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黒い街  作者: 白瀚
3/3

記憶と名前

「その花束、どこで買ったの?」


落ち着いたような、それでいてどこか幼い声で少女は言葉を続けた。


「お兄さん、聞いてる?」


首を傾げ、僕の顔をのぞき込んだ少女。

それと同時に白い髪が重力に従い、サラリと垂れた。

少女の外見が他と違うからなのか、僕の口は開いたまま。

たった一つの動作にさえ、目を奪われた。


「あ、うん。」


「そっか、その花束 素敵ですね」


やっと我にかえり、少女へと言葉を返す。

少女は、良かった とふわりと微笑み 花束を指さした。


「え、あぁ、そう、だね…。」


「どこかで買ったの?」


そう聞かれて、言葉に迷った。


不思議そうに、僕を見つめる少女は紅い瞳を逸らさずにいる。


僕は気づいたらココに立ってて、知らない花束を手にしていたんだ。

ここに来た記憶も花束を買った記憶もないんだ。


何て、記憶喪失疑われて病院行きか、笑われるに決まってる。

ただのヤバイ奴じゃないのか。


「お兄さん?」


喋らなくなった僕を心配したのか、少女は眉を潜めて僕を見た。


「いや、この花束は……」


何とか言葉を探して口に出そうとしても、その肝心の言葉が出てこない。

それにあう言葉が無いのだ。


何だか情けなくなって、途端に泣きたくなった。


自分はいつからこんなに涙腺が緩くなったのか。

恨めしくもなったが、自分にそんな事を言っても仕方が無かった。


僕は気づいたらココに立っていて。

気づいたら花束を手に持っていた。


その前の時間など、覚えていなかった。


「お兄さん、名前は?」


少女は気を利かせたのか、ただ会話を変えたのか。

僕の名前を聞いてきた。


その瞬間、僕はどん底に突き落とされた。


まさかとは思ったが、僕は自分の名前さえも、覚えていなかったのだ。

目の前が真っ暗になると言うのは、こう言う事なのだろうか。



「、名前は…」


何とか思い出そうと口を開いたが。

やはり何も出ない。

悔しいやら怒りやらで、グチャグチャになりそうだ。


「やっぱり」


少女は微笑みながら、言葉を発した。


゛やっぱり゛?


僕は少女を見つめ、首を緩く傾げた。

やっぱりとは、どういう事だろうか……。


「お兄さん、記憶ないでしょ」


ドクドクと動悸激しくなり、そんなに分かりやすかったのかと、自分を嘲笑したくもなった。


「うん、無いんだ、ココに来た記憶も。」


全部。


下を向いた瞬間に、涙が落ちた。

止まる気配の無い涙を、少女は指で拭ってくれた。

その行動までも、落ち着いていて。

こちらまで、安心出来るようだった。


「ココに居るなら、名前は必要だから」


ポツリと、聞こえるか聞こえないかの声で少女は呟いた。

上手く聞き取れなくて、聞き返そうとした時。

少女は笑って僕に言ったのだ。


「記憶も大切だけど、名前が無いと不便ですよね?」


「う、うん。」



少女が僕から離れ、腕を後ろに回し、また僕の目の前に立った。


そして。



「白亜、とかどうでしょうか?」



ズキリと、頬が痛む。

突然の事で、思わず声を出してしまった。

周りには人が沢山行き交っている、ジロジロ見られるのは好きではない。


「…、痛っ……」


痛みは治まらず、逆にどんどん痛みを増していく。

少女は微笑んだまま、僕を見て、言った。



「その名前、忘れず管理してね」



あまりの痛みに気が遠くなり始めた瞬間に、少女は僕にそう言った。



「では、また シャッター街で」



゛白亜゛



それを最後に、僕の視界は 真っ黒い闇に包まれた。






大分支離滅裂ですが……

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