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また誰かがおもらし

それから数日経ったある日。その日のセラピーでは、「私のこころ」というテーマで絵を描くレッスン課題が課せられた。栞たちはそれぞれ自分の画用紙に、思い思いに色エンピツやクレヨンを走らせて絵を描いていた。


レッスン開始から1時間ほど経った頃、栞の近くでかすかに床に水がこぼれる音がしはじめた。


「先生、かけるくんが、失敗しちゃった」


誰かの声に、栞がびっくりして振り向くと、栞の左の列でそれは起こっていた。窓を背にしているため、逆光で表情までは読み取れなかったが、翔が椅子に座ったままうつむきながら、ジーンズから僅かずつ水を滴らせていた。


彼は自分とほぼ同年代の男の子だ。どうやら一旦いくらかの量を漏らしてしまったあと、それ以上漏らさないために必死で抑えているように見えた。


「ぁ・・・あ・・・」


かすかなため息のような声を漏らしながら、まるで女の子のように内股に両脚を擦りあわせて一生懸命我慢しているにもかかわらず、それはあふれてきてしまっているようだった。


《男の子がおしっこ我慢できないなんて・・・》


栞がそう思ったとき、恭子先生が翔の席に歩み寄り、小さな声で言った。


「どうしてだまってたの?」

「ごめんなさい・・・言えなかった」

「まだ、ダメねぇ・・・」

「・・・」

「しちゃいなさい」

「はい・・・」


そう言うと、翔は悟ったように徐々に脚の動きを止めた。次の瞬間、それまでよほど我慢していたのか、『ジョォォォ』とジーンズの中に激しく水流をくぐもらせる音をさせたかと思うと、そこからあふれ出した大量の水が堰を切ったように椅子から流れ出し床に飛び散っていった。


《ジーパン穿いたまま、おしっこしちゃってる・・・》


栞はその光景に衝撃を受けた。



恭子先生が手かごを取りに行き、それを持って戻ってくると、翔は椅子の上にあふれた水と、下の大きな水しぶきを伴った水たまりを気にしながら、内股でゆっくりと立ち上がった。中腰となったジーンズのおしりは、丸い形でひどく濡れていた。


「恥ずかしいけど、我慢してね」


恭子先生はそう言って軽く彼に目配せしたあと、まるで慣れた手つきで彼のジーンズのホックを外しはじめた。翔は逆光のせいか頬を赤らめながらもすっきりした表情に見えた。


《え、ここで脱がせるの? うそ?》


みるみる翔のジーンズとショーツが恭子先生の手によって脱がされていった。彼の素肌が露わになると、それを恭子先生がタオルで丁寧に拭いていた。手かごには紺のブルマーが掛けられていた。


栞は、見てはいけないと思いつつも、すぐ隣で行われているそのシルエットが否応なく横目に飛び込んでいた。




《毎日じゃないけど、この数日の間に、それもわずか2時間のレッスン中に2人もおもらしするなんて。そして、どうしてその場で脱がされるの? どうして着替えがブルマーなの? それにかけるくんは、初めてじゃないみたいだし・・・》


栞がそんな疑問を持つのも当然だった。そして、明くる日、それは訪れた。

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