EP.05 光臨祭──とある冬の日
少女は光臨祭についてはよく分からないまま、祭りの会場に行くことにしました。
幸い、去年のように留守番は頼まれませんでした。
去年は使用人数名が少女を阻みました。
留守番をしておいてほしい、と。
だから、少女にとっては初めてのことでした。
「素敵……」
街には雪景色の中、淡い光があちらこちらにあり、とても幻想的でした。
恐らく、キャンドルでしょうか。
その幻想的な光景に、少女は目を輝かせ、通りを歩きました。
「まあ、あの子……」
通りでは、幼い少年が必死に歩いていました。
さながら、あの夢の中の見知らぬ自分のように。
必死に、ただひたすらに、歩いていました。
声をかけてみよう、──そう少女は決意をしました。
他人に話しかけるのはいつ以来でしょうか。
そもそも、まともに話しかけた事などあったのでしょうか。
「大丈夫? 迷子? 」
その声に幼い少年は唖然とした顔で見上げてきました。
やはり、声をかけるべきではなかったのでしょうか。
少女が少し落ち込んでいると、幼い少年はにこりと微笑みました。
──僕、レオニー。君は光の巫女にぴったりだよ。
光の巫女。
それは昨日聞いたばかりの言葉。
でも、レオニー……?
少女の中で、何かが溶けていきました。
ああ、そうだ、私は……。
10年前の同じ日に、少女は、レオニーと約束していました。
──満月の夜にお祈りしてごらん。そうすれば、きっと、いつか会えるよ。
そう、約束をしていました。
「ねえ、あなた、あのレオニーなの!? 」
少女は今まで出したことのない声で彼に声をかけました。
──光の巫女に君は選ばれたんだ。行こう。
少女は、迷わず、レオニーの手をとりました。