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目覚ましが鳴ってもしばらくは起きられなかった。最近はいつもそう。眠った気がしない。もっともベッドの上にも障害物がいろいろ積み重なっていて、うっかり寝返りを打てばそれが崩れてくると頭のどこかが覚えている状況では、熟睡などできるものではないけれども。
お風呂を使うかどうか迷い、でもきちんと湯船に浸かった方が化粧ののりがいいので、浴槽にお湯を張った。
浴槽から出ると、半ば予想していたとおり立ちくらみがした。朝食を食べなかったせいだ。喉を通る気がしなかった。
障害物でいっぱいの浴室の外で、ブルドーザー方式で障害物を排除して、バスタオルを広げてそこに横になった。
もしもこれがなにやら重要な病気の兆しであったとしても、救急車なんて呼べない。救急隊員の目にこの部屋を晒すのは、二軍パンツを披露するのより恥ずかしい気がする。誰にも知られずのたうちまわっていたほうがましだ。
そしてまた心の中で、呪文のように唱えている。こんなことはなんでもないこと、たいしたことではないのだ、と。