喜ばないといけないんですか!」


「そんな事言ってもいいのか? このリボルバー、取り返すぞ」


「これ、リボルバーって言いますの?」


「あぁ。このリボルバーは現代兵器でな、これ単体でも十分強いんだが、この様に雷魔法を腕に纏わせて撃つと、もっと強いぞ。ゴブリンキングだって一撃だったろ?」


「はい。私とても凄い物を手に入れてしまったのですね?」


「あぁ、この世界に三つしかないぞ。俺が二つ持ってて、お前が一つ持ってる。誰にも取られるなよ?」


「取られません、約束します。あの、私と友達になってくださいませんか?」


「いいぞ。お前が友達になってくれたら、俺の計画が上手く進むからな」


計画とは、治癒術師の地位向上と奴隷制度の撤廃だ。


「ありがとうございます。あの、私の名前はルミエールと言います。あなたの名前はオトナシ シズクで合ってますよね?」


「あぁ。名前の呼び方は何でもいいぞ」


「はい。これからよろしくお願いしますね、シズク」


なんかいきなり、仲良くなったけどどうしよう。


後、俺の性格なんだが、うまい感じに混ぜ合わさってるよな。


猫を被っている時の性格と猫を被っていない時の性格が。


前回は王族を殺すとか言ってしまったけど、無理だったわ。


まぁ、俺だって無理に人を殺したいなんて思ってないしな。


もし、俺に敵対すれば殺すと思うが。


「さてと、次はお前だな」


そう言って、もう一人の王女の方へ向いた。


「私ですか?」


「あぁ。お前だ。取り敢えず、【癒光】!」


俺と王女さんが光に包まれる。


なんか、前より光が強くなってるような気がするな。


「よし! 成功のようだな。これで、お前も自由に動けるようになったな」と、光が全て消えた頃に言った。


「あの、本当に動けるようになったんでしょうか?」


「あぁ、大丈夫だ。倒れそうになったら、俺が支えてやるから安心しろ」


「はい。頑張ってみます」


そう言って、王女さんは足を床に着き、徐々に車椅子から腰を浮かした。


そして、手を離して立った。


「ほら、立てた」


「本当に立てました! 私生まれて初めて立てました! ありがとうございます。私の目には狂いはなかったんですね」


俺が首を傾げて、『私の目には狂いはなかったんですね』という言葉に頭を悩ませていたら、ルミエールが「お姉ちゃんは初めてシズクの事を見た時から好きなんだよ。そういうの一目惚れって言うんだっけ。でも、私はそれに反対だったから、シズクを殺そうとしたんだけどね。でも、ちゃんと殺そうとしたのには、理由があるんだよ?王族なのに、全然強くないし、体も弱いどころか、動かない、なんて好きな人に思われたら可哀想でしょ? でも、その心配はいらなかったみたい。シズクは多分この世界で最も素敵な男の人だと思うから」と言ってきた。


「あわわわわ、何を言ってるの、ルミちゃん!私は別にオトナシくんの事なんて好きじゃないもん」


「ルミちゃん、こういう事は、他の人に教えたりするのはダメなんだよ? 分かる、ルミちゃん」


「ルミちゃん、ルミちゃん言わないでよ!シズクは、かっこいいし、優しいし、料理も上手いし、完璧だから、私も好きなんだから!」


「何を言ってんの、お前。……そうかぁ、ルミちゃんも俺の事好きなのかぁ!」


「うぅぅぅ」


うわっ! 泣かせちゃったよ。


女の子泣かせちゃったよ!


「泣くなよ! ルミちゃじゃなかった、ルミエール!」


「泣いてないもん!」


「泣いてんじゃん。目が潤ってるよ。後もう少しで、垂れそうだよ」


「あの、オトナシくん。あの子たち、操られてるけど大丈夫なの?」


「いいんだよ。だって、あれ。演技だし。……おい、ナフタリア、ツクヨ、そろそろやめとけ」


「もういいの?」


「あぁ。さてと、神童。お前さ、よくも俺の女に手を出したな」


「何を言ってるんだ? 証拠なんてないじゃないか!」


「証拠は無いけど、分かるんだよ! さっきから【魔力感知】が反応してたんだよ! お前からな!」


「あの勇者、最低ね! あんな奴にお姉ちゃんはプロポーズされたと考えると、寒気がする。お父さん、その勇者この国から追い出して!」


「それは無理なんだよ、ルミエール。あんな奴でも勇者は勇者。我慢しなさい」


「何でよ、お父さん! シズクの事は酷く言ってたのに、何であの最低勇者には何も言わないのよ! おかしいじゃない!」


よーし、もっと言ったれ!


「そうだぞ! 王様は俺の事、ハズレ勇者って呼んでくれたよな? だから神童の事は、淫乱勇者と呼んであげてください! 神童は女の敵ですから!」


「分かった。シンドウ君は、淫乱勇者と呼ぶ事にする。後、オトナシ君はハズレ勇者ではなく、本物の勇者として扱う」


「サンキュー、王様!」


「オトナシ君。あまり調子に乗らないの」


「シズクって、結構調子に乗りやすいよね」


「すんません。それでは、王様。今日本当にするはずだったお話を始めようか」


今日はいい気分だ。


神童を貶めてやったわ。


だが、いい気分なのは今だけで、すぐに厄介な事が巻き込まれる事を、今の俺に知る由もなかった。

























後で、文を変える可能性があります。

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