表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/18

★夜伽

 次に目が覚めたときは、この時代で過ごせる最終日の朝となっていた。


 俺はすっかり体力が回復したが、優里はまだ寝込んでいるとのことだった。

 ただ、熱が下がり、おかゆも食べているとの事だったので一安心だ。


 波美や葉菜、彼女たちの父親から聞いた話では、盗賊四人は藩の役人に連れて行かれたらしい。

 庄屋の娘を誘拐するという大罪を犯したのだ、もう彼女たちの前に姿を現すことは二度とないということだった。


 ――昼頃になると、優里も元気になった。

 彼女に会いに行くと……少しやつれてはいるが、ほとんど普段と変わりない優里に戻っていた。


「勇二さんと、少しでも長く夫婦として過ごしたくて……そう思ったら、体調も良くなりました」

と、彼女は嬉しい事を言ってくれた。


 無理しなくてもいい、と言ったのだが……

 どうしても、残された時間を俺と過ごしたいと言うことで、それは俺も同じだった。

 そして、少しでも多く、この世界の美しい情景を目に焼き付けておきたかった。


 俺の思いに対して、彼女はけなげに応えてくれた。

 最初に出会った川原、彼女たちの氏神である水龍神社、美しい田園風景……。


 ごく近場を回っただけで、これだけの素朴で、忘れられた日本の風景を見て回れる。

 それも、とびきり可愛い女の子と共に……。

 同い年ぐらいと言うことで会話も弾み、本当の恋人同士として過ごす事ができた。



 夕刻、帰って来てから、俺と彼女は二度目の混浴をした。

 少し恥ずかしそうではあったが……丁寧に背中を流してくれる彼女が、たまらなく愛おしく思えた。


 その夜、俺と優里は、同じ床で一夜を明かすことになった。


挿絵(By みてみん)


 薄明かりの中、襦袢のみを身につけた彼女の姿は、美しく、神秘的にさえ思えた。

 そして俺達は、お互いに生まれたままの姿になり、同じ布団に入った。


 最初は戸惑い、少し怖がってもいた彼女だったが……。

 実は俺も経験がないことを告げると、少し驚いたような、少し安心したような……

 そんな胸中を打ち明けてくれた。


 ……そして俺達は、結ばれた。


 できる限り優しく接したつもりだったが……俺自身初めてだということもあり、彼女に嫌な思い、辛い思いをさせたのではないかと危惧した。


 しかし、彼女は涙を浮かべながらも、笑顔を返してくれた。

 そして、ただ一言、


「幸せでした……」


 そう言って、手を繋いでくれた。


 その後、少しだけ眠った……


 ――無情にもスマホのアラームが鳴り、俺と優里は目を覚ました。

 夜明けが近い。

 もうすぐ、ゲートが閉じられてしまう……。

 俺と優里は、最後のお別れをするために外に出た。


「勇二さん……もう、元の世界に帰っちゃうんですね……」


「ああ……残念ながら……こっちの世界には来られなくなる……」


「そう……ですか……でも、私、勇二さんの事、忘れません……そしてもし身籠もっていたならば、大事に、大事に育てて……それで、勇二さんに負けないぐらいの……」


 ……そこまで話したところで、彼女はうつむき、何も話せなくなった。

 俺は、たまらなく切なく、優里の事が愛おしくなって……衝動的に、彼女を抱き締めた。


「……勇二さん……」


「優里……俺、君の事が……好きだ……」


「……私も、勇二さんの事が……大好きです……」


 ずっと思っていたことを、正直に話した。

 彼女も、本当に俺の事を、そう思ってくれているのだろう。


 平成に生まれた俺が、この三百年前の世界に来て、恋人ができた。

 信じられないぐらい可愛らしく、名前の通り優しい女の子だ。

 それなのに、もうすぐ、永久に会えなくなる……。


 ふっと、神の化身・エルの言葉が蘇る。

 現代の何もかもを捨てて、この時代に残ることを選択すれば……。

 ……しかし、そんな俺の考えを察したのか、あるいは、別れは逃れられないものと覚悟を決めたのか……彼女は、笑顔を見せてくれた。


「私、いつまでも勇二さんのことは忘れません。一生……いいえ、年老いて死んでしまったとしても……

私はずっと、勇二さんの事を思い続けます……だから、勇二さんも……三百年後の世界に戻っても、私の事、忘れないでくださいね……」


「ああ……忘れるものか……俺も、ずっとずっと、君の事を思い続けるよ……」


 そして俺達は、夜が明ける寸前まで抱き締め合った――。


 ――現代に戻ると、あいかわらずエルは、ちょこんと座っていた。


「……無事、終わったみたいだね……」


「ああ……分かるのか?」


「まあ、ね。今まで黙ってたけど、ボクは君の記憶、読み取ることができるから」


「……なるほどな。神の化身なら、そのぐらいできても驚きはしない……」


「……その様子だと、まだ迷いがあるみたいだね。このままゲートを閉じるか、それとも三百年前に残るか……」


「……いや、いくらなんでも、向こうに残ることを選ぶと、こっちの世界で迷惑をかけすぎる……」


「……そっか、それを悩んでいるんだ……でも、それなら心配ないよ。ゲートが閉じたときに君が向こうにいたならば……君は、この時代にいなかったことになる」


「……この時代に、いなかった?」


「正確に言えば、この世界にいた痕跡を消すことになるんだ。あの写真、見てごらん」


 エルに促されたまま、家族で映した写真を見てみると……俺だけ、その姿が半透明になっているではないか!


「ど……どういうことだ?」


「ボクなら、この世界で君にかかわった全ての人の記憶と、その痕跡を消してしまう事ができる。そうすれば、誰にも迷惑をかけないまま、向こうの世界に移ることができるよ」


「……エル……おまえは、本当に神の化身だったんだな……」


「いまさらだなあ……で、どうする? もうすぐ、ゲートが閉じる時間だよ」


 ――いよいよ、最後の選択だ。

俺は……。


1.三百年前に移る

2.現代に残る


『身売りっ娘』シリーズのアナザーストーリー『箱入り娘と時空の仙人』がゲーム化されました!

『ふりーむ』や『ベクター』で公開されており、ダウンロードできます!

Windows用のフリーソフトですので、環境が合っていて、お暇のある方は、ぜひ気軽に遊んでみてください(^^)。

評価や感想など頂けますと、ヒロイン一同と共に大喜び致しますm(_ _)m。


ダウンロード元などの専用紹介HPはこちら↓

http://mik.sub.jp/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ