2-3 証明するための準備と装備新調
「キャーーー! お姉ちゃんが、お姉ちゃんが、お姉ちゃんがーーー!」
俺を眠りから目覚めさせたのは、小さい女の子の絶叫だった。
「やかましいわ!」
俺はその絶叫を止めるために手元にあった枕をその女の子に投げた。
「というか、ここどこだよ?」
俺は見た事もない部屋で眠っていたのだ。
「ん? 起きたの? おはよう」
俺は声が聞こえた方に、顔を向けた。
そして俺の目に映ったのは、昨日の馴れ馴れしい女だった。
「何で、お前がここにいる?」
「何でって。ここ、私の部屋だし」
「何で俺はこんな所にいるんだ?」
「私が運んできたから」
「なぁ、俺言ったよな。ほっといてくれって」
「言ったね。それがどうしたの?」
「『それがどうしたの?』じゃないわ!何で、俺をほっといてくれなかったんだよ。もう、俺は生きる意味がないんだよ!生きてても仕方がないんだよ!」
「そんなの知らないもん。生きる意味がないなら、一緒に私が見つけてあげるから、生きる意味がないとか言わないの」
……はぁ、こいつに何を言っても意味ないな。
唯、疲れるだけだ。
「じゃあ、お前。一つ話を聞いてくれ」
「私、お前じゃないもん。私にはルナ=ゼルンドっていう名前があるもん。……私、あなたに名前を教えた」
「だから何だ?」
「あなたの名前も教えて欲しい」
「音無 雫。音無でも雫でも、呼び方は何でもいい」
「シズクね、覚えたわ。それで、私に話したい事って何?」
「人を操る魔法ってあると思うか?」
「うーん。あるとは思うけど、確証はないなぁ」
「使えねぇな。……じゃあ俺1人で、勇者3人を相手に出来ると思うか?」
「出来ないわね。シズク、弱そうだもの」
こいつ、後で痛い目見せてやる。
……そういえば、あの時、ナフタリアとツクヨの動きが明らかにおかしかったんだよな。
あれは、絶対何かに操られていた。
そうじゃないと、あいつらが俺を見向きもせずに、あのクソ野郎の所に行くわけがない。
どうすりゃいいんだ?
今、王宮に乗り込んだって戦力不足。
……いや、王宮に乗り込む必要性がそもそもあるか?
俺ってあのクソ女に死んでって言われた後、すぐに俺はセーブしていたはずだから、あの時点に遡って、今のような状況に陥らないようにした方が楽だからだ。
それで、今更なんだが【セーブ&ロード】は、マジでチート中のチートだから、1日に3回なんて制限がついてるんだ。
どこがチートなのかというと、セーブ時点まで遡る前のステータス、装備、記憶、体をそのまま引き継いでいけるのだ。
だから今の内に俺はセーブ時点まで遡る前に強くなっておいた方がいいだろう。
そして、強くなるには魔物を倒すしかない。
でも、今のままでは効率が悪い。
効率を上げるには、新しい装備がいる。
新しい装備を調達するには、《スキル》【錬成】と【創造】を習得しなければならない。
新しい装備なら、普通に買えばいいと思っているそこのアホ。
無理に決まってるだろ。
金がないんだよ、金が!
だから、俺が自分の装備を造るんだよ!
それで、《スキル》の習得の仕方は簡単だ。
ステータスカードに記載されているスキル習得可能欄の中から目当ての《スキル》を見つけ、それを手でなぞるだけ。
「おい、ルナ。今日から三日間、俺はこの部屋に籠る。お前に拒否権はない」
「何かやるべき事を見つけたのね。頑張って、悔いのないようにするのよ」
「あぁ、ありがとう」
ルナから許可は下りた。
後は【創造】と【錬成】を習得し、その二つの《スキル》を駆使して、俺だけの装備を造って、証明してやる。
ナフタリアとツクヨは俺が嫌いだから、離れたわけではないって事を。
もし、操られていたというだけなら、俺はまだ独りではない。
そして、必ずあのクソ王族には恥をかかせてやる!
新たなる目標を掲げて、三日が経った今日、遂に完成した。
回転式拳銃、いわゆるリボルバーを二丁と、刀剣、そして防具とアクセサリーが。
【叡智の図書】で、使えそうな鉱石を見つけては、【創造】し、その創った鉱石で【錬成】しまくった。
満足のいく装備を造るのに、丸々三日かかった。
何回、【創造】しては【錬成】したか分からない。
だが、その分性能は期待出来る。
性能の前に、まずは使った鉱石を紹介する。
この世界と異空間の狭間にだけあるディアン鉱石。
あらゆる状態異常を防ぐプレーベ鉱石。
衝撃を吸収する鉱石であるアブソーブ鉱石。
斬れ味を良くし、殺傷能力を上げる鉱石であるスライ鉱石。
不壊属性を持っている鉱石であるノブロ鉱石。
この世界で最も硬い鉱石であるハディ鉱石。
魔力を吸収し溜め込む鉱石であるアブセイブ鉱石。
熱に強い鉱石であるヒート鉱石。
可燃性の鉱石であるフラム鉱石。
魔力を吸収し溜め込んだ状態で壊すとその魔力を放出する鉱石であるリレイズ鉱石。
次に造った物を紹介する。
アクセサリーは、ディアン鉱石で造った指輪とプレーベ鉱石で造った指輪を二つ。
ディアン鉱石で造った指輪は、異空間を自分で決めた範囲に出し、その異空間にアイテムや使わない武器などを入れ、保管する倉庫として使用する。
刀剣の刃は、アブソーブ鉱石、スライ鉱石、ノブロ鉱石、ハディ鉱石の四つの鉱石で造った完全オリジナルだが、刀剣の柄は、よく分からんかったから、流天の柄をモデルにした。
防具のプレートは、アブソーブ鉱石、ノブロ鉱石、ハディ鉱石の三つの鉱石で造った。
コートとTシャツとズボンは使い回しだが、コートは少し改造して、ジャケット風にしてみた。
二丁のリボルバーは、ノブロ鉱石、アブセイブ鉱石、ハディ鉱石の三つの鉱石で造った。
火薬は、フラム鉱石だけで作った。
フラム鉱石は、密閉空間で一度にたくさん燃やすと大爆発する。
フラム鉱石の量次第では、極大火属性魔法に匹敵すると思われる。
弾丸は、ヒート鉱石、リレイズ鉱石、ハディ鉱石、ノブロ鉱石の四つの鉱石で造った。
二丁のリボルバーの全容。
二丁のリボルバーは、音速を超える速度で最短距離を突き進み、絶大な威力で目標を撃破する現代兵器で、全長は約35cm、六連の回転式弾倉で長方形型のバレル。
弾丸もハディ鉱石製で、中には粉末状のフラム鉱石を圧縮して入れてある。
弾丸はフラム鉱石の爆発力だけでなく、雷魔法により電磁加速されるという小型のレールガン化している。
その威力は最大で対物ライフルの十倍以上。
だが、今の俺は雷魔法が使えないから、二丁のリボルバーの本当の力が使えない。
だから魔物を倒して、《スキルポイント》を貯め、雷魔法を覚えなければならないのだが、今日は疲れたから、もう寝よう。
少し短くなりました。